亀裂による倒壊の危険回避だけでしたら、元の擁壁を
"それなりに"低くして押し出す圧力を低減すれば済む話だったのですが
Mさんが工事をする場合に高額になる理由は、越境している元の擁壁の
基礎部分まで撤去した上で、当然、境界線を遵守した新たな
擁壁に改修することを私が要求したからです。
その最大の越境部分が蛇篭(じゃかご)に接しているここ。
基礎部分を地中に放置したまま、蛇篭の1段目は
私の土地に設置、1段目の天端(てんば)高さまで元の擁壁を撤去して
2段目でこれら境界部分をまたぐことで工事代をかなり安く出来たのは
Mさん死亡後は、贈与によりこの土地が私の名義になることで事実上
境界線がなくなることが前提で取り得た方法でした。
すでに2日前にこの越境部分は2段目の蛇篭の下に隠れてしまい
現在3段目、さらに最後の4段目が上に乗せられることで
新しい土留めとしての擁壁が完成する予定です。
ちょうど1週間経った現場の様子です。
市の補助金申請に着工前、中間、竣工時の画像が必要とされ
一応、工期は2週間と言われているので
中間時のものとして撮りました。
近所に住み自宅から現場の一部が見える友人K曰く
「"災害現場"のような大規模な工事だねぇ!」
強力な寒波のため少々着工が遅れはしたものの、亀裂のある
擁壁の撤去が始まったことで、具体的な行動に出て4カ月
ようやく倒壊の危険が回避される運びになりました。
K建設会社は、重機による公道の除雪も請け負っていることから
降雪状況にも左右されますが、順調なら2週間ほどで
工事は終わる予定と聞いています
世の中が年末年始休業に入ってからここまでの間に
念のためにと設置した5本の単管のうち、下の画像の一番奥の1本が
少し下向きの弓なりになって来ていることに気付き、実は結構
焦っていた折でしたので、やれやれとようやく
胸をなで下ろすことが出来ました。
まずは塀を破壊することから作業がスタート。
(現場に入れる唯一の私道、幅は2m)
幅ギリギリの2㌧ダンプ3台と重機3台を使い
顔見知りだったK建設K会長以下4名がすぐにフル稼働に。
そして丸2日間でここまで撤去が進んでしまいました。
死因贈与契約書の他に、擁壁工事及び土地・建物の維持管理等についての
具体的な行動指標も「合意書」として取り決めておきました。
Mさんがこの契約を締結し易いように、今後の身近な生活上の
メリットを予め訴えかけた内容の覚書をベースに
契約書の補足項目を追加記載したものです。
・庭への出入り許可は不要、年10回近い草刈りを実施しながら
野菜畑や花壇として自由に使って良い
・生活インフラの維持管理のため家屋内への立ち入りも自由とする
・終活のお手伝いとして依頼されたら不用品の片付け等を無償で行なう、等など
以下は補足項目として付け加えたもの。
・新たな擁壁は私の所有にする
・火災保険の受取人は私に変更する
・仮登記に関して、等など
かくして、これまでの"隣人"より踏み込んだ、そして
相続に着眼したらこの先10数年、義父に近いような新たな
関係性を持って接しなければならず、実父は弟が
義父は看る前に他界していますので、これはもしかしたら
私に与えられた"養父のようなご縁"かも知れません。
契約後、まずは現在の様子を把握するためお留守中ではありましたが
始めて延床面積90坪、5LDK+αの家屋内を拝見させて頂きました。
(傾斜地のため2階にある吹き抜け玄関ホール)
(トイレ付洋室1、和室1がある3階への階段)
(その3階和室)
(2階ホールから5段上ると2つの洋室)
(その1つが今は書斎)
(外側には広いベランダ。善光寺平一帯の眺望抜群)
(D・K・和室1・風呂・トイレの1階ベランダ)
(サウナ付き風呂入口)
(以前は鯉を飼っていた池)
(+α は中3階の20畳以上のコンクリ床ルーム)
この小さなペンションのようなお住まいに
たったお二人で住まわれているとは、なんとまあ贅沢な
とは言え、掃除が重労働だったことは
容易に想像できます。
T弁護士事務所における2回目の3者協議で
