大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2015年12月15日 | 写詩・写歌・写俳

<1447> 不眠と便秘 (2)

        足許に絡む落葉も快し冬陽射し来る山腹の道

 では、次に不眠について触れてみたいと思う。最近、眠剤(睡眠導入剤)を服用する人が増えているという。これは眠りたいときに眠れないという悩みを薬によって解決する手段として用いられるものである。私はまだ一度も飲んだ経験がないので、その感覚はわからないが、酔い止めの薬を飲んで眠気を催したことがあるので、あの酔い止めのきついものかとも思う次第であるが、とにかく、眠れない人には都合のいい薬のようである。

 つまり、この薬を服用する人というのは眠りたいのに眠れないという苦しみに悩む人が化学的な作用によって眠れる状態に体をもって行くというものである。これは痛みやかゆみを解消するために用いる薬に似ている。その効能は眠れない症状を有する人にはまことにありがたい代物と言える。だが、こういう薬は服用を誤ると、その副作用によって人体を危険に曝すこともあるので注意が必要とされている。

 以上、睡眠薬の話が長くなってしまったが、ここからは不眠という本題に入りたいと思う。眠りたいけれども眠れないというのは、便秘が頂点に達し、便意を催しているのに便を出すことが出来ないときの苦しみに似るのではないかと思う。便秘のときは常にそのときの恐怖が頭の隅にあって、便秘薬なども用意しておくということになる。この点で、不眠は便秘によく似ていると言えるが、不眠や便秘に及ぶ要因も似ていると言えるところがある。それは、現代人に共通している点をあげることが出来る。

 不眠や便秘は、まず、第一に、精神的なストレスが絡み、これが影響していることが考えられる。言わば、誰もが大なり小なり影響される現代社会の人間関係において起きることで、これは鬱病の要因にも等しい病的問題だと言ってよい。これは、個々人によって異なり、それぞれに差の生じる性質のもので、錯雑とした現代の輻輳する社会にあっては全体的に把握し難い、疫学的には対処し難いところがある点が思われる。

   

 生きものは概して生きてゆくため自らの知覚を働かせて日々を送っている。人間で言えば、その知覚は肉体と精神がこれを負っている。外界からの影響は、即ち、肉体と精神をして知覚し、これに対処する。知覚には種々あって、錯雑とした現代社会にあっては個々に処理出来ないような複雑奇怪な関係性をもたなくてはならないようなことにも遭遇するといった具合で、思うに任せないところが生じたりする。

 で、知覚には快いものばかりはなく、不快なものも大いにあり、肉体と精神に悪影響を及ぼすということにもなる。この後者の方をもって私たちはストレスという言葉で表現するわけであるが、錯雑たる現代社会にあってはこのストレスの要因がそこここに絡み合っていることが言え、不眠にせよ、便秘にせよ、それを要因としてあることを思えば、現代においては、まさに必然的に生じ来る悩みの一つと言えるわけである。

 今一つの要因は、これも不眠と便秘に共通して言えることであるが、運動不足がそこにはあることが指摘出来る。私には一つの経験がある。それはライフワークにしている野生の花を求めて山野に出向くことが度々あることで、この山野行において気づいた点にある。山野行の歩きをした際の経験であるが、その日の夜はいつもより寝つきがよく、ぐっすり眠れ、通じもよくなるという体調に至る。山歩きのときなどは、往復四時間は歩くので、脚の筋肉は張り、ときには棒のようになることもあるが、そうした山歩きの夜は体の疲れによってよく眠れる状態になるという次第である。

 そして、なお、加えて言えば、花を求めて山野の自然に触れて歩くことが、私には心の良薬になり、日ごろのストレスから解放される時間を持つことが出来るという点があげられる。遠望の風景に出会えるのもよいことで、これも不眠や便秘の解消に役立つものだと言ってよい。家の中に籠っている人でも、この二点、即ち、ストレスの解消が出来、自分の肉体に疲れを催すほどの運動をするに及べれば、私は不眠も便秘も解消出来ると思っている。便秘は消化器官の作用によるものであるから、食生活の改善も加えなくてはならないことは言うまでもない。

 思うに、不眠に悩む人は、一つにストレスを抱え、一つに運動不足が祟っていると言えるわけで、こういう人は、仕事の休みなどには外に出て、日ごろと違った運動の一つもすることが大切で、これを勧めたいと思う。家に籠るにしても一日中だらだら過すのではなく、何かに向かって働きをなすくらいの方がよい。殊に不眠症の人には少しきつめの山野の歩きを勧めたいものである。横着を決め込んではいけない。 教訓:肉体の疲れは睡眠を促す。 写真はイメージで、山歩きで出会う風景(ともに吉野の山中で)。   ~ 終わり ~