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古賀茂明「日本中枢の崩壊」

2011-07-15 22:04:37 | 知的財産権
日本中枢の崩壊
クリエーター情報なし
講談社

自民党の渡辺喜美議員が2006年12月に安倍政権の行政改革・規制改革担当大臣に就任したとき、古賀氏は渡邊大臣から「ぜひ会いたい」と呼ばれました。補佐官になってほしいとの要請でした。しかし古賀氏は、その直前に大腸ガンの手術をして抗がん剤を服用する状況でした。そこで古賀氏は補佐官就任を辞退するとともに、かわりに原英史氏を推薦したのです。
古賀氏が原氏に電話すると、彼は二つ返事で「ああ、やりますよ」と即決したと言います。原氏が著した「官僚のレトリック」についてはこちら()で紹介しました。

安倍政権は1年で倒れましたが、国家公務員法改正を成し遂げ、天下り斡旋禁止を実現しました。当然、これに対する霞が関の反発は尋常ではなく、それが官僚のサボタージュを生み、政権崩壊の一因になったといわれているそうです。
福田政権になって公務員制度改革に対する総理の熱意は低下しましたが、それでも国家公務員制度改革基本法を成立させました。
基本法では、国家公務員制度改革推進本部、顧問会議、事務局を設ける体制となっています。渡邊大臣は、事務局幹部の一人として古賀氏を強力に推薦したのでした。ところが、福田総理も古賀氏の登用に難色を示したといいます。官邸官僚が古賀氏の登用を阻止しようとしたのです。にもかかわらず、渡邊大臣の熱意が勝って古賀氏登用が実現しました(2008年7月)。
民主党政権では、仙谷行政刷新担当大臣が当初、古賀氏を登用しようとしたものの、霞が関の反対に遭い、あっさりと方針を転換したといいます。渡邊大臣との力の差です。

ところが、古賀氏が登用された直後、福田政権の内閣改造によって渡邊大臣は退任させられました。そして事務局の実態は、霞が関の守旧派から送り込まれた精鋭たちばかりです。
基本法には、国家戦略スタッフを創設すると書き、そのための法律的な措置を3年以内にすることとスケジュールもはっきり書かれています。しかしこの制度は、官僚の支配権を脅かすとんでもない挑戦でした。そこで3年以内に何とかこの決定を覆そうと画策します。それに対して事務局の古賀氏は、「これを後回しにするのは逆にサボタージュといわれる。少なくとも案だけは用意しておくべき」と主張し、案を作成しました。その案とは、人数は政令で決めればよい。給与は課長クラスから政治家並みまで幅広く設定し、誰でも連れてこられるようにしました。こうしておけば、総理は就任と同時に自分のスタッフをどう揃えるかを聞かれるので、総理になる前から自分のチームを準備するだろうということです。
基本法では「内閣人事局」を作ることになっており、ここでも官僚は徹底抗戦しました。2009年1月30日、総理を本部長とする国家公務員制度改革推進本部の会議に、谷公士人事院総裁が呼ばれたのに会議をボイコットした事件も、この関連です。
しかし、末期症状にあった麻生政権は、支持率の低下を恐れて官僚の思惑通りには動けず、基本法の方向での内閣人事局案が固まりました。そして、内閣人事局の創設と国家戦略スタッフの創設を柱とする国家公務員法改正案をまとめ上げ、麻生内閣によって2009年3月、国会に提出されました。

ところが、いざ審議を始めて見ると、民主党がおかしな動きを始めました。いかにも改革に前向きなふりをしながら、裏で人事院の機能移管を阻止するような妥協案を模索。自民党の守旧派と結託して、大幅に後退した修正案をまとめようとしたのです。危うく合意寸前までいったようです。
最後は、民主党の選挙を意識した方向転換で、2009年8月の選挙を前に廃案となってしまいます。成立させると自民党の手柄となってしまうので、民主党がやればもっと先進的な改革ができる、と国民に訴えるためでした。

古賀氏は、民主党が政権を握れば改革は一気に進むのではないかと期待しました。


2009年9月に民主党政権が誕生しました。
鳩山由紀夫内閣は当初、公務員制度改革に意欲的なように見えました。古賀氏は、行政刷新担当大臣に就任した仙谷由人氏から組閣前を含めて三度ほど呼ばれ、議論もしました。
しかし12月、仙谷大臣の判断で、古賀氏を含む公務員改革事務局幹部全員が更迭され、古賀氏は経産省に戻されたのです。その間の事情はつまびらかではないようです。マスコミの報道によると、仙谷氏は古賀氏を補佐官に起用して改革推進をはかる心づもりでしたが、霞が関の拒絶感は予想をはるかに超えており、財務省を筆頭に各省庁は古賀氏の起用に猛反対し、仙谷大臣も断念した、という経緯のようでした。

民主党政権は当初はそのように妥協したとしても、いずれは思い切った展開になるだろうとひそかな希望を持ち続けていたのですが、希望はすぐに失望へと変わっていきます・・・。

続く
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