【山を見る】

【山を見る】

00
竹の塊のようになってしまった帆掛山の竹林伐採が少しずつ進んでいる。この山の麓に我が家の墓があり、赤地原と字名にあるような崩れやすい土質なので、竹に山を覆われるのも崩落防止の観点からいたしかたないと思っていたけれど、あまり良いことでもないらしい。竹が根を張った山の斜面がまとまって広範囲にずれ落ちる危険性があるらしいのだ。

01
幼い頃、この山の麓で暮らしたことがある。この季節になると祖父が山の頂きを指さし、
「ほう、山の上っ面(つら)の線が見えっつら、あそこへと桜ん植わさってるのが見えるか?」
と清水言葉でなまって言いながら指さし、梶原山から一本松へと連なる稜線に何本か桜があって、この季節になるとぽつりぽつりと花開いているのがさみしげに見えた。

02
当時は大内観音霊山寺までの山道を除けば一面のみかん山で、みかん以外の木があると目立ってよく見えたので、稜線の形とひょろりとした樹影たちが、いまでも影絵のように記憶に焼き付いている。半世紀以上前のことだ。

03
竹の伐採が進むなかで、竹以外の木は残してあるようで、竹に埋れて樹齢を重ねた樹々が現れて驚かされる。白い幹があちこちに見えるのは白樺だろうか。民俗に関する資料を読むと、白樺の樹皮は剥かれて商品とされ、お盆の迎え火送り火として燃やされたという。里山に白樺があってもおかしくはないとはいえ、ちょっと意外だった。

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しずてつジャストライン北街道線、静岡駅行きバスを待ちながら帆掛山を眺めていたら、電線の上で同じ方角を眺めている土鳩がいた。同じ方角を見ていても全く違うものを違う映像として見ているに違いないのだけれど、互いに違う映像から鬱蒼としたものを伐採して薙ぎ払ったら、視覚の山肌に共通な何かが残るだろうかとぼんやり思う。

*写真は2014年3月22日(土)に撮影したもの。

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