こちら放送局よりトム少佐へ(2020年 映画)

2023-10-03 00:00:06 | 映画・演劇・Video
舞台は1989年。年号が変わった年。ある高校の放送室だ。主人公の男子高校生は放送部なのだろう。実は私も中学の時には放送室によく出入りしていた。放送室には校内放送用以外にもいくつかの装置があり、短波放送を聞いたりしていた。諸般の理由で使えなかったが無線機器もあったような気がする。

映画の主人公は、放送室でラジオドラマを作っていた。放送室を宇宙飛行船の管制室と仮想し、宇宙飛行士に月の一部を爆破するように指令を出していた。理由は、月が大爆発して地球を吹き飛ばすことが現実化して、爆破時の衝撃を減らすためにあらかじめ月の一部に穴を開けておくためだ。

そして、書きかけのシナリオに基づき、マイクに向かって指令を出し、そしてそれをカセットで録音してゆく。(本当に月の裏側に宇宙人が潜んでいたら、爆破指示情報を盗聴したら逆上して放送室にレーザー兵器で一撃するかもしれない)

ところが、ある日、前回録音したテープを聴き直すと、驚くことに、少年の指示の後に宇宙船からのメッセージが入っていた。「こちらは宇宙船のトム少佐です」と、女性宇宙飛行士からの応答があった。

さあ、大変だ。少年は本当に爆破指示を出すのだが、トム少佐の方は、月面に着陸し、爆破準備完了するも、宇宙船が故障して帰還できない。残念だけどお別れかもしれないと語る。

少年は、絶対に帰ってきてほしいと伝えるのだが、トム少佐と称した女性は、「実は、同じ高校の夜間部の生徒で、放送室で見つけたテープを聞いていて自分もドラマに加わった」と言い始めた。しかも「月から帰還できるかどうかというのは、これから始まる夏休み中に重大な手術をしなければならず、絶対に帰ってきたいから、休み中にラジオドラマを完成させてほしい」と言う。

少年はドラマを完成させ、病院にも行き、そして校内放送で語り始める。「こちら放送室よりトム少佐へ」と。


実は残念ながら映画は10分間の尺。しかし、映画的緊張感がすべて詰まっているような濃密さがある。

月に行って帰れなくなったトム少佐を救出するためのドラマはどのように書かれたのだろうか。

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