大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2012年06月24日 | 写詩・写歌・写俳

<296> 夏の吉野山

        墓道に 蛍袋の 花多し

  大和も梅雨のただ中、田植えもほぼ終わり、早苗が日に日に青みを増す今日このごろ。農作業も一段落したか、宇陀市の岩神社では夏まつりが行なわれていた。今日は花の探索でそんな六月の吉野山に出向いた。今ちょうどアジサイの花の時期で、下千本の七曲がりでは見ごろ。観光客もその辺りに集中し、蔵王堂より上の上千本辺りは閑散とした状況だった。

 さらに上は奥千本。どこまで行っても葉桜の緑、自然の花に興味を持っている我が花追い人には植えられてあるものにはあまり興味がなく、見ごろのアジサイにも「咲いている。咲いている」と谷を見降ろしながら通り過ぎた。この天の邪鬼には代わりに道端や山の中へ目をやって、珍しい花に出会うとカメラを向ける。山に入る横道などがあると、花追い人の悲しい性で、その先に何か咲いているかも知れないという氣になって入って行く。今日はホタルブクロの咲く道に入ったが、その先は墓地で、行き止まりだった。

 ホタルブクロはキキョウの仲間の多年草で、白い筒形の花を提灯のように下向きに咲かせる。典型的な梅雨どきの花で、この花を見ていると、植物にも知恵があると感じられる。写真を撮っている間、しきりにハチの類が来て花の中に入り込むのを見た。蝶は来ない。蝶はアザミの花が大好きなようで、モンシロチョウが群れる光景を見た。 ホタルブクロのほかには、ノアザミ、キツリフネ、ボダイジュ、イヌビワ、サカキなどを撮った。 写真は左からキツリフネ、ボダイジュ、イヌビワ、サカキ、ノアザミ、ホタルブクロ。

  切れ目なく 続く葉桜 吉野山

  五月雨を 集めて濁る 吉野川

  山川の 吉野の里も 夏に入る

  水無月の 吉野 水分神社かな

  葉桜の 吉野も吉野 吉野山