大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2012年06月08日 | 植物

<280> 大和の山岳に見るツツジ

         青空に 彩り冴えて つつじ咲く

 昨日、久しぶりに大台ヶ原に出向いた。シャクナゲの花がほぼ終わったからか、駐車場は空きが目立った。それでも人出は結構あって、さびしい感じはなかった。天気は上々で、爽やかな気分で歩くことが出来た。いつものコースで、尾鷲辻から牛石ヶ原の準平原に出て、大蛇(だいじゃぐら)に寄って、展望を楽しみながら弁当にし、その後はシオカラ谷に下り、登り返して駐車位置に戻った。シオカラ谷に下る辺りから霧が深くなったが、雨にはならなかった。

 この間、「万葉の花」で大和のツツジを採りあげたが、平地に近い花の紹介しか出来なかったので、少し気になっていた。それが昨日大台ヶ原山でいろいろとツツジを見ることになったので、今回は標高の高いところに見られるツツジについて紹介したいという気になった。この間の花と合わせて見てもらえれば、大和がツツジの宝庫であることが認識出来ると思う。

 大蛇では青森から訪れたという十人ほどの一行に出会ったが、一行はみな大蛇の眺望とツツジの花に満足な様子だった。そう言えば、ツツジの仲間は寒冷地に少なく、青森ではヤマツツジとレンゲツツジ、それにムラサキヤシオくらいが自然に見られる花ではないか。そう思ったのはアケボノツツジを見て、一行の中からムラサキヤシオの名が出たからである。ムラサキヤシオはアカヤシオやアケボノツツジと同様、花の美しいことでは定評がある。ムラサキヤシオについては写真でしか知らないが、アケボノツツジの方が明るく華やかな感じがする。

 アケボノツツジは紀伊山地以南に分布するので、青森の人には初めてのはずである。大蛇の眺望は少しガスがかかり遠望が十分には利かなかったが、紀伊山地の雄大さは滝の眺めとともに感じられたはずで、よかったと思う。雨が多いという認識をもって訪れたようで、「ラッキー」という心持ちがあるように思われたが、年間雨量は多いけれども、台風時などに集中して降るので、毎日雨に見舞われるというわけではなく、結構晴れた日が多いと、大和に暮らす身としてその事情を説明したのであった。

 今日はこのほかにヤマツツジとシロヤシオとほぼ終わりに近いトサノミツバツツジを見かけた。ちょうど見ごろなのがヤマツツジとシロヤシオで、アケボノツツジは花の盛りの木を選んで撮影した。隣の大峰山系でも今がシロヤシオの花のシーズンである。嶮しい岩峰の痩せ地に生えるツツジは、奥山できびしい修行に励む修験者の行場と場所を同じくするところがあって、その花の風景には行者の難行の岩尾根越えに重なるところがある。爽やかな空の下で見る山岳に咲くツツジの花にはそこでしか味わえない感動がある。

 写真は左からヤマツツジ、シロヤシオ(ゴヨウツツジ)、アケボノツツジ(以上は大台ヶ原山で)、ヒカゲツツジ(サワテラシ)、トサノミツバツツジ(以上は大峰山脈の釈迦ヶ岳付近で)。右端はコメツツジ(大台ヶ原山で)。いずれも標高千五百メートルから千七百メートルの高所で見かけた花である。なお、ヒカゲツツジはヒカゲツツジ亜属に属する。シャクナゲもあるが、省いた。