弁理士の日々

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東電の再生計画

2011-04-19 22:06:34 | 歴史・社会
今回の福島原発事故を起こした東電という会社は、今後どのような形で再生させていくべきなのか、長谷川幸洋氏の『経産省幹部が公表をストップさせた「東京電力解体」案』をメモしておきます。

従来、政府・原子力安全委員会・原子力安全保安院が東電を十分チェックできなかったのは、単に政府側の体制の問題というだけでなく、実は東電が地域独占だったという点を無視できないといいます。ほかに代替できる企業がないから、東電の力は必然的に強大になる。問題が生じたときに政府がペナルティを課したところで「絶対につぶせない」ので、時が経てば元に戻ってしまう。

電力事業をめぐっては、かねて発電事業と送電事業の切り分け(発送分離)が課題になっていました。発送分離して東電の送電線を自由に使えるようにすれば、発電事業に企業が新規参入しやすくなる。風力や太陽光など新しい再生可能エネルギーの活用も進むだろうというわけです。

長谷川氏は、「東京電力の処理策」と題された6枚紙を入手しました。作成したのは経産省のベテラン官僚といいます。
『先に東電処理の出口(EXIT)をみよう。
東電を発送分離して「東京発電会社」と「東京送電会社」に分けた後、第2段階として発電部門の東京発電会社を「事業所単位で分割し、持ち株会社の下に子会社として直接配置する」とある。その後で子会社の売却を提案している。』
東京発電A社、東京発電B社、東京発電C社というように発電所単位で子会社にして、それぞれ売却してしまうという案です。これだと、発送分離に加えて1社による地域独占もなくなります。

『この出口に至る途中のプロセスはどうするのか。
処理策は東電の経営を監視する「東電経営監視委員会」を弁護士や企業再生専門家らでつくり、経営を事実上、監視委員会の下に置くように提案している。一方で資金不足に陥って電力を供給できないような事態に陥らないよう、政府が必要に応じて東電の借入資金に政府保証をつける。
当面は事業をそのまま継続する。ただし役員報酬の返上など大リストラは、この段階で直ちに着手する。そうでなければ、企業価値を算定するときに東電の値段が無駄に高くなってしまう。ひいては国民負担につながる。
その後、放射能漏れの被災者に対する補償額、国と東電の負担割合が決まってから、東電の企業価値を算定し、経営監視委員会が再生プランを作成する。プランが出来れば、現在の株式は100%減資して、新たに株式を発行する。100%減資は既存株主にも責任を負担してもらうためだ。』

途中段階で国が株式を購入して国有化されることがあるとしても、それが最終的な出口ではない、という点が重要です。
『巷では、東電に対する怒りも手伝って「東電国有化」論が飛び交っているが、単に政府が東電を国有化するだけでは、これまでの政府との癒着関係が致命的にひどくなるだけだ。原発事故の反省もうやむやにされ、官僚と御用学者が再び大手をふって歩くようになるだろう。』

この6枚紙の「処理策」はすでに経産省幹部も目を通しているのですが、執筆した官僚が公表しようとすると「絶対にだめだ」とストップをかけたそうです。東電は経産省の天下り先ですから、既得権益を重要視したのです。国会にしろ海江田万里経産相にしろ、経産省と東電の癒着体質にメスを入れることができるのか。

今回の原発事故のような事態が再発するのを防ぐためにこそ、東電を発電会社と送電会社に分割し、さらに発電会社をいくつにも分割することが必要だ、という論でした。今後の東電有るべき論を読む上で常に忘れないようにしましょう。

ところで、同じ「現代ビジネス」のドクターZ「電力不足への正しい対処法」に以下の記事が載っていました。
『東日本(50Hz)と西日本(60Hz)で周波数が異なる問題も、3000億円も投じれば、2年程度で解決可能だ。これまで電力会社は、変換施設建設は土地取得などに時間がかかり、短くても10年は必要と言ってきたが、これは東西融通によって地域独占が崩れることを恐れての口実だ。今回の事故発生後、筆者は電力業界の幹部から「実は2年でできます」と告白された。』
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