昨年の大晦日の午後、所用と散歩を兼ねて出かけた。TV映像で見る東京の賑わいに比べ、別世界のように静かな昔の岩国七町の商店街を歩く。それでもほとんどの家庭にしめ飾りが飾ってあり、年の瀬を感じさせる。でも、令和初の新春を迎えるという趣はどこにも感じさせない静さだ。
その年の大晦日のことはよく記憶している。年末の買い物に自転車で出かけた。岩国七町の通りのひとつ、あれこれ説明するより年末には必ずTV登場する「上野のアメ横」、通りの作りは小さいが混雑の状況はよく似ていた。ゆっくり自転車を押して目当ての店に向かっていると、中学時代の綽名を大声呼ばれ「結婚したんだって」と話しかけられ、衆人の視線を浴びた。
結婚のいきさつはさておき、それほど混雑ながら大繁盛していた通りの状況から52年過ぎた昨年末、声を掛けられたと同じ七町の通り、人ひとり車一台どころか物音すら聞こえない静かな通りに変わった。郊外型店舗の進出は半世紀の間にすっかり七町の姿を変えてしまった。通り過ぎて振り返るたびに「さびれた」という思いをしている。
国の進める地方創生は今年から第2期に入る。地方の力をどう作り出すか、第1期目の検討では、8割弱の自治体が中央にあるコンサルや企画企業へ委ねたと報道されている。担当企業は視察くらいしているだろうが、「さびれていく」地域の隅々までは把握できない。創生成功の事例紹介では、住民の考えや意見を活かし、住民参加で、地元資源を活用し地域循環型というのが共通している。宝は地元にあるのだ。