前回ここ、山口と広島の県境を流れる一級河川のダム湖に架かる弥栄大橋に来たのは10年以上も前になる。ダム湖を囲む冬枯れした樹木とそれを映す湖面を撮った同じ場所から見下ろすと、樹木が伸びただけ見える湖面が狭くなっている。ここは岸根栗で有名な岩国市美和町、旬の栗が店頭に並んでいる。
橋の中央は県境(けんざかい)で向こう側は広島県。ここから10㌔下ったあたりに四境戦争といって第2次長州征伐のときの芸州口の戦いの地がある。幕府軍と長州軍のこの戦争は明治維新という新しい歴史を開いた回天の戦いであった。藩政のころは国境(くにざかい)と呼んだ。
橋の中央から静かな湖面を眺めていると、遠くの地で攻め込んできたロシア軍と戦うウクライナの人々が浮かんできた。武力をもって陸続きの国境(こっきょう)を越えてきた侵略から8カ月、汚らしい戦術でウクライナ国民を苦しめている。これに関連し世界は様々な思惑と駆け引きで明るさが見いだせない。
今、人は国境も県境も容易に行き来できる。同じように戦争も簡単に越境する。ミサイルやロッケット弾、戦闘機に無人機など人を殺める武器の進歩に嫌悪する。核兵器を含むあらゆる軍事用武器の廃絶はならないものかと思っていたら、突然起きた、橋下のグランドゴルフ場からの歓声で我に返る。戦のない平和な日本が、平和な世界構築に大きく寄与して欲しい、そんなことを願いながら運転席に戻った。
(今日の575) 戦場は人の命を奪い去る