生きている間は、すでに書いた遺言書の全部または一部を
いつでも自由な意思で撤回でき、前の内容に拘束されることはありません。
逆に、遺言を撤回する権利を放棄することもできず、たとえ遺言書に
撤回しない旨を記載したり、または利害関係人に約束したりしていても
これに拘束されることはありません。
また、遺言の撤回を詐欺または強迫によって妨げた者は
「相続欠格者」とされ、相続の対象外となります。
遺言書の撤回の方法には、次のものがあります。
1.遺言による方法
前の遺言書の全部または一部を撤回する内容の新しい遺言書を作成する
前後2通の遺言書が同じ方式である必要はありません。
例えば、公正証書遺言書を自筆証書遺言書で撤回することも可能です。
撤回された遺言書は初めから“なかったもの”になります。
前の遺言書の内容に抵触(*)する新しい遺言書を作成する
抵触する部分については、新しい遺言書が優先され
前の遺言書は撤回されたものとみなされます。
2.行為による方法
遺言書を破棄する
遺言者が故意に遺言書を破棄した場合には
遺言を撤回したものとみなされます。
しかし、遺言者の過失、第三者の行為または不可抗力によって
破棄された場合には撤回の効力は発生しません。
また、公正証書遺言の場合には、遺言者が保管する正本を破棄しても
撤回とはみなされず、公証人役場に保管されている
原本を破棄する必要があります。
遺言書と抵触する生前処分(譲渡、寄付、売買など)を行う
抵触する部分については、遺言した後の生前処分により
遺言書が撤回されたものとみなされます。
遺贈の目的物を破棄(滅失、き損、経済的価値を失わせるなど)する
遺言者が故意に遺贈の目的物を破棄した場合には
遺言を撤回したものとみなされます。
しかし、遺言者の過失、第三者の行為または不可抗力によって
破棄された場合には撤回の効力は発生しません。
また、第三者によって破棄された場合には
利害関係人はその第三者に損害賠償請求ができます。
(*)抵触…前後2通の遺言書が同じ事柄について異なる処分をすること(詳細は次回)