5月27日23:55に来島海峡西側でケミカルタンカーと貨物船(RORO船)が衝突し、20分後に転覆。その後28日02:45分に沈没した。貨物船の乗員12名のうち3名が行方不明になる。船体は60m下の海底に船底を上にして沈んでいるようで、その後、潜水士による捜索によって船内から1名のご遺体が発見され、捜索は続けられている。船内に空気溜まりがあれば、まだ生還は可能だろう。
事故の直接原因は後述するとして、まず両船のこと。ケミカルタンカーは『ULSAN PIONEER』日本流に言うと3000キロ積みの石油化学品タンカー。2016年の韓国での建造。事実上の船主は韓国の会社(本船のクルーは韓国8人、ミャンマー5人)だが、運航会社は日本の船会社だ。2015年から2016年にかけてほぼ同じタンカーが4隻建造されている。タンクがステンレスなので、石油化学製品だけではなく、今回のように酢酸なども輸送する。日本、韓国、中国、台湾など近海航路用で最大速度は12ノットと力不足気味。全長は90m。今回の航海は、長江の奥、南京市の手前の鎮江から上海を通り東シナ海で関門海峡から瀬戸内海に入り、大阪へ向かっていた。
貨物船は『白虎』。船主は日本企業で、運航会社はプリンス海運。プリンス自動車(現日産自動車)の時から自動車、自動車部品の輸送を行っていて、本船は自動車部品を輸送していたが、通常は車両約800台を輸送。RORO船といって、自動車をクレーンで吊るすのではなく、フェリーのように車を自走させて積み込む。一部報道でフェリーとあるが間違い。驚くことに2020年6月に就航している。つまり1年経っていない最新鋭船で全長も170mとケミカル船の約二倍である。最大速度は21ノットとかなり速い。神戸から苅田(福岡)へ向かっていた。
FNNより

そして、問題の衝突だが、日本で最も危険な航路ともいえる(危険なところは他にも色々あるが)来島(くるしま)海峡だが、潮流によって航路が変わるし、さらに基本的に瀬戸内海なのだから東と西に向かうべき航路のはずが、島の配置によって南北方向にS字にカーブで通過するわけだ。当日深夜はスーパームーンの翌日でもあり、天気は晴なので月光で視認することは両船とも可能だっただろう。少なくても来島海峡で居眠りはないだろうし、乗員数から言っても海峡通過時は2~3名は当直に立っていたはずだ。
来島海峡は簡単に言うと二つの航路がある。左側の航路と右側の航路である。基本的には船は右側通行なのだが逆流側が西(南)側を通過することになっていて、事故当時は年に数回の潮流の速さ(10ノット)だった。
つまり、事故当時は来島海峡内は左側通行であり、入口と出口で左側通行から右側通行に変えなければならず、クロスしてしまうわけだ。事故は貨物船の左後側にタンカーが突っ込んだわけで、居眠りではないとすれば、相手船の速度を見誤ったことになる。貨物船のスピードが遅かったのか、タンカーのスピードが速かったかということ。潮のせいで、両方とも相手の速度を見誤ったうえ、自分の速度も間違えたということだろう。
来島海峡にはライブカメラもあれば、交通安全センターが24時間監視してが、船舶に指示を出したのだろうか。
朝日新聞より

そして行方不明者の中の船長。佐藤保さん(山形県鶴岡市)となっている。鶴岡の佐藤姓というのは一族の多くが船員になっていることで有名だ。以前、海運会社にいたことがあるが、3名も鶴岡出身の佐藤姓の船員がいた。船員一族なのだろう。そうなるとシーマンシップ精神という古典的概念に行きつく。つまり船長の責任である。船長の頭の中には船員救助しかなかったのだろう。
なお、タンカーの場合、口には出さない不文律のようなものがあるとも聞いたことがある。衝突が避けられない場合は、船首をぶつけるということ。腹にぶつかられると大爆発・大炎上の危険があるからなのだが、今回の場合はそういうことではないと思える。
事故の直接原因は後述するとして、まず両船のこと。ケミカルタンカーは『ULSAN PIONEER』日本流に言うと3000キロ積みの石油化学品タンカー。2016年の韓国での建造。事実上の船主は韓国の会社(本船のクルーは韓国8人、ミャンマー5人)だが、運航会社は日本の船会社だ。2015年から2016年にかけてほぼ同じタンカーが4隻建造されている。タンクがステンレスなので、石油化学製品だけではなく、今回のように酢酸なども輸送する。日本、韓国、中国、台湾など近海航路用で最大速度は12ノットと力不足気味。全長は90m。今回の航海は、長江の奥、南京市の手前の鎮江から上海を通り東シナ海で関門海峡から瀬戸内海に入り、大阪へ向かっていた。
貨物船は『白虎』。船主は日本企業で、運航会社はプリンス海運。プリンス自動車(現日産自動車)の時から自動車、自動車部品の輸送を行っていて、本船は自動車部品を輸送していたが、通常は車両約800台を輸送。RORO船といって、自動車をクレーンで吊るすのではなく、フェリーのように車を自走させて積み込む。一部報道でフェリーとあるが間違い。驚くことに2020年6月に就航している。つまり1年経っていない最新鋭船で全長も170mとケミカル船の約二倍である。最大速度は21ノットとかなり速い。神戸から苅田(福岡)へ向かっていた。
FNNより

そして、問題の衝突だが、日本で最も危険な航路ともいえる(危険なところは他にも色々あるが)来島(くるしま)海峡だが、潮流によって航路が変わるし、さらに基本的に瀬戸内海なのだから東と西に向かうべき航路のはずが、島の配置によって南北方向にS字にカーブで通過するわけだ。当日深夜はスーパームーンの翌日でもあり、天気は晴なので月光で視認することは両船とも可能だっただろう。少なくても来島海峡で居眠りはないだろうし、乗員数から言っても海峡通過時は2~3名は当直に立っていたはずだ。
来島海峡は簡単に言うと二つの航路がある。左側の航路と右側の航路である。基本的には船は右側通行なのだが逆流側が西(南)側を通過することになっていて、事故当時は年に数回の潮流の速さ(10ノット)だった。
つまり、事故当時は来島海峡内は左側通行であり、入口と出口で左側通行から右側通行に変えなければならず、クロスしてしまうわけだ。事故は貨物船の左後側にタンカーが突っ込んだわけで、居眠りではないとすれば、相手船の速度を見誤ったことになる。貨物船のスピードが遅かったのか、タンカーのスピードが速かったかということ。潮のせいで、両方とも相手の速度を見誤ったうえ、自分の速度も間違えたということだろう。
来島海峡にはライブカメラもあれば、交通安全センターが24時間監視してが、船舶に指示を出したのだろうか。
朝日新聞より

そして行方不明者の中の船長。佐藤保さん(山形県鶴岡市)となっている。鶴岡の佐藤姓というのは一族の多くが船員になっていることで有名だ。以前、海運会社にいたことがあるが、3名も鶴岡出身の佐藤姓の船員がいた。船員一族なのだろう。そうなるとシーマンシップ精神という古典的概念に行きつく。つまり船長の責任である。船長の頭の中には船員救助しかなかったのだろう。
なお、タンカーの場合、口には出さない不文律のようなものがあるとも聞いたことがある。衝突が避けられない場合は、船首をぶつけるということ。腹にぶつかられると大爆発・大炎上の危険があるからなのだが、今回の場合はそういうことではないと思える。