ブルーコンサートの行方

2011-06-19 00:00:10 | 美術館・博物館・工芸品
自宅の物置部屋を片付けていると、世界的名画が出てきた。ということはまったくなく、机の中に乱雑に放り込まれた絵葉書の中に、以前、青山にあったユニマット美術館のお宝、『ブルーコンサート』がでてきた。



シャガールは長命(97歳)で、多作家であったが、そのうち多くの絵画に登場するのが、最初の妻であるベラ。ベラが花束を持って、シャガールの部屋を訪れるシーンは、パターンを変え、時空を超え、生涯に何度も描かれている。

そのベラが亡くなったのが1944年のこと。一気に気落ちした57歳のシャガールは、ふさぎこんでしまう。もはや絵筆を握ることすらなかった彼が、1年後に復活したのが、この「ブルーコンサート」だった。いつもの彼なら、ベラの周囲に動物と神話と花を一つずつ配置するのだが、この作品では大盤振る舞いだ。それぞれダブル、トリプル配置である。さらに、バイオリン付き。

しかし、この有名な絵画は、戦後まもなく人前から姿を消してしまう。米国人のコレクターが長らく個人所有していたそうだ。そして突然に姿を現したのが、数年前にオープンした青山のユニマット美術館。2006年の開館記念のシャガールを中心とした展覧会で現物を見ることができた。オーラがビシビシと感じられたのだ。

が、・・

結局、渋谷を中心としたユニマット構想の一角である天然温泉が2007年に大爆発した後、1年半後、2009年、この美術館は閉館することとなる。

では、この「ブルーコンサート」は、今、どこにあるのだろう。

色々と調べてみると、まだ、ユニマット創業者であるT氏が個人所有しているのではないかと言われているようだ。壁に掛けられているのか倉庫に眠っているのかは定かではない。

日本も物騒なところが多いので、今後、何らかの震災で消失しないように、緊急時の非常電源の確保には配慮を払ってほしいものだ。(1944年に空襲で焼失したゴッホのひまわりのことを思い出してしまう)


さて、同美術館で一緒に買った絵葉書は、1927年に描かれた『アクロバッツ』。ブルーコンサートは普通にキャンバスに描かれているが、アクロバッツは紙に水彩と色鉛筆、そしてパステルである。こちらの方が震災には弱そうだ。



余計な話ではあるが、1945年に57歳で復活したシャガールは97歳で亡くなるまで大量に作品を創っていたのだから、もし、その時に復活せずに絵筆を折っていたら、この1927年製の名画の値段もおそらく10倍になっていたのではないだろうか。


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