暗記しそれを声に出して唱えることを暗唱という。中学時代の国語ではいくつかの古典を暗唱させられた。徒然草に平家物語、一握の砂といろいろだった。国語教師の趣味ではなかったか、ふと口ずさんだりするとそんなことを思い出す。それくらい印象に残っていることが不思議でもあるが、しっかり覚えたんだ、と思うと懐かしい。
歌舞伎の「知らざあ言ってきかせやしょう」は白浪五人男の1人、弁天小僧菊之助が正体をあらわして名乗る初めのセリフ。歌舞伎を見たことはないが、映像で見た真っ赤な長じゅばんが印象に残っている場面。口調のいいセリフ、それにつられて完全ではないがなんとなく記憶している。それを文字で目にして驚いた。知らぬ言葉が多くて先へ進めない。これは意味を知らぬまま口調のよさだけを耳に残していたことになる。
地名らしきところはさておき少し当たってみた。先ず白浪、これは盗人のことで白浪五人男とは盗人五人のこと。お手長講は盗人仲間。枕探しは眠っている旅客の枕元から金品を盗むこと、またその盗人。こうして 拾い並べたら長くなる。
歌舞伎に限らず見得は自分をプレゼンテーションする大切な技で、そのときに見る人聞く人を曳きつける口調と表裏をなす。歌舞伎なら唸って足をドンと降ろせばピシッと決まって拍手を貰って終わり。選挙ではそういう訳にはいかない。久しぶりの知事選らしい知事選、しばしばセリフだけの政を見てきた。それを破れる人を選ばねば、そう思うが広報だけで「知らざあ」が多い。さてどうする。選挙戦は残り2日。