蟻洞とは蹄壁の中層と内層が剥がれて空隙ができているのをいう。らしい。
蟻洞は英語ではseedy toe 。
このへんでは砂のぼり。と呼ばれることが多いが、蟻洞の方が正式病名。のようだ。
感染を伴うことが多い。
が、抗生物質をうったりしないで、化膿させて自潰させた方が早く治る。と言う人が多い。
白線裂とは、蹄底と蹄壁が剥がれた状態をいう。らしい。
白線裂から蟻洞になることもある。ようだ。
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左写真の馬は繁殖雌馬なのだが、跛行して前肢の外よりの蹄冠から自潰した。
その後、楽になったが、また悪化してまた蹄冠から自潰した。
また楽になったが、やはりこのままでは完治しそうにない。となった。
X線撮影で蹄に空隙、たぶん膿と壊死組織が入っている、があるのが見えるし、背-掌方向の撮影では蹄骨に欠損した部分、たぶん感染で融けてしまった、部分もあった。
よくある蟻洞や白線裂をどう治療・管理するのが良いか、私にはわからない。
ただ、蹄骨に感染が及んでいる状態を放置するのは危険だと思っている。
今まで、感染が蹄関節に波及したり、蹄底に感染が広がって、駄目になった馬や、治療に長期間を要した馬を見てきた。
この馬も蹄底にも空隙が広がり始めている(右)。
蹄骨と蹄壁の距離も正常範囲より開いてしまっている。
蹄の中の感染は、蹄に覆われているために発赤も腫脹も外から見えないが、その分蹄骨や蹄関節や舟刀嚢へと炎症が波及すると始末に悪いと思っている。
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鎮静剤・鎮痛剤を投与して、蹄への神経をブロックして、蹄底から感染創へドリルで穴を開けて、洗浄した。
幸い、担当医は蹄を得意とするA先生。
鎮静剤・鎮痛剤・抗生物質など投薬が必要だったり、
X線撮影が必要だったり、
血が出るところや痛くなるところまで削ることが必要な症例では、
装蹄師さんまかせにしないで獣医師が手をださないといけないと思っている。
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蟻洞と白線裂、そのはっきりした定義とその治療法は、臨床家の間でしっかりと議論しておくべきでしょう。
定義については、ここは一旦JRAの田中先生や桑野先生のような専門家にコメントをお任せして、治療について一言。
化膿させて自然に自壊させてはいけません。写真にあったように蹄底に感染が進行したり、蹄骨が感染してしまう例もあるからです。さらに運良く蹄冠に抜けたとしても蹄は少なからず変形してしまいます。また、感染と炎症の痛みによって仔馬の場合は肢軸まで変わることがありますし、妊娠馬では流産することさえあります。
また、蟻洞の発症、治癒から1~2週間経過して破傷風になる例も数例みてきました。
これらのことから、私は昔から信念として「蟻洞は蹄底に抜け!抗生物質は使用しろ」と指導してきました。
「信念として」というのは、そうしなくても確かに自然に治癒する例が多いからです。しかし、それでは上に述べたように治癒しない例や合併症がみられるからなのです。
蹄の治療は現場で行うのは大変です。特に腰痛持ちが多い臨床獣医師にとっては、もちろん装蹄師にとっても大変ですが、だからこそ「信念を持って」治療しなければならない疾患だと思っています。
治療法については異論があることは重々承知です。だからこそ「信念」が必要です。
ヘリオット先生の本にも、化膿した蟻洞を蹄底から掘らされることで獣医師としての腕だめしをされるシーンがありました。古典的な対処法が正しかったのであり、昔から馬医者に必要な技術だったのでしょう。
とくに最近日高はめっきり降雪量が減ってしまい、ガチガチの放牧地に
放すことが多くなってしまいました。
それに連れて砂のぼりも増えてきているように思います。
昔は今時期、もう根雪になって馬も楽だったんですけど・・・
うちも極力、気がついた時点で下に抜くようにしていますが、
なってからよりも、ならないような方法があればと思って模索しています。
普段の蹄自体の管理、削蹄方法、地盤が出ないような草地の管理
など考えればキリがないのですが出来る事から始めています。
幼駒の時の砂のぼりの跡が競走馬になってからの蟻洞の巣に
なっている可能性もあるので、
痛みが取れれば良い、という治療ではダメなのですね。
雪不足は馬の蹄にも良くないようですね。今は護蹄用のいろいろな素材もありますから、考えればいろいろな方法があるかもしれません。
仔馬、育成馬の蟻洞が競走馬になってからの蹄の問題に・・・・可能性はありますね。完全に健康な組織に戻らないのかもしれないし、体に残り易い細菌もあります。
まず予防策。異論ありません。
信念をもって放っておく牧場もあるようですから、手をかけるのは信念がなければできないでしょう(笑)。
私はヨード剤は蹄の角質に良くないと聞いて、使うのを躊躇するようになりました。これはまだ確信がありません。
ある牧場では、採草地を放牧地に変えたところに放牧した馬群に多発しました。つまり、草の密度が低く、でこぼこに荒れた草地が凍結し、蹄を痛めたのが原因だったと思われました。また、これらの馬たちは他の分場へ移動した後に白線裂になってしまいました。ウォーキングマシンでウッドチップが白線に刺さってしまったのです。
秋に草をある程度残しておく、密度を維持することが予防策の一つにはなりそうです。
砂上り、蟻洞、白線裂、はっきりした定義わけが必要でしょう。蹄の研究もかなり進んできているようです。病理組織学的に病態を理解すれば治療法、予防法も変わってくるかもしれませんね。
K先生。
蟻洞、私も悩まされました。
何でこんなに多いの!?と思うほど多発していて…
私が見たのは、乾いた空洞が蹄尖または蹄側にみられ(ただし蹄鉄を外さないと空洞は分かりません、蹄壁は欠けてもいずきれい)だんだん広がっていき、空洞が蹄冠までの距離の半分以上になるとある日急に跛行する、という症例が多かったです。
いったい、なにが悪かったのか、敷料や馬場か、手入れ法か(全身お湯で洗ってジェットヒーターで乾かしていました)、エサか(後から調べると亜鉛が馬に必要とされる量の半分くらいしか含まれていなかった)、太らせ過ぎか、運動法か…
徐々に減って行きましたが、なにが原因だったのか、謎です。
「雪の積もっているところに放牧しておくと、蟻洞の馬が治る」というのは私も聞いたことがあります。やわらかで低温なのがいいのでしょうか?真菌が活動できない、ということでしょうか?
生産地で多い「砂のぼり」と、乗馬や競走馬に多い「蟻洞」は病態がちがうようですね。
関連しているのか、いないのか、調査が必要かもしれません。
デコボコで、ゴチゴチに凍った放牧地を見ると、確かに肢や蹄を痛めそうです。
生産地でも、仔馬・育成馬はきちんと削蹄されていますが、繁殖雌馬は削蹄していない牧場がかなりあります。しかし、「砂のぼり」は仔馬、育成馬に多いように思います。乗馬や競走馬のように蹄内に空洞が広がっているのは生産地では見ないように思います。
乗馬、競走馬の蟻洞は釘の害を考える必要があるでしょうね。接着蹄鉄はまだ普及するのには問題があるのでしょうか。
お湯で洗うのも油分が抜けるので、洗ったあとは蹄油を塗る必要がある。というのが、ある温泉療法施設からの発表でありました。