弁理士の日々

特許事務所で働く弁理士が、日常を語ります。

管総理vs経産省バトル

2011-07-10 11:20:23 | 歴史・社会
本7月10日の日経新聞によると、
『原発の再稼働は認めない。敵は経済産業省だ--。管直人首相が本格的に動き始めたのは6月29日、料理店3軒をはしごした夜のことだ。』
このとき、脱原発派のイタリア人が「日本の技術力があれば、脱原発でも電力不足を跳ね返せる。」と説いたそうです。またその1時間前、六本木の焼肉店で「埋蔵電力」の話で盛り上がりました。

そして6月30日、海江田経産相が玄海原発の一連の経緯を報告すると、首相は「納得できない。佐賀県には行かない。」と答えました。その10日前に首相は「経産相と思いは同じだ」と発言したのにです。首相自らの心変わりが、閣内混乱の導火線となったといいます。
『首相は経産省を敵に見立てる手法をとる。』

経産省を敵と認識するのであれば、まず政治力を発揮すべきは、「原子力損害賠償支援機構法案(東電救済法)」を修正することでしょう。しかしこの法案は、すでに閣議決定され、今月中には成立するのではないかと見られています。
何で首相は、玄海原発再稼働の足を引っ張ることでしか経産省とバトルできないのでしょうか。
管直人首相が回帰しつつあるという「市民運動家」の目線では、人気取りになり得る「脱原発」には注力できても、一見原発事故被災者の救済とも見える“東電救済法”に反対するのは人気取りにならない、と判断したのでしょうか。
管総理は、一度は「発送分離もあり得る」と発言しました。5月でしたか。しかしその直後、1号機海水注入中断騒動が持ち上がりました。首相が止めさせたというのです。このとき私は、「首相の発送電分離発言を牽制するため、東電が意図的に流した陰謀ではないか」と推測しました(5月22日1号機海水注入の中断)。

私が原発のストレステストについて知ったのは週刊ポストでの大前研一氏の連載記事だったことから、今回また週刊ポストを入手してみました。週刊ポスト7月15日号で、大前研一氏は以下の議論をしています。

《「東電救済法」「原発再稼働ストップ」で忍び寄る日本経済メルトダウンの危機》
原子力損害賠償支援機構法案(東電救済法)がかかえる看過できない問題とは。
まず政府が機構に対していつでも換金できる交付国債を交付する形で「公的資金」を投入し、機構自身も「政府保証付き」の機構債を発行して資金を調達できます。本来なら一端つぶすべき東電を税金で丸ごと延命させるためのいかさまのスキームである、としています。
『それはまさに現在の9電力会社による地域別独占体制を維持したい経済産業省と政治家の思惑通りといえる。』
『この法案が成立すれば、・・・とめどなく国民の税金が投入される全く節操のない仕組みなのである。』
『(原発は国営化するしかない。そして電力会社は発電・送電・配電を分離する。)という(大前氏の)提案が実現する可能性も、地域独占体制を維持するこの法案が成立したら消滅してしまう。』

大前氏は、13ヶ月毎の原発定期点検休止明けの再稼働ができなければ、西日本、とりわけ関電が窮地に立たされるといいます。原子力の依存度は関西電力が45%、九州電力が42%、四国電力が41%と、東京電力の28%や東北電力の21%よりもはるかに高くなっています。四国電力は関西電力に売電していますが、四国電力自身が原発再稼働不可で電力が不足するので関電に売電できなくなり、関電は目も当てられないような状況に陥ってしまいます。
『関電や九電が東電のような計画停電を実施する事態になれば、もはや企業は国内で事業を継続することが困難となり、本格的に海外シフトが加速して日本経済は危機的状況に向かうだろう。』

恐らく管総理は、「原発が再稼働しなくても、埋蔵電力を発掘すれば電力は足りるはずだ」と考えているのでしょう。
しかし埋蔵電力についても、私がはじめて聞いたのは4月頃だったと思います。管総理はなぜ、そのときすぐに埋蔵電力発掘に動かず、最近になって急に動き始めたのか。やはり思いつきとしかいいようがありません。
今回のストレステスト、原子力安全保安院に単に原子力安全委員会が加わるだけのようです。われわれ国民の目から見たら、保安院も安全委員会も同じ穴のむじなです。“安全委員会が加わればいい”という判断自体から、単なる“対経産省バトル”に過ぎないことが透けて見えます。

週刊ポストの上記号が発売された後、ストレステスト問題が勃発しました。本日発売されるという次号で、大前研一氏はどのような提言をするのでしょうか。

もう1点、管総理が経産省とバトルすのであれば、経産省からクビにされかけている古賀茂明氏を官邸での要職に就けるべきでしょう。
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