酔生夢死浪人日記

 日々、思いついたさまざまなことを気ままに綴っていく

初心を忘れないため「デモクラシーNOW!」

2011-06-18 13:36:41 | 戯れ言
 俺のような怠け者は毎回、一夜漬けでPOGドラフトに臨んでいる。直前の1週間は極端な寝不足に陥り、もともと散漫な注意力は限りなくゼロに近づく、会議翌日(13日)、時間潰しに入ったルノアールで大失態をやらかした。

 爆睡から寝ぼけたままトイレで用を足す。違和感を覚えて個室を出たら、ドアに女性用の表示があった。誰かに見咎められていたら、御用になった可能性が高い。悪酔いして駅の女子トイレで吐いた警察官が、「軽犯罪法違反」で逮捕されたケースもあったのだから……。いそいそ店を出て向かった先は、大学時代のサークル仲間との飲み会である。

 昨年11月に再会して以来、同期U君(某国立大図書館員)が出張で上京するたび、先輩Kさん(某出版社労組委員長)、後輩F君(無職)と一席設けてきた。4回目の宴でもカズオ・イシグロを英語で読むU君の知性派ぶりに感心しきりだったが、メーンテーマはKさんとF君に変化をもたらした3・11だった。

 福島出身のKさんが3・11をシリアスに受け止めていることは言葉の端々に窺える。父を亡くされたばかりで、故郷や家族について様々な思いが交錯しているはずだ。F君の肩書が「某出版社役員⇒無職」に変わった。F君(編集統括)の退職には経費削減を進める総務・経理への抗議の意味もあったが、直接のきっかけは3・11である。

 高校生の娘を持つF君は、家族を連れて滋賀県(奥さんの実家?)に退避した。放射能の脅威を訴える広瀬隆の著書や研究者の警告に触れたF君にとって当然の行動だが、社内、とりわけ上層部の空気は冷たかったという。F君は3・11が炙り出した日本特有の集団埋没、子羊体質にぶち当たったのだ。村上春樹と宮崎学を織り交ぜ(論旨は忘れたが)、日本社会に対する失望と違和感を語っていた。

 会話が弾む中、俺の思いは過去へ遡っていた。Kさんの部屋をサロンにしていた20代の頃、日本はどんな貌をしていたのだろう? 震災と原発事故は貧困と格差を確実に拡大するが、抵抗の結晶軸は存在しない。俺たちの無為によって左翼と反体制は息絶えたのだ。

 クチクラ化した俺に刺激を与え、〝初心〟を思い出させてくれる番組が、当ブログで繰り返し紹介している「デモクラシーNOW!」だ。左翼と反体制がアメリカではフレッシュであることを示す同番組に、ノーマ・チョムスキー(思想家)、マイケル・ムーア(映画監督)、ジョセフ・スティグリッツ(ノーベル賞受賞経済学者)の3人が頻繁に出演する。エンディングテーマを歌うパティ・スミスがゲストで登場したこともあった。

 「資本主義独裁」、「世界最大のテロ国家」、「虚妄の民主主義」……。アメリカを否定的に記す俺に〝狂気〟を見いだす方もいるだろうが、同番組を欠かさず見ている知人は、俺の表現でも「まだ甘い」と語っていた。中東で抵抗運動が独裁政権を揺さぶっていた頃、チョムスキーは「アメリカにこそ民主革命が必要」と語っていたが、その言葉は20日も経たないうち現実になる。

 3カ月のタイムラグがあるため、最新の番組が映すのは3月のアメリカだ。3・11の衝撃もあり、日本のメディアは大きく伝えなかったが、アメリカでは当時、反組合法をめぐって民主化運動が盛り上がっていた。ウィスコンシンやミシガンなど全米各地で、10万人規模の集会とデモが州議会を包囲する。

 「民主主義の成立条件は全市民が活動家であること」と語るマイケル・ムーアは、<反組合法=国家と資本家が仕掛けた階級闘争>と規定している。言論の自由を制限し、資本家の更なる収奪を固定化する反組合法に対抗するムーブメントに、多くのティーンエイジャーも参加している。〝21世紀の治安維持法〟「コンピューター監視法」が無抵抗で通る日本との差に愕然とするしかない。国としては凶悪に振る舞うアメリカだが、良心に基づき声を上げる市民は多い。彼らの思いが「デモクラシーNOW!」を支えている。

 日本にも注目するジャーナリストがいる。その中のひとりが「ニュースの深層」(水曜)でキャスターを務める土井香苗さんだ。最新の番組ではインドにおける児童労働を取り上げるなど、スティグリッツに共通する視点で貧困と格差を捉えている。

 土井さんはピースボートで活動中、司法試験に史上最年少(当時)で合格したという。明晰な頭脳、鋭い感性、行動力を併せ持つ土井さんがいずれ、エイミー・グッドマン(デモクラシーNOW!のキャスター)の域に達することを期待している。


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