私が獣医師になったころ、仔馬の死亡率は今より高かったのだろう。
そして今と同じく、感染症による死亡がかなりを占めていた。
細菌学の研究者で、
「新生仔馬に抗菌剤(ゲンタマイシン)を投与すればいいんだよ。
UK(その先生は英国留学の経歴があったらしい)ではやっていることだからね」
と言う人がいた。
いろいろな状況やいろいろな考えがあるだろうが、少なくとも欧米でも新生仔馬に予防的に抗菌剤を投与するという手技は主流にはなっていない。
正常な新生仔馬のほとんど全頭に抗菌剤を投与しなければならないほど新生仔馬の感染症は多いわけではないし、
抗菌剤を予防的に投与すれば耐性菌を増加させ、その抗菌剤が効かない細菌を選択的に残すことになるし、
感染症の初期症状だけを抑えたり、発症を遅らせるだけなら、異常の発見や診断を遅らせることになりかねないし、
無菌状態で生まれた新生仔馬が、正常な腸内細菌叢を獲得して、自力で免疫を確立していく過程を阻害することになる。
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ある地域では、新生仔馬に出血性腸炎が続発したことがあって、仔馬が生まれたらトリオプリムを投与するということが行われていた。
それについては一定の効果があったようだ。
これは例外的な、緊急避難的措置と考えてよいと思う。
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北海道獣医師会雑誌に、田村豊会長が、子牛の呼吸器感染症低減のために行われる「ウェルカムショット(抗菌剤の予防的投与)」について文章を書いておられる。
子牛の農場でウェルカムショットがどれくらい行われているのか私はよく知らない。
その功罪については非常に慎重に判断しなければならないし、
例え短期間に効果を上げているとしても、長期的視点で考える必要があると思う。
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養豚にくわしい獣医衛生学の先生から、「抗菌剤の飼料添加なしでは養豚はできません」と聞いて驚いたことがある。
子牛の農場もそれに近い状態になってしまっている所があるのかもしれない。
しかし、それは予防衛生や個体診療の敗北であり、放棄ではないかと私は思うのだが・・・・・
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NOSAI獣医師がウェルカムショットを行っていて、「目から鱗だった」と田村会長は書いておられる。
「目から鱗」の使い方がちがうと思いますけど。
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主人公は62歳。
バブル期に地上げで活躍した。
今は、居酒屋の店主。
そして、30年前に行方不明になった愛した女を忘れられない。
ハードボイルド恋愛小説、だな。
ミステリーとしても読める。
私には、面白かった。