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馬医者残日録

サラブレッド生産地の元大動物獣医師の日々

がんばろう日高!

2007-10-31 | 日常

Photo  メイショウサムソン!

おめでとう。

強いね~。

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 まだ、セリ関係の関節鏡手術が続いている。

キャンセルになった馬、手術して引き渡される馬、手術せずに引き取られる馬もいる。

どんな馬でも明日の保証はない。

それはX線撮影で異常がなくても「大丈夫、必ず競走できます」などとは言えないのだ。

一方、問題を抱えながらGⅠをとる馬もいる(メイショウサムソンのことではありません、念のため)。

手術を経てGⅠをとった馬もいる。

プロ野球の選手でも平気で手術を受けるようになってきたのと同じように、競走馬の医療でも手術はタブーではなくなった。

わずかな欠点でもある馬は買わない。という方針でいると、名馬を買いそこねるかもしれない。

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Pa260058_2 日高ん坊!

ガイドブックとしても実によくできている。

地元民にも役に立つ。

日高は「馬」という看板があるし、固定客もいるのだけど、普通の意味では観光地ではない。

訪れる人にはいつも行っている所、店、以外の情報は得にくい地域なのではないだろうか。

そういう点でのガイドブックとしても良くできていた。

しかも、無料!だった。

新刊を出そうというプロジェクトが進行中。

問題は資金難。

とりあえず、300人の賛同者から500万円の資金を集めたいそうだ。

地方の元気がない時代だからこそ、地元民が活力を出さなければいけないんじゃないだろうか。

前向きな提案や賛同がいただける方は連絡くだされば、「いいだしっぺ」へ転送します。

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喉嚢真菌症の要因

2007-10-30 | その他外科

 海外には年間馬が数千頭来院し、千頭以上の手術を行っている馬の病院がある。Pa280006_2

しかし、喉嚢真菌症の症例は年にせいぜい数頭のようなのだ。

私は、15年で90頭近い症例を診てきた。

年に5-6頭は見てきた計算になる。

どうも、このあたり、あるいは日本は喉嚢真菌症が多いようだ。Pa280001_2

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 現役の競走馬にも喉嚢真菌症はあるし、有名種雄馬も喉嚢真菌症になった。一概に衛生状態が悪いなど とは言えないようだ。

原因になる真菌を、敷き料や牧草で調べてもらったことがあるが、どこの牧場の飼料や敷き料からもある程度分離された。

症例数も、この15年あまり極端に増えたり減ったりもない。Pa280020

それ以前は喉嚢へ入れられる太さの内視鏡がなくて診断できなかった。

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 性別、年齢で多い少ないがあるか調べたことがある。繁殖雌馬についても年齢分布を調べて、発症した馬の年齢分布と比べてみた。しかし、偏りは認めなかった。

季節によっても多い時季はないようだった。

ただ、ある町だけは他の地域に比べて発症率が高かった。

それが地形学的な要因によるのか、その地域の牧場の規模など社会的要因によるのか、あるいはその地区でよく使われる敷き料や飼料によるのか、考察できなかった。

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 USAで、喉嚢真菌症の症例が比較的多いのはワシントン州立大のようだ(それでも年に数症例のようだが)。

海沿いで、冷涼で、そして火山性の土地だ。

北海道に似ていないか?

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気候や土壌学的な要因はあるのかもしれない。

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 と、喉嚢真菌症の発生要因はなかなか難しい。

特定の真菌しか喉嚢真菌症を起こさないとされているが、やはり厩舎の換気や、カビの生えた飼料や敷き料を使わないと言った注意は必要だろう。

放牧時間が短い日本の飼養形態は、喉嚢真菌症が多いことと関係しているだろうと思う。

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どうなってんの?

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喉嚢真菌症の内視鏡像

2007-10-27 | その他外科

Dscn6635 喉嚢炎の内視鏡像オンパレード。

まずは最好発部位、(写真は左)喉嚢の内側嚢天井部。

いかにもカビという粉を吹いたような病巣が、見事に内頚動脈と迷走神経、舌咽神経上に乗っかっている。

しかし、本当の病変は見えている以上に粘膜内深くまで浸潤していることも意識しておく必要がある。

Dscn6612 やはり左喉嚢の内側天井部。

みごとに内頚動脈上に、これも粉を吹いたような膿性のかさぶたが乗っかっている。

カビは動脈が好きなんじゃないか?

