新潮社元会長旧蔵品の寄贈と展示

2018-10-28 00:00:28 | 美術館・博物館・工芸品
新潮社元会長佐藤俊夫が寄贈した新潮社のお宝グッズである作家の生原稿などが展示されるということで、駒場公園の中にある近代文学館に行った。東大駒場校舎の隣だ。

本題の前に、この駒場公園だが、戦前は旧加賀藩の前田家の本邸だった。洋館と和館と二棟が並び、洋館の方に当主が居住し、和館の方は客人用だったそうだ。二館とも残っていて和館は公開されている。戦時中に当主の前田利為侯爵が戦死したため、前田家の手を離れ、戦後はGHQに接収されたそうだ。それにしても偶然とは思うが、東大駒場の隣接に前田家があり、本郷校舎は加賀藩の藩邸ということで、何かと東大と関係があるものだ。

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ところで、今回公開される資料だが、多くは、文芸誌「新潮」用の原稿ということである。当初(1896年)は「新声」といっていたが1904年から「新潮」と現代の名前になっている。100年を超えているわけだ。もっとも元々新潮社は佐藤家が経営していたのだが、それにしても会社の資産であるべき原稿が会長の家にあるというのも現在では考えにくいが、ある意味出版の人はできた雑誌や本にはこだわるが生原稿へのこだわりは小さいのかもしれない。

夏目漱石、北原白秋、島崎藤村、佐藤春夫、谷崎潤一郎、そして有名な太宰治の「斜陽」原稿である。漱石は絵ハガキの絵を描くのが得意だったのだが、最近の研究では、フランスの書籍の中の挿絵を模倣したことがわかっているそうだ。

そして、驚いたのは谷崎潤一郎の原稿。升目の中に筆で文字を書いている。

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もちろん太宰の「斜陽」の原稿からも、切迫した状況が感じられる。何度も何度も修正している。太宰らしく、実質は細かい神経の持ち主なのだろう。