追想(1956年 映画)

2021-08-13 00:00:52 | 映画・演劇・Video
原題は「Anastasia」。革命により殺害されたとされるロシア帝国のアナスタシア皇女が生存しているという伝説がもとになっている。

ニコライ二世をはじめとして皇帝一家全員(皇帝夫妻、5人のこども、使用人数名)が殺害されたとされるが、当時17歳のアナスタシア皇女については詳しい状況がわからず生存の可能性があるとされていた。

実際に、本映画のモデルとなったアンナ・アンダーソンという女性は長い間、自分がアナスタシアであると主張を続けていた。

映画では、その自称アナスタシアをイングリッド・バーグマンが演じる。彼女を利用して遺産相続の一部にありつきたいグループのリーダーをユル・ブリンナーが演じ、生存していたアナスタシアの祖母をヘレン・ヘイズが演じる。実際のバーグマンとヘイズの年齢差は19歳しかないのに孫と祖母を演じたわけだ(孫役の方が10年以上前に亡くなっている)。

映画では、記憶喪失のバーグマンにアナスタシア皇女についての知識を詰め込み、替え玉に仕立てようとするのだが、そのうち観客は、この女性が偽者なのか本者なのかわからなくなっていく。そして祖母でなければ知らないはずの少女時代からの咳が決め手となり、実際に本当の孫であることが証明される。

バーグマンは女優の中の女優というべき完璧な演技を見せる。2度目のアカデミー主演女優賞には意味があって、この5年ほど前に不倫報道で最初の夫と離婚し、米国から逃げるように欧州で活動するようなっていて、本作はハリウッド復帰作だった。そのうち不倫や離婚を繰り返すことになり、生涯で3回離婚することになる。完璧すぎる女優だから、うまくいかなかったのだろう。完璧すぎる男優というのはあまりいない。