動脈の血流を止めることが病変を小さくするのではないかと考える人がいるのも理解できる。

しかし、私は、病巣が内頚動脈上にできやすいのは、単にそこが喉嚢へ入る空気が当たるところだからだと考えている。

Dscn6614それは手術して動脈の血流を止めても病巣が早く小さくならないことを経験してきたからだし、

左のように喉嚢の内側でも動脈上でなく中隔(左右の喉嚢を分ける壁)の上に病巣ができている症例も数多く見てきたからだ。

左のように中隔状に病変がある症例は注意が必要だと思っている。中隔を破って反対側へ病変が移行することもあるし、

どうも中隔は内頚動脈の支配域ではなく、内頚動脈を閉鎖しても出血するようだ。中隔には大きな動脈は無いのだが、それでも指を切るのと同じでかなりの出血を起こす。

Dscn6618  この左喉嚢は珍しいことに外側嚢に病変がある。

実は、外頚動脈は内頚動脈より太い。

喉嚢内で下顎動脈へ分岐していて、顔や眼や下顎を支配している。

根元を結紮しただけでは各支流からの逆流があるかもしれないし、結紮することで視力障害や顔面麻痺を引き起こす可能性もありやっかいだ。

Dscn6619 これも左喉嚢。

左喉嚢がやられることが多いのではなく、左ばかりそろえた方がわかりやすいだろうから。(なんて親切なんでしょ!)

内側嚢にも、舌骨上にも、外側嚢にも病変が拡がっている。

どこから出血したか特定するのは非常に難しい。

内頚動脈だけを閉鎖するか、あるいは外頚動脈も止めなければいけないか?

