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ボルヘス『伝奇集』<丸山眞男

2012年07月03日 23時28分17秒 | 文学
ボルヘス『伝奇集』(岩波文庫)を読んだ。
前半はまだ読めたのだが、後半は文字を読んで意味をたどることも難しく、楽しめなかった。やはり私にはボルヘスはまだ早い。もしかしたら逆にもう遅いのかもしれない。
もっとも印象に残っているのは「『ドン・キホーテ』の著者、ピエール・メナール」のような気がする。どういう話かというと、『ドン・キホーテ』のある章とある章とある章をピエール・メナールが書いた。そしてそれはセルバンテスが書いたものと(書かれた言葉としては)全く同じものだ。しかしセルバンテスが書いた『ドン・キホーテ』とピエール・メナールが書いた『ドン・キホーテ』は全く違う。読んだらその違いがわかる。
そんなような話だった。
「なんじゃそりゃ」のようでもあるし、書いた人間によって文章の印象が変わるというようなことを言いたい気もするし、もっと深いことを言いたい気もする。もっと深いことを言いたい気がする人がボルヘスを好きなのだろうと思う。

昨日に引き続き、なのだが、丸山眞男がおもしろい。全集を読みたいくらい。
「日本の思想」を読んでいて、途中難しくなって「よくわからんな」と思って適当に読んでいたら、ものすごくおもしろいことを言っていて、聞き逃したので先生もう一度今のところお願いします、という気分になる。もう一度頭から読めばよいのだが、どうせ途中が難しくなるのだろうからまたいつか、と思い、すぐに読み返す気にはならない。ちょっと長いし。
どのへんがおもしろいと思ったかを記憶のままに書いておくと、日本では理屈を理屈だと思わず現実だと思う人と、理屈なんかいらない実感こそがすべてと思う人(文学者)だけがいるので話が通じない。理屈は理屈なのだから、現実のすべてに適用できるわけではないが、そう思う限りにおいて役に立つ。という、そこらへんがおもしろかった。もっと詳しい話を聞きたかった。
いま読んでいる「政治的判断」もおもしろい。新聞で取り上げているのは「政治」の話ではなく「政界」の話でしかないというあたりや、福沢諭吉の「悪さ加減の選択」の話の、ベストを選ぼうとして新聞が批判ばかりするので政治的無関心につながる。より悪くないものを選ぼうとすべきという話などは納得させられる。
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