風薫る日に(演劇)

2010-10-11 00:00:47 | 映画・演劇・Video
先週後半に、演劇集団「土くれ」の公演に行かせてもらう。麻布区民ホール。実は、満員になり、補助席まで登場。どうも、夏の暑さが去り、あちこちに人出が戻っているようだ。

この劇だが、事前チラシによれば、何となく「家族の秘め事」といった感じだった。



五月のある日、平山家の祖父・正綱の米寿の祝い(88歳の誕生日)が行われようとしている。長女・幸子は、その準備に追われているが、実は、祖父と仲違いをして14年も家をあけている兄夫婦を、こっそりと呼んでいて、関係修復を狙っていた。

だが、・・

事情を知らない祖父の方は、勝手に別のお客さんを呼んでいたわけだ。

さらに、14年目ぶりに戻ってくる兄は、幸子の意とは無関係に、正綱の戦友を見つけて、祝いの席に別の戦友の戦死報告を行うわけだ。


ということで、家族内のイザコザの話が、どんどん外側に膨れ上がっていくわけだ。

最後には明らかになるのだが、正綱は、グアム島の戦いで、白旗を持って敵前逃亡をする。

(前の戦争をどの国と行ったか知らない人も増えているようなので、解説すると、アメリカを中心とした連合国軍とである。日本側も連合を組んでいたのだが、結局、日米どちらも味方がたいして助けてくれたわけでもなく、世界戦争トーナメントの最後の2チームになったわけだ。その後、信用できる味方がいないことに気付いた両国が、戦略的互恵関係を結んで日米同盟に走ったわけだ。)


その後、70年近くが過ぎ去ったものの、いまだに、時々は、「おまえは逃亡兵だ」というような声が本人の耳に届くようになっているらしい。


そういうような、いやに重みのある演劇なのである。

役者の大部分、好演である。


ただ、まったく違う角度で言えば、老人や戦争、病気。そういうものをテーマにしたものが、日本には多すぎるような気がする。これが、この国の現実なのだろうか。