酔生夢死浪人日記

 日々、思いついたさまざまなことを気ままに綴っていく

ジェイク・バグ&フォスター・ザ・ピープル~ロック雑感あれこれ

2014-04-14 23:44:15 | 音楽
 '13は俺にとって〝ロック豊饒の年〟だったが、今年は一度もライブに足を運んでない。購入したばかりのCDを含め、ロック雑感をまとめて記したい。

 WOWOWで先日、サーティー・セカンズ・トゥー・マースのライブがオンエアされたが、フロントマンの容姿に見覚えがあった。「ダラス・バイヤーズクラブ」で女装の青年レイヨンを演じ、アカデミー賞助演男優賞を獲得したジャレッド・レトその人だったからである。俺が〝現役ロックファン〟なら、彼らのアルバムを既に聴き、映画観賞中にレトに気付いていたに相違ない。

 ポール・マッカートニー、エリック・クラプトン、ローリング・ストーンズ、ジェフ・ベック、ボブ・ディラン……。1970年前後、既に神格化されていたレジェンドが相次いで来日したが、俺は全く興味がなかった。<ロックは瞬間最大風速かつ微分係数>が持論で、「絶大な敬意を払うからこそ、今の彼らは見ない」が正直な気持ちだ。

 ストーンズを見て「サティスファクション」とのたまった安倍首相は最近、パフォーマンスに走っている。ポールの再来日公演(5月)には足を運ぶのではないか。安倍首相とストーンズやポールの組み合わせに違和感はないが、英キャメロン首相(保守党)は「スミス好き」を公言して失笑された。反体制、反王室の姿勢を隠さないモリッシーとキャメロン首相が真逆に位置することは、誰の目にも明らだからである。

 米コーチェラフェスは毎年、「スミス再結成」をオファーするのがお約束になっているが、今年も実現しなかった。英米のメガフェスが争奪戦を繰り広げる中、フジロックとサマソニが割を食っている印象は否めない。サマソニはアークティック・モンキーズで格好をつけたが、フジの起死回生策と囁かれるのがアーケイド・ファイアだ。

 俺とロックを繋いでいるのは「ロッキンオン」だ。業界の規模は英米の10分の1程度だろうが、メディアとしてのクオリティーは同誌が世界一だと思う。<ロックは社会に対峙すべき>という思い――今や幻想に近い――が行間から伝わってくる。全社挙げて反原発フェスを主催しているし、リベラルを標榜する「SIGHT」の表紙右肩に刻まれた<ロックに世界を読む>に、渋谷陽一氏の思いが込められている。

 その「ロッキンオン」一押しといえばジェイク・バグとフォスター・ザ・ピープルだ。HPに訪れるうち洗脳されたのか、それぞれの1st、2ndアルバムを合わせて購入した。無駄を削ぎ落としたジェイク・バグ、音楽の境界線を行き来するフォスター・ザ・ピープルと志向は異なるが、読書の友として聴く日が続いている。

 ジェイク・バグは何と20歳! 18歳で発表したデビュー作「ジェイク・バグ」は全英チャート1位に輝いた。フォーク、カントリーの要素を取り入れたソリッドなロックというべきだろう。既視感ならぬ既〝聴〟感を覚える作品で、ロックの原点と初期衝動を思い起こさせてくれる。

 人口の10%を学生が占めるノッティンガムが、ジェイクの才気を育んだのだろう。そういえば、アラン・シリトーも当地出身だ。シリトーの反骨精神とシニシズムは、ザ・フーやブラーにも影響を与えている。ジェイクもまた〝シリトーズ・チルドレン〟といえるだろう。

 撥水性のモノクロームの世界は、2nd「シャングリラ」でも変わらない。3rd以降、カラフルに転じるのか興味はある。今月末の東京公演(ZEPP TOKYO)のチケットは入手可能だが、今回は見送った。ジェイクは俺の3分の1ほどの年齢で、観衆の平均年齢も似たようなものだろう。自分が若く思える反原発集会に馴染んでしまった初老男にとって、若者に混じるのは結構ホネなのだ。

 フォスター・ザ・ピープルはバンド名を冠した1stアルバムでいきなりブレークしたウエストコーストのバンドだ。2nd「スーパーモデル」ではより一層、カラフルになっている。ここ数年のお気に入りであるグリズリー・ベア、ダーティー・プロジェクターズ、ローカル・ネイティヴスらと同様、遊びの精神と前衛性に溢れている。

 <ダフト・パンク+アーケイド・ファイア>と絶賛する声もあるし、初期デペッシュ・モードを彷彿させる繊細シンセポップもある。雑食性のバンドにとって肝というべきは、表情豊かでポップな音を奏でることだ。UKでいえばフォールズに近いが、彼らほど芯はない分、軽やかに飛翔している。

 ジェイクとフォスター――を聴いて、新鮮さだけでなく、和みとノスタルジックな気分を味わった。過去の良質な音を取り込んで彩りを添えるのが、デジタル世代の長所なのだろう。

 立ち読みした「ロッキンオン」最新号はプログレを特集し、30枚のアルバムを紹介していた、1位に挙げていたキング・クリムゾンのデビュー作「クリムゾン・キングの宮殿」(1969年)は、俺にとってプログレだけでなく、ロック史上NO・1の傑作だ。あれほどの衝撃を受けた作品はほかにない。

 30枚のうちイタリアンプログレがPFM一枚きりという点に違和感を覚えた。「UKの有名バンドと匹敵する演奏力」と書かれていたが、俺は明らかに超えていたと思う。イタリアンプログレは当時ジャズ界を席巻していたクロスオーバーを凌駕し、ワールドミュージックの扉を開いたと理解しているが、世間の評価は異なる。ジャンルを問わず、俺が肩入れすればロクなことはない。
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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
こんにちは (百頭人)
2014-04-15 20:50:00
コーチュラフェスの配信でフォスターザピープルと
アーケイドファイアを見ました。
どちらもいいバンドですよね。
フジロック、ブッキング頑張ってほしいですね。
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コーチェラ (酔生夢死浪人)
2014-04-16 00:32:46
  少しだけ見ましたが、アーケイド・ファイアは素晴らしいですね。フジはともかく、単独公演に期待です。

 フォスターの方は既にフジにブッキングされてます。目玉のひとつでしょうね。
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