双方が実印にて押印、印鑑証明書を添付して
「負担付死因贈与契約」の締結が無事に完了しました
T弁護士に委任する段階で、この契約の締結&仮登記をもって
成功報酬の対象とすることを明確に提示し、すぐにメールにて
契約書の私案を送り、それを基にした弁護士案が
1回目の3者協議ですでに提示されて基本部分の訂正がないまま
Mさんに受け入れられたという手際の良さが、かなり
奏功したものと内心、自画自賛しています。
仮登記:将来取得できる権利の登記順位を保全したり
妨害を予防するために仮に行う登記
また、得てして葬祭において面倒な要因になる親戚関係において
Mさんの境遇に起因する付き合いの希薄さ(後日、投稿)が
私にとって最大の幸運だったことは間違いありません。
そして早期締結に結び付いた他の要素に、実印を替えたことは
「まさか!?」ではあっても、綺麗に片づけて歳を越したいという
日本人的感覚が大きく作用したことは確かな気がします。
何はともあれ、年内に仮登記を済ませ
年明け早々には工事が着工されるはずです
(続く)
「将来、私に譲っていただく」ことで境界線が無視できれば
工事費をかなり安価に出来そうなことは分かりました。
この譲ってもらう方法としての最初の候補は
Mさんが口になさった「代物弁済」、その後「遺贈(いぞう)」
そして最終的には「負担付死因贈与」に行き着き、この要望での
決着をT弁護士に委任したことになります。
代物弁済:お金がないから物をもって返済すること
遺贈:遺言により特定の誰かに相続させること
(法定相続人以外へも可能)
代物弁済は、税金面で双方の負担が大きく、遺贈は、後日
遺言の変更が可能であることから、それらの短所を補えるものとして
ネットで見つけ出した一種の「契約」がこれで
その後、以前付き合いのあった税理士にも薦められました。
そもそも遺言書に「死んだら譲ることを明記して欲しい」などと
ぬけぬけと口に出せる神経は未だ持ち合わせていませんが
「契約を交わそう」は公言出来るというものです。
負担付:擁壁の建て直し工事代金を全額負担する
死因贈与:死亡をもって贈与(ただし相続税適用)する
難しい話は省くにしろ、この契約、例えばお爺ちゃんが若い娘に
「死ぬまで面倒を看てくれたらこの家をあげる」なんて時にも
利用でき、遺言のように一方的ではなく、お互いが署名捺印して
印鑑証明書を添付する契約なので間違いなく実行され、かつ
贈与契約という名称にも拘わらず税金は「相続税」が適用される。。。
"一朝一旦"ではないにしろ、この世の中
未だ知らない様々な仕組み、制度が存在することに
改めて感心しないわけにはいきません
ずっと昔、「頭の体操」というベストセラー本の中に
「いちごショートケーキを2人で喧嘩がないよう半分こする方法は?」
という設問がありました。
ケーキは上から見るとほぼ三角形、もちろん机の上では定規を使って
測ることで"半分"にすることは出来ますが、いちごの均等割りも
現実の場では無理がありますし、そもそもこの題名の内容として
「定規を使って測る」が正解とはとても思えません。
この質問のポイントは”喧嘩がないよう半分こ"という
含みのある表現にあることは明らかです。
正解は「一人が納得いくまで二等分し他の一人が先に取る」
この数学的ではない"頭の体操"的思考をすれば、境界線が分ける
2つの土地の所有者が同一なら、境界線は事実上ないに等しいのです。
つまりMさんの土地を私に将来、譲ってもらう約束が前提なら
越境している境界線を無視し、危険を回避できるだけの
工事を実施すれば良いのです。
具体的には下図のように、越境している擁壁の基礎を含めた
下部は残し、上部とそれが支える土砂を取り除いた上で
石を詰めた金網篭4段の土留め(擁壁)を設置して
庭の南半分は垂直1:水平3のスロープ状にして
野菜畑や花壇にする。
(同じ擁壁はすでに我家に設置済)
この方法によると、ただのスロープにする最安見積り480万円を
大きく下回る金額が可能になる回答はすでに得ています
