なんとなくそろそろと心待ちしていたら、「お義姉さん、筍食べる」と妹の声がした。待っていた物が届いた。家内は急いで玄関を開けた。
薄緑の穂先、黒っぽい茶色の皮は根本近くでは黄味を帯びた茶色、丈は20数センチ、穂先までの円錐形は理想的、全体が少し曲がっているのは地面へ穂先が僅か覗いた時に掘られた、最も好きな筍の容姿だった。
30年近く前に畑が公用地になってから筍は頂き物を食することになった。畑のある頃は、日参して持ち帰り、茹で、それから貰らってくれる先を探していた。今に思えば贅沢な悩みだったのかも知れない。
家内は結婚するまで筍にそれほど関心はなかった。結婚してからその時期になると、毎日のように持ち帰る筍にへとへとした。が、筍は貰うことになったとき、へとへとしながら付き合ったあの筍の味が1番だった、と話している。
終戦直後、母は近所の人と連れ立って筍を背負い広島方面へ卸しに行ったそうだ。蒸気機関車に引かれる客車の中で、筍のを入れた籠を枕代わりに仮眠したとも行っていた。そのころのお母さん方は今と違った働き方をしていた。
皮を剥きながらそんな事を思い出していた。あの生臭さはやはり懐かしい。
2、3年前、茹でた筍を冷凍保存しておけば、時期を外れても「旬の味」そのままに美味しくいただける、それを教わってから家内は冷凍保存を始めた。お寿司に煮物、貴重な食材になっている。お店との比較は止めておく。
ある方のブログに『歳時記でこの季節の筍を「春筍(しゅんじゅん)」といって区別する、俳句の季語は春』と書かれていた。この季節の筍は格別の美味しさが潜んでいるのかもしれない。
今年初めての筍、どんな料理になって出てくるのだろうか。
(写真は届いた初物の筍)