高校での校内弁論大会。私のテーマは高校生のクセに「化粧」。そのイントロは市立図書館に飾られていたユリの花の匂いがしない。よく見ると造花だった。その時の思いから話を展開した。
校内では通用した内容、ほとんど記憶していないが、それは市内の大会では通用しなかった。50年も前の話。目の前の審査員の真剣でない眼差しを思い出す。
化粧についてその薀蓄(うんちく)を傾ける力はないが、ほどほどが良いといつも思っている。字の通り「ばけ」「よそおう」った姿は避けたほうが良いに決まっている。相手を不愉快にする。
この冬は雪が少ない、降らない、と会話になっている。寒いときは寒くないといけないが、自然まかせで致し方ない。そんな気持ちを察してか、先日の朝、薄っすらとした雪化粧が見られた。
このくらいの積雪がいい、そんな勝手なことを思いながらカメラを片手に外に出た。人通りはない。かわりに描いたような幾つかのわだちが残っている。なんの思いもなく走らされた車の跡が長い織物の柄のように続いている。
自然にできたものはいい、そんなひとり言を言いながら腰を下ろして低い位置から撮ってみた。折からさし始めた薄日に、織物に似たわだちの凹凸が喜んでいるかのようにくっきりと浮かび上がった。
(写真:図柄のようなわだち)