(続く)
撤去費用を別にした新たな擁壁造成費については、境界線を確定し
排水溝を設置した上で庭を単なる傾斜地に戻す方法が
一番安く抑えられると聞いてはいてもその見積額は200万円。
これの最大の難点は、広さ70坪の庭が、画像に映る脇道と同じく
水平4に対して垂直に1下がる約15度の斜面になってしまうことです。
斜度15度は、スキー場なら初級~中級ゲレンデ程度
つまり満水のペットボトルはほぼ倒れるので、傾斜としたら
決して緩くはなく、畑は良しとしても庭となると。。。
越境を解消するには、最高H建設400万円~最低M建設280万円と
複数会社に見積られた既存擁壁の撤去がどうしても不可欠になり
これを行なうと例え一番安い工法の合計480万円では
傾斜がきつ過ぎてとても庭としての用を成さない、50年以上前の
単なる傾斜地にわざわざ"造成"して戻すようなもの。
この撤去費用が業者間でかなり差がある理由は不明ですが
50㎝程度地中に埋まっている基礎部分まで掘り出しかつその
取り壊し殻の処分費用が価格を押し上げていることは明らかです。
接続している道路幅は2mかつ直角に2回折れ曲がっていて
トラックでさえ2トン車が精一杯、もちろん大型機械は不可で
小型パワーショベル以外は基本、人手に頼ることも
あまり安く出来ない大きな要因になっているとも聞いています。
そして何よりも、子供さんのいないMさんにとっては、最低工事額の
480万円という高額出費をしても、現時点でさえ週1~2日
今後確実に滞在が減るであろう家に、新たに追加される
高額っぽく見える物は何も残らないのです。
ちなみにMさんちからは、崩落しそうな擁壁本体は一切見えず
庭の南端の一部が数十センチ陥没しているだけ、それも
放置されている雑草に隠されています。
奥さんは入院、自身」はホームに入居しての夫婦の生活費そのものは
現在80歳過ぎの高齢者の厚い年金支給額で賄えるでしょうが
他人の懐具合は皆目予想できないとは言え、今の貯えの中から
万札がゴッソリ消え去ることには耐え難い思いを抱くに違いありません。
事実、Mさん全額負担の原案は早い時点で固辞されています。
しかし、そうは言っても被害者はこちら
法的強制力に訴えてでもこの方向の決着を図るしかないのです。
そこで考え付いたのが次の(希望)案でした。
「私の負担で工事を実施し、将来土地と家を譲り受ける」
ここまで高額な費用を掛けて危険を回避すると同時に
物理的に越境を解消させなくても、その"事実をなくす"ことが
可能なら、その費用負担は相当に軽くなり、もちろん合計金額も
大幅に引き下げられるのみならず、現在の広さの6~7割程度の
平坦の庭も残すことが可能なはず。。。
Mさんには出来ず、私には出来る絶妙の方法を思い付いたのは
T弁護士を訪れる数日前のことでした。
(続く)
「いつかは使いたい」と思っていた印鑑を
実印に登録してから1週間も経たないうちにT弁護士から
一任したMさんの件で報告書が郵送されて来てその内容は
「中旬頃には希望する方向の契約書を取り交わせる予定」
その詳しい内容は次回以降、触れることになると思いますが
思いがけない障害は今の所、全く見られる様子もなく、まさかこれほど
スムーズに事が進むとは、正直思ってもいませんでした。
神や仏に対する不信心を表明している私が
印鑑を変えたのが奏功したなどという今さら不埒なことを
口にするわけには行きませんが、タイミング的には
余りにもピッタリはまってしまうので、ついそんな思いも。。。
そう言えば実母も若い頃、重病続きの境遇を変えるため
「改名」した結果、95歳を超えてもなお現在、存命中なのですから
この「身の回りの小さな何かを変えてみる」は、もしかしたら
「境遇に大きな良い変化をもたらしてくれる」
一つの策になり得るのかも知れません。
以上、この歳にして初めて、"信心"を抱いてしまいそうな
具体的事例を身をもって体験したお話から
Mさんとの擁壁問題の「後編」をスタートします。
(続く)