厩火事(落語 演:三遊亭園輔)

2024-07-30 00:00:05 | 落語
『厩』は「うまや」と読む。馬小屋というか厩舎というか。『廓』という字に似ているが大きな違いだ。厩や廓が噺の中で火事になるということはない。喩の噺。

江戸の夫婦と仲人の話で、離婚騒動がテーマ。

髪結いで亭主を食べさせている女房が仲人を訪ねる。亭主に愛想が尽きたので別れたいと相談。仲人も女房に働かせて遊んでいる亭主とは別れてもいいのではないかと言うのだが、女房の方は、まだ決意を固めていない(決意が堅ければ相談ではなく報告ということになる)。

仲人はそれなりの人で、二つの話をする。一つ目は唐代の哲人の孔子の話。朝廷での勤めから家に帰ると、馬小屋が火事になって、愛する白馬が焼け死んだことを知ったが、馬のことは聞かずに門弟たちや家族の心配をしたこと。

二つ目は江戸の実話として、瀬戸物に凝っている屋敷持ちの旦那のこと。瀬戸物の収集が趣味なのだが、お客を集めて瀬戸物を見せた後、女房が瀬戸物を運ぶ途中に二階に登る階段で転んでしまい瀬戸物が割れてしまう。旦那の第一声が「瀬戸物の安否確認」だったということで、女房はサヨナラしたという話。

これはいい話だ、と家に戻った女房は、やはり陶器の趣味のある亭主の瀬戸物を作為的に転んで割ることにする。

もう一つの方法は「厩を焼く」だが、長屋に厩はないし、さらに火付けは重罪で、江戸市中引き回しの上、火炙りとなる。嫌な亭主と同居を続けるか鈴ヶ森の刑場に行くかの選択となる。(行くだけなら無料で、今でも罪人を立たせた円形で平らな石が残っていて、少し黒く焦げている)

そして、亭主の目の前で大切な瀬戸物を割ってみたのだが、亭主の第一声は女房の無事を喜ぶ声だったわけだ。

感激した女房が、「私の体が、そんなに大事なのかい」と再確認をしたのだが、「お前に怪我されると、飲んで遊んでいられなくなるからなあ」とオチが付く。


気になったのは、「階段」のくだり。江戸市内は二階から町人が武士を見下ろすのはいかんということで二階建て禁止だった。屋根裏部屋はあったようだ。

ところで、冒頭に書いた『厩』と『廓』のことだが、しばらくは落語のソースをNHKの「日本の話芸」にしているのだが、何か教訓的な演題が多いようで、町民用ではなく武家用の演題が多いように思う。そういうNHK的バイアスが強いようだが、TBSでも早朝に落語番組があるようなのだ。

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