私は、内動脈から出血するのが8割以上であることや、外頚動脈の閉鎖で併発症が起きた報告があることから、内頚動脈を閉鎖するだけにしたいと考えている。

Dscn6613 これも左喉嚢。

内側、外側、舌骨上に病巣がある。

出血したせいかかさぶたの色が黒っぽい。

出血したばかりの、血餅が残っている場合もある。

Dscn6620 左や右のような場合は内頚動脈から出血したのがわかるので、すぐ内頚動脈を手術するDscn6622決断がつく。

しかし、喉嚢内が血だらけで病変がどこにあるか確認できないこともある。

そういう場合も確率論で内頚動脈だけを手術すれば良いと考えている。

しかし、できれば病変部位を確認してから手術したいので、鼻血を出してすぐではなく翌日か翌々日に来院してもらうことにしている。

中には1回目の出血で死んでしまう馬さえいるので、そのあたりは難しい判断になる。

Dscn6621 大量の動脈血の鼻血が出たあと黒い鼻血が続くのは、喉嚢に貯まった血が流れ出ていることが多い。

そういうときの喉嚢の入り口の様子は左のよう。

新たに動脈から出血しているのではないので、これ自体はそんなに心配しなくても良い。

馬の喉嚢真菌症は、発症率は高くないが、非常に致死率の高い病気だ。

 Eqineendoscopy                                  -

  もっと馬の内視鏡検査について勉強したい人はこちらの本をどうぞ。

以前の内視鏡の教科書はかんじんの写真が良くなかった。ヴィデオスコープが普及してきていたが、まだ画像をデジタルで保存・処理できていなかったのだろう。

しかしこの新しい本はすっかり写真が良くなった。

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Pa240047 天高く馬肥えた晩秋。

今週、疝痛が4頭。

3頭は馴致、調教を始めた1歳馬。

運動、飼料の変化は疝痛の要注意要因だ。


喉嚢内の脳神経

2007-10-25 | その他外科

人や動物の体を支配している神経は、ほとんどが脊髄を通ってそれぞれの組織に届いている。

しかし、脳から直接出ている神経が12本ある。

嗅神経 ・ 視神経 ・動眼神経 ・ 滑車神経 ・ 三叉神経 ・ 外転神経 ・ 顔面神経 ・ 内耳神経 ・ 舌咽神経 ・ 迷走神経 ・ 副神経 ・ 舌下神経

とっても丸暗記できないので、

「嗅いで視る動く車の三の外、顔聞く舌は、迷う副舌」と覚える語呂合わせがあった。

P7230003_2 左は知っている人は知っている喉嚢内のようす。

これはわかる人にはわかる、正常な左喉嚢。

真ん中に舌骨があって内側と外側を分けている。

内側(向って左)にある動脈が内頚動脈。

その隣に長く見えている神経が、第9脳神経、すなわち舌咽神経。

内頚動脈には第10脳神経、迷走神経が沿うように走っている。

下(底)の方には第12脳神経、舌下神経が露出している。

外側のとても太い動脈が外頚動脈。

そのすぐ外側(鼻先側)に下顎静脈。

その外側に顎ニ腹筋。

図に書き込むと・・・・・・・

Photo 喉嚢真菌症の好発部位はこの図で「迷走神経」と記入したあたり、喉嚢内側嚢の天井部だ。

喉嚢の入り口から真っ直ぐはいったのがこのあたりなので、この辺に真菌の胞子がくっつき易いのだろうと考えている。

それで内頚動脈の壁が真菌(カビ)にやられると大出血を起こす。

舌咽神経がやられると舌や咽喉頭の運動障害が起きて嚥下障害が起こる。

迷走神経がやられると嚥下障害や喉頭麻痺が起こる。

脳神経がそれぞれ何を支配し、それは運動性なのか知覚性なのか、はたまた両方をつかさどっているのか・・・・

国家試験のために覚えなければいけないのかな? 

覚えていれば、それは喉嚢真菌症の神経障害を診断する上で役に立つ。         

                         -

 獣医科学生のころ、解剖学の試験で脳神経が課題であったとき

「迷走神経、その反回枝の麻痺は馬の喘鳴症の原因になる」と書いたが解剖学の先生は点数をくれなかった。 

私は外科の先生に解剖を教えてほしかった。あるいは、解剖の先生にも臨床の素養が必要だと思う。

勝手な言い分か?

                         - 

Pa240052 はい、ポーズ。


飲めず食えず dysphagia

2007-10-22 | その他外科

Dysphagia 嚥下障害。

飲まず食わず。というが、たいていの場合、好き好んで飲まない食わないわけではないだろう。

飲めず食えず。なのだ。

Pa190039  写真の馬は真菌性喉嚢炎 guttural pouch mycosis で嚥下障害を起こした。

真菌性喉嚢炎は感染症だが、真菌に効く抗生物質で治療するのは薬の値段の点で厳しい。(人用の1日分で約3000円。体重が人の10倍ある成馬では30000円。効果があっても10日で治るとは思えないから・・・・・・・・無理無理。治るなら金は問題じゃない。という方はぜひそう言ってください[笑]。)

喉嚢内の動脈が侵されて出血する場合は動脈の結紮と塞栓術を行うので、血管手術の対象になる外科疾患ということになる。

喉嚢内の脳神経が侵されて神経症状だけが現れている場合は、水分やカロリーを経鼻投与するしかない。

以前の症例で試行錯誤して経験があるのだが、まったく飲めない食えない妊娠馬でも、1日2回流動食を経鼻投与してやることで体重を維持できる。

このことは海外の馬の内科学の教科書にもきちんとは書かれていない。

非経口栄養管理(TPN)とか食道切開しての食道カテーテル留置などは、鼻カテーテルを通せる症例では必要ないと考えている。

消化管を使えるときは、消化管を使え」がセオリーなのだ。

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 太い経鼻カテーテル(成馬なら外径2.5cmくらいは入る)を入れる。内径もできるだけ大きい方が望ましいのは言うまでもない。

 流動食はペレットを水に数時間浸した物を使う。もちろんコーンなど塊は入っていないほうが良い。以前は適当な飼料がなくてミキサーにかけたりしていたが、最近は良いペレットがある。

 植物オイルもカロリーを与えるためには良い。300mlでエンバク1kgのカロリーがある。

 ニンジンジュースやリンゴジュースをやってはいけない。糖分が高すぎるものや、線維が少なすぎるのは適当ではない。下痢をしては元も子もない。

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 もう一つ飲めず食えずになる病気に、食道梗塞がある。コメントで質問をいただいたが、食道梗塞についてはまたの機会に。

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Photo

 松坂。やったね。

シーズン後半戦は良くなかった。

プレイオフに入って2回ノックアウトされた。

そして、3勝3敗の決戦の7試合目の先発がまわってくる。

「こういう形の試合に自分が投げたいと思っても、投げられるものではないし、これはWBCの決勝でもそうだったけど、そこに回ってきた自分はラッキーだと思っていたし、この流れで来たら負けることはないと思っていた」。

自分までまわしてくれ、今度こそやってやる。と思えるからこそ一流プレイヤーなんだろう。

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 もうひとつ。Photo_3

がんばれ、タイガーマスク!!

http://www.nikkansports.com/race/p-rc-tp0-20070517-199905.html

http://hirotomi.cocolog-nifty.com/blog/2007/10/post_ce2c.html