大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2015年12月12日 | 植物

<1445> 寒牡丹と冬牡丹

         寒牡丹 冬牡丹には あらぬとぞ

 牡丹(ボタン科ボタン属の落葉低木)は一般に四月中ごろから五月中ごろ、即ち、晩春から初夏のころに豪華な花を咲かせるが、冬に花を見せるものもある。寒牡丹とか冬牡丹と呼ばれる花で、十一月の末ごろから咲き始め、十二月の今ごろからが見ごろになる。俳句では、牡丹は初夏の季語であり、寒牡丹と冬牡丹は冬の季語で、寒と冬は区別なく用いられているが、園芸的には異なるもので、区別されると言われる。

 では、どのように違うのであろうかということになるが、端的に言えば、種を異にし、その花の咲かせ方に違いがあるという。寒牡丹の方は、牡丹の変種で、初夏と冬に開花する二季咲きの性質を有し、冬の開花に主眼を置いて、調節したものであるという。まず、初夏に咲く花芽を摘み取り、八月ごろ、葉の一部を整理して十月ごろに蕾を持たせるようにし、冬に向けて開花させるというものである。

                                                              

 これに対し、冬牡丹の方は、普通のボタンに温度調節を施して、牡丹に季節感覚をずらさせるやり方で冬に花を咲かせるように持って行くもので、一種の室咲きの手法による花である。言わば、冬牡丹の場合は人工の温度管理によって咲かせたものを冬の庭に移植する方法によるもので、鉢植えにしておいて鉢ごと花壇に埋め込むやり方を取ったりするという。

 このため、寒牡丹も冬牡丹も同じような稲藁で作った霜避けの中で花を咲かせるが、寒牡丹の方は自然の状態、即ち、牡丹は落葉低木であるので、ほとんど葉のないか、葉の未熟なものしかついていない枝に花をつける特徴が見られる。これに対し、冬牡丹の方は人の手によって温度調節をした中で育てるので、葉も成長することになり、花だけでなく、青々とした葉も見られるのが特徴としてあり、この点で見わけが出来る。

 葉のないのと、葉があるのとでは、その風情に違いが見られるのは当然で、牡丹が落葉低木で、冬には葉を落としてしまうことをして言えば、寒牡丹の方が自然により近いやり方であるということが出来る。大和では冬に牡丹の花が見られるところは幾つかあるが、この変種の寒牡丹は当麻町の石光寺が有名である。 写真は葉のほとんどないのが特徴の寒牡丹(左)と葉が繁る冬牡丹(右)。