大震災から2週間以上経ってもなお、数多くの行方不明者がいらっしゃるのに
宗教的、哲学的、心理学的のどれに当たるかは別にして
いわゆる“縁起の悪い”お話をするつもりなど毛頭なく
法律上、制度上の決まり事として知っておいていただく必要があると同時に
生活再建には高額な資金が必要であることも事実で
それに役立てて欲しいために、あえて触れさせていただきます。
「相続はある人の死亡などをきっかけに自動的に始まる」のですから
生命保険金は、相続財産の重要な一部になります。
この“など”は「行方不明」を指していて
死亡ではなく「死亡とみなされた場合」も同じ扱いにされるのです。
従軍、船舶の沈没や地震、洪水などの災害に遭遇して
その危険が去った後、1年以上生死が確認できない・・・特別失踪
その他、蒸発や行方不明など7年以上生死が分からない…普通失踪
具体的には、配偶者や利害関係の存在する人が
失踪者の管轄の家庭裁判所に審判を仰ぎ
それが確定されたら死亡と同じ扱いにできるのです。
通常は、これらの手続きを取った上で
受取人が保険会社に保険金の支払いを請求することになります。
(自動的に支払われるのではありません)
ところが、この手続きを踏んでいると
まず、その間の保険料は払い続けていなければなりませんし
何よりも、家裁等の期間を含めると、最低でも1年半待たないと
実際に保険金を受け取ることができません。
そこで生命保険協会は
残された被災者らの生活再建を支援するため
今回の地震や津波での被災が確実視され
自治体による死亡を認定する証明書(遭難報告書等)があれば
“戸籍の抹消”を待たずに死亡保険金を支払うことになりました。
このほか、被災者が保険契約を確認できる
「被災者契約照会制度(仮称)」を4月に始め
生保協や会員各社が窓口となって、保険証券を紛失した場合でも
加入していた保険の内容を確認できるようになるといいます。
ちなみに、今回の東日本大震災では
生保会社による保険金の支払総額は
95年の阪神大震災時の483億円を大幅に上回り
過去最大規模になる見通しといいます。
ところで、この行方不明者が後日
幸運なことに生存が明らかになった場合
失踪宣告によって財産を得た者(相続人、生命保険金の受取人など)でさえ
「失踪宣告(死亡扱い)の取消しにより財産を失う場合でも
その利益が残っている限度で失踪者に返還すればよい」とされていますので
その時はその時として、今回の特例を利用して
早々に生活再建に着手なさっていただけるものと思います