みことばの光的毎日

聖書同盟「みことばの光」編集者が綴るあれこれ

心を盗む

2019年08月24日 | サムエル記第二

サムエル記第二 15章1−18節

 快晴の金曜日、午後から市の中心部に向かいました。日差しは強いですが日陰は涼しさを覚えるような気候。時々「30分オルガンコンサート」を聴きに行く教会の会堂に、新しい装置が置いてありました。1944年の大空襲で破壊される前の建物内部の様子と現在の様子とが美しい3D画像で比較することができるものでした。近くの方、ご旅行で来る方、お試しになってください。

 「みことばの光」はきょうからサムエル記第二を読みます。そして、アブサロムが父のダビデ王に謀反を企てる箇所から始まります。1節は、「その後」ということばから始まります。その一つ前の文章には、「王はアブサロムを呼び寄せた。アブサロムは王のところに来て、王の前で地にひれ伏して礼をした。王はアブサロムに口づけした」とあります。アブサロムは王(父ダビデ)の前で地にひれ伏して礼をし、王はアブサロムに口づけしたのだから、これで「めでたしめでたし」となりそうなものですが、そうではありませんでした。

 「その後」ということばは、ダビデとアブサロムのやり取りが表面的なものであったことを伝えます。アブサロムが父に謀反を起こそうと行動を始めるということは、彼が父ダビデに敵意を持ったことを語っています。ダビデの行為が義務的かつ表面的なものであったのかもしれません。あるいはアブサロムはこの時にはすでにダビデに謀反を起こすという企てを持っていたと考えることもできます。

 彼は謀反計画を実行に移します。人々に王への不信を受け付け、自分を売り込みます。それをアブサロムはコツコツと実行に移します。そして次第に、とくに6節の「アブサロムはイスラエルの人々の心を盗んだ」ということばが心に留まります。ダビデ王への思いを自分への思いへと変えてしまうのです。しかも、巧みな手段で…。こうしてアブサロムはヘブロンで王を宣言します。

 けれども、人の心を盗んで勝ち取った権力は、やがて、同じような働きかけで盗まれ、失ってしまいます。


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