日々のことを徒然に

地域や仲間とのふれあいの中で何かを発信出来るよう学びます

木守り柿

2013年12月10日 | 回想


 取り尽くさず、いつからか木に残す実を「木守り柿」と呼んだ。来年もよく実るようにお守りとして。あるいは鳥のために残しておく、などと聞かされた。「木守り柿」の風習は各地でいろいろないわれが残る古里の言い伝えだろう。葉の散った枝に1個ぶら下がる光景を、懐かしく思い出す方もあろう。

 最近、柿をもぐ姿を見なくなった。というよりもがれずに梢で熟して地面に落ちたり野鳥の餌になったリと様変わりした。子どものころは「柿をもぐ」と言っていた。「もぐ」の意味は「ねじって引き離す。ちぎる」とある。「もぎ取る」は無理にねじってとる、と載っており「木のみをもぎ取る」と例示がある。

 長い竹の細いほうの先に少し割れ目を入れる。そこに小枝をかませ少し開きを作る。その開いたところで柿の実の幹側に伸びる小枝を挟み、竹を回転させて挟んだ柿の小枝をねじ折って実を採る。うまく挟まっていないと実は落下し地面で傷ついた。

 ぶら下がった柿の実をもぐ時、心の中の後悔をひとつずつ、もいでいくような思いをしたという文章がある。それは、同じような後悔は再びすまいと、実と一緒に籠に入れたとある。「一つだけ残してよ」という祖母の声掛けがあるまでもぎ取っていたころに、明日ために後悔をもぎ取るなど考えず、ただ柿の実を採っていたのだ。

 柿の木は「さくい」ので上って採ってはいけない、よく聞かされた。柿の木はさくいから折れやすい、だから竹さおの先で子どもの力でもちぎれたのだ。そう気づいたのはずいぶん時が経ってからだった。
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