購読紙の「安野光雅『絵本 平家物語』」展の入場券に応募、当選した。秋日和に恵まれた日、津和野町の安野光雅美術館へ出かけた。
絵本に収められた79点の原画が、物語の流れに沿って展示されていた。その各作品に、物語に対する作者の思いや、取材時のエピソードなどをつづった一文が添えられている。それは素人の私には、絵の内容を理解する導として大きな参考となった。
物語については、教科書程度の知識だが、祇園精舎、壇の浦合戦、安徳天皇の入水、屋島での扇の的、一の谷の逆落としなど、記憶にある話の絵の前では、一文を読み返しながら絵に見入った。
絵のサイズは65×80㌢。構図は俯瞰的で、個々の人物は小さく描かれているので、始めは奇異に感じ観ていた。順路を進むにつれて、淡い色調の中に、観る人を物語の時代へ誘い、諸行無常の響きを悟らせていると思い、絵に秘められた深さを改めて感じた日だった。
原画保護のため照度を下げた館内は、平家物語の再現にふさわしい、落ち着いた雰囲気の中でゆっくり鑑賞でき、堪能した。