DOD Developmental Orthopedic Disease 成長期の整形外科的疾患という概念が、馬の獣医学分野で最近よく唱えられる。
子馬、育成馬の整形外科的疾患はなんでも含まれそうな名前だが、たとえば感染性の関節炎や骨髄炎などは含まれない。
成長期の骨は軟骨の中や下で盛んに造られるのだが、その軟骨が骨になる仕組みがうまく行かないことによる問題をDODと呼ぶからだ。
-
左のX線写真は飛節軟腫の馬