漱石「猫」3

2012-02-03 00:00:13 | 書評
「猫」を読み終わる。

neko2


とうとう「吾輩」は名前を付けてもらえることが叶わなかった。

そして、唐突に落命してしまうわけだ。

その直前に、吾輩は人生の寂しさに気がついてしまう。主人は早晩胃病で死ぬ、と予言する。くさくさしてきて、気分晴らしに人間の飲み残したビールを一杯飲み、酔いつぶれてしまい、思わぬ事故にあってしまうわけだ。

漱石も勝手なものだ。

作家なのだから、ちょっと筋立てを変えれば、なんとでもなっただろう。できうれば、名前を付けてやればよかった。若い美女猫とのロマンスも楽しませてやりたかった。そして、自分の子供の顔でもながめさせてやりたかった。

生まれたばかりの吾輩を捨てた書生にも復讐させたかった。

要するに、猫の一生を無事完結させてほしかったわけだ。

生き返って、書き直してほしい。



思えば、吾輩の予言である「主人は早晩胃病で死ぬ」のとおり、9年後に漱石は胃潰瘍で亡くなる。猫の怨念以外、何物でもない。