遺言書の内容を具体的に実現するのは通常、相続人または遺言執行者(いごんしっこうしゃ)です。
(法律用語としては遺言を「いごん」と読むようです)
相続分の指定や遺産分割の禁止のように、遺言執行者を置かなくても
相続人が自分たちで実現できるものもあります。
しかし、遺言執行者を必要とするものも多くあります。
たとえば、認知の遺言があればその認知届をしたり
相続人以外への遺贈があれば引渡しや登記が必要になります。
不動産を特定の人に遺贈する場合など
その登記をするためには通常は相続人全員の印鑑および印鑑証明書が必要で
兄弟姉妹が多いとこの手続きが大変です。
一方、遺言執行者がいれば、遺言執行者の印鑑と印鑑証明で事足ります。
また、遺言はしばしば相続人の間で利益が相反する内容も多く
相続人全員の協力が得られられない場合があります。
そうした理由により、遺言の内容を第三者の立場から忠実に
かつ、公平に実行してくれる遺言執行者を指定しておくことをお奨めします。
1.遺言執行者の種類 遺言者は遺言で、1人または数人の遺言執行者を指定し *指定遺言執行者 *選定遺言執行者
またはその指定を第三者に委託することができます⇒指定遺言執行者
指定遺言執行者が存在しないとき、または一度就職した遺言執行者が死亡その他の事由で
存在しなくなったときは家庭裁判所が利害関係人の請求によってこれを選任することができます⇒選定遺言執行者
遺言執行者の指定は必ず遺言によらなければなりません。
遺言の内容、遺言の作成された経緯など、総合的に遺言執行者の指定がなされていると判断できれば
必ずしも遺言執行者という表示をする必要はありません。
指定された者は、就任については自由であり、承諾後に遺言執行者となります。
遺言執行者が遺言で指定されていないとき、または指定された遺言執行者が死亡等によりいなくなった場合は
利害関係人の請求によって、家庭裁判所で遺言執行者を選任することができます。
利害関係人とは、相続人、受遺者、これらの者の債権者または不在者財産管理人、相続債権者および相続財産管理人等を指します。
家庭裁判所は、遺言の内容から遺言の執行を必要と判断すれば、遺言執行者選任の審判を行います。選任の審判をするには
必ず候補者の意見を聴くこととなっています。
2.遺言執行者の任務
遺言執行者は、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有します。
また、遺言執行者がいる場合には、相続人は、遺言の対象となった相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるような行為は
一切禁止されます。この規定に反した相続人の行為は無効です。
●遺言執行者のみができるもの…この場合は遺言執行者が必要で、もし遺言執行者がいないときは
家庭裁判所に遺言執行者を選任してもらわなければなりません。
①認知 ②推定相続人の廃除・取消
●遺言執行者または相続人ができるもの…遺言執行者の指定がある場合は、相続人は執行できません。
①遺贈 ②遺産分割方法の指定 ③寄付行為
●遺言執行者を必要としないもの…被相続人の死亡と同時にその効力が生じ、それ以上に遺言を実現する余地はありません。
①相続分の指定 ②遺産分割の禁止 ③遺言執行者の指定など
[具体的な任務]
*相続人・受遺者へ遺言執行者に就任した旨の通知を出す。-遺言書の写しを添付
*相続財産リスト(目録)を作成し、相続人・受遺者へ交付する。
*受遺者ニ対して、遺贈を受けるかどうか確かめる。
*遺言による認知があった場合、市町村役場に戸籍の届出をする。
*相続人を廃除する旨の遺言があった場合、家庭裁判所に廃除の申立てをする。
*不動産があるときは、相続登記の手続をする。
*遺言に従って受遺者へ財産を引き渡す。
*相続財産の管理、その他遺言の執行に必要な一切の行為をする。