「桜さくらサクラ・2006」展(3月11日-5月7日)

2006-04-09 07:41:21 | 美術館・博物館・工芸品
4c7dabb6.jpg山種美術館は元々山種証券(現SMBCフレンド証券)創業者でもある山崎種二氏が兜町の証券会社の本社ビル内に美術館として開館。もちろん証券会社の利益と、収集された日本画の枚数は比例関係にあったのだろうとは思う(逆かもしれない)が、よくわからない。もちろん、この手の個人財閥の常として、種二氏の逝去後、跡目紛争がおこる。

そして、のれんわけとなり、美術館は証券会社ビルから追い出され、森ビルが六本木に建設する巨大ビルの中に納まることになっていた。しかし、実際に「六本木ヒルズ」という名前のビルが建つまでには、長い時間が必要となり、当座の間は千鳥が淵に仮寓をもうけ、展示品の一部だけを公開することにしていた(ホームページにも、現在は仮移転中となっている。)。しかし、六本木ヒルズには既に森美術館が陣取り、アジアの現代美術の発信地を目指し外国人館長が頑張っている。

将来的には不安定でおもしろい話だとは思うが、きょうは書かない。ちょっと、生臭い話を書く気分になれない状況なので。


3月の後半に、美術館をのぞいてみた。「桜さくらサクラ・2006」展が開催されている。5月7日まで。桜の季節は短いが、何らかの事情で花見に行けなかったらここへきてもいい。

ところで、桜というのは、本来、美しい花であり、一本の立木でも美しいし、吉野の山桜のようにまとめて群生している情景も美しい。一方、残念なことに、咲いた後は僅かな日数で、きれいに散ってしまうことから、戦前は愛国軍人の象徴のように讃えられていた。君が代、日の丸、などと同列になっていたわけだ。実際、桜は花が散れば若葉が出てくるが、軍人が散っても若葉はでてこない。喩えてはいけないものなのだ。

さらに、花見のシーズンはスギ花粉症のシーズンとも重なるので、どうも実際に花見に行く元気はなかったわけだ。しかし、絵画で見るなら室内だから、まあ大丈夫ということである。それに、桜をカメラで美しくとらえるのはきわめて難しいが、絵画であるなら、その固有の美しさを十分に表現できるはずだ。

4c7dabb6.jpgもちろんサクラ尽くしの展示なので、展示された絵画はすべて桜が主題となっている。およそ、色々な捉え方がある。ただ、少し意外だったのは、われわれが通常の花見で体験するような桜の描き方の作品は非常に少なく、桜の持つ華やかさで山一面が桜霞に包まれる図が多かったこと。そして、もう一つの特徴は「夜桜」である。「桜+月+闇」という艶やかなコントラストは、なにか現世を離れた場所へ我々をつれていくような錯覚を感じさせる。このパターンの作品は数多く展示されている。個人的な好みでいえば石田武の「春宵(平成12年)」は背景の闇に藍色を入れることにより、昼と夜の間のありえない時空間を予感させる。また、加山又造の「夜桜(昭和61年)」はこれまたありえない茶色の空を表現している。

そして、夜桜の横綱とも言うべき横山大観作「夜桜」は会期最終1週間である4月28日から5月7日までの間だけ、大蔵集古館から出張してくることになっているそうだ。


ところで、まったく私事だが、最近、介護関係の会社の方とお話をすることが多いのだが、それらの会社の多くは老人ホームを経営していて、そこを事務所としていることが多い(誤解されないように書くが、別に親をホームに無理やり押し込んで問題解決をはかろうとしているわけではまったくない)。そして、老人ホームには桜が多く植えられているのである。聞いたわけではなく、私の勝手な解釈なのだが、桜の花を見ることで、老人達は季節感を得ることができるのだろう、と表読みしたあと、何となく頭の裏側に浮かんできたのは、老人達が桜を見ると、「これが、桜の見納めか・・」と諦念の境地に落ち込み、結局ベッド回転率の向上につながるのではないかとの妄想が浮かんでくるのである。  


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