goo blog サービス終了のお知らせ 

「陣屋事件」は・・

2007-03-03 00:00:04 | しょうぎ
84e045f0.jpg小田急線の旅、第二弾は鶴巻温泉。この駅の近くに温泉街があるのは、駅のホームに立つだけではまったく思いもつかない。北口の方だ。何しろ、駅前には商業ビルやマンションが立ち並ぶ。伊勢原にしても鶴巻温泉にしても小田急で新宿に直結しているので、都庁へ勤務する方が多いらしい。都庁に勤めていても、都知事選挙ではなく神奈川県知事選挙に投票しなければならないというのも、まったく奇妙な感じがする。

温泉街がマンション街になった例は東横線の綱島温泉にもあるが、鶴巻では、何とか数軒は生き延びているようだ。多少迷ったが、駅から細い道で徒歩5分のところにある。そして、そこには将棋関係者なら何度も聞いたことがあるだろう「陣屋旅館」がある。現在でも時折タイトル戦の舞台になっているが、歴史的ハイライトは1952年2月18日王将戦第6局木村義雄名人対升田幸三九段戦で起きた。いわゆる「陣屋事件」である。

当時、王将戦は名人戦に継ぐ序列のタイトル戦であり、名人戦との差を演出するため、「指込七番勝負」を標榜していた。どういうルールかと言えば、普通の七番勝負なら片方が4勝した時点で、相手方の勝数にかかわらず、ゲームセットとなるのだが、それを必ず7試合しようということだ。さらに、3勝差がついたら勝った方が香落ちで指すという屈辱的なルールである。プロレスの3本勝負で2-0となったのに勝者がリングシューズを片足だけ脱いで、さらに3本目を始めるようなものだ。

そして、この年の王将戦は、5戦目までで升田が4勝1敗とタイトル奪取に成功したのだが、そうすると、6局目が升田の香落ちで指されることになる。その対局場が、この鶴巻温泉の陣屋旅館だった。対局は朝からなので、関係者一同は前日から宿泊することになるのだが、当日は大雪。一方、升田の自宅は中野区の白鷺にあるのだから、新宿から小田急線に乗ったのだろう。東京では大雪の予感がなかったのだろうか、足元は長靴ではなく、高下駄だったらしい。そして、駅から雪の中を陣屋旅館に到着したものの、玄関のブザーを押しても誰も出てこない。そのため、「非礼じゃ!」と怒り、近くの別の旅館に行って宿泊手続きをする。驚いたのは、その別の旅館の方で、あわてて陣屋に連絡すると、関係者一同が升田を迎えに行くが、頑として応ぜず「対局拒否宣言」を発してしまう。

後日、升田に対しての処分が検討されたが、トップ棋士を処分すると困るのは自分達なのだから、まあ、うやむやに終わり、その後、「指込七番勝負」はコトバの上だけの定冠詞になり、王将戦の権威も賞金額も大失墜して、現在に至っている。

本で読んだだけでは、駅から旅館まで、長い道のりを歩いた結果、吹雪の中で、下駄で進退困難な升田のイメージがあったのだが、実際、行ってみると、駅からすぐだ。下駄履きでもサンダル履きでもたいしたことは起きないだろう。名人位に傷を付けたくないための対局拒否の理由が「ブザー無視」という言い訳だったのだろうと感じた。

実は、この陣屋旅館だが、宿泊すると物入りだが、平日午後には、食事付き日帰り入浴コース1700円と言うのがあるそうだ。そのうち、平日に来て、内部の様子を調べたいものだと思う。将棋盤は1800円強で貸してもらえるようだが、その値段では、升田幸三サイン入り本カヤ6寸盤時価500万円を使わせてもらうことは、きっとできないだろう。


84e045f0.jpgさて、前々週、2月17日出題の飛角図式の解答。▲5三角 △2一玉 ▲4三角 △1一玉 ▲5一飛成 △2二玉 ▲2一竜 △3三玉 ▲3二竜 △2四玉 ▲3四角成 △1五玉 ▲1六馬 △同玉 ▲3六竜 △1五玉 ▲2六竜まで17手詰。

飲み屋の代金を払えず、自宅まで店主が集金についてくることを「つけ馬」というが、本作は、「つけ竜」だ。最後に竜と玉の距離が離れたと思ったら、すぐに財布を押さえられた。なお、5手目に飛車が成らずに7手目に成っても詰むが、こういうのは補正できなかった。最初から竜を配置するのが定法だが、本作では使えない。



84e045f0.jpg今週は、暖冬なので冬眠中の熊が起きてこないうちに、穴熊攻略図。易しいと思う。今年は冬眠しない熊がいるそうだ。熊にとって、冬眠しない方が体に良いのか悪いのか、どちらなのだろう。

穴熊を引っぱり出して、仕留めたと思われた方は、コメント欄に最終手と手数と酷評を記載いただければ正誤判断。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

サービス終了に伴い、10月1日にコメント投稿機能を終了させていただく予定です。