大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2012年06月11日 | 植物

<283> 大和に見るツツジ科の仲間たち (3)

         つがざくら 寿ぐほどを 夢に見ぬ

 今回はツツジ科の中のイワナンテン属のイワナンテンとハナヒリノキ、イワナシ属のイワナシ、ツガザクラ属のツガザクラを紹介したいと思う。この四点はツツジ科の中では小低木の部類に属し、大和では貴重な存在で、大切にしたいものばかりである。

 イワナンテンは岩場に生える常緑小低木で、紀伊山地を南限に関東地方まで分布する。大和では北部の低山帯では見かけない。ハナヒリノキは落葉低木で、私が出会ったのは標高千五百メートルより高い位置だった。大和では限られた場所でしか確認されておらず、希少種である。

 イワナシは常緑の超小低木で、奈良盆地周辺の青垣の山々の山足でときに見かける。その名の通り、岩崖のようなところに生え、早春のころに可愛らしい淡紅色の花をつける。高山植物としても知られるが、大和ではむしろ里の近くで見られ、絶滅危惧種である。

 ツガザクラも常緑の超小低木で、ツガに似た葉を有するのでこの名がある。大峰山脈の高所、亜高山帯に当たる明るい岩場にわずかばかり小群落をつくって生えており、大和では絶滅寸前種にあげられている。調査に当たった識者は「シカの食害のひどい地域なので心配される」と言っているが、心ない人による採取の方が気になる。 写真は左からイワナンテン(十津川村の果無集落付近)、ハナヒリノキ(山上ヶ岳)、イワナシ(矢田丘陵の松尾山付近)、ツガザクラ(大峰山脈の高所)。