三角形の秘密

2014年3月27日(木)

三角形の秘密

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トウモロコシを使った三角形のスナック菓子がある。テレビコマーシャルにはそのお菓子に手足が生えてベレー帽をかぶったキャラクターが登場し、「…三角形のヒミツはね」と繰り返し唄って踊るので三角形の秘密って何だろうと楽しみにしていると、「…教えてあげないよ」と言われて結局教えて貰えない仕組みになっている。教えて貰えないなら自分で考えるしかなく、自分で考えてでも知りたい不思議さが三角形にはある。

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三角形というと階層構造が思い浮かぶ。三角形が階層構造であることを初めて意識したのは中学生の頃だったと思う。学校という場所はあまり行きたくない場所で、それでも小学校と中学校は義務教育なのでたくさんの子どもが集められている。高校より上は行かない人、行けない人が現れて次第に構成人数が減ってくる。社会人になると職場や家庭で生活を共にする人びとが限られ、やがて仕事もできない年齢になるとさらに人付き合いが減り、最後は結局ひとりぼっちになってしまう。世の中を人数構成から見るとそういうピラミッド型になるのだと気づき、それは貧富の差も同じ事なのだなと思ったのがその頃だ。

02
やがて大人になり、社会の仕組みも歳をとり、人口分布のピラミッドや、国民所得の階層構造が、きれいな三角形ではなくなっていくのを見ながら、それでも階層構造というと三角形を思い出し、どうして人は物事を上下のある階層として考えがちなのかということが気になってきた。世の中を上下のある階層だと考えるから三角形が思い浮かぶ。三角形を上下という考えで眺めると、頂点が尖って閉じているのでそこが行き着く先であり、その先に精神的高みなど無いようにしか見えない袋小路になっている。三角形は希望を生みにくい。

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三角形がピラミッドだとすると、人は高みをめざすなら階段を上らなくては行けないし、その階段自体が人間であるという悪夢も思い浮かぶ。あるいは三角形が平面の世界だとしたら、その頂点という隅っこは限りなく点に近い息苦しい世界であり、人は押し合いへし合い他人を押しのけ合って生きているように思えてしまう。いっそのこと図形として考えることなどやめてしまえばよいと思うのだけれど、図形化は手っ取り早く理解した気になりやすいという抗いがたい魅力を持っている。三角形の秘密は図形化するという人の行為の秘密なのかもしれない。

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人とその暮らしについて考える道具として図形化してしまう時、せめて上下方向の階層ではなく横方向への分布として捉え直すための工夫が、障害や看護などさまざまな分野でなされている。ピラミッド図を台形にしてみたり帯にしてみたりという工夫を見ていると、それは階層的思考から脱出するための試みのように思え、三角形の秘密という呪縛の解き方なのだと思う。悩みごとを抱えている自分には、悩みを図形化していないか、その図形が三角形になっていないか、それを横への広がりにしてシフトさせてみることはできないかと、自問してみることにしている。

(雑誌「Juntos」76号のために書いたものを転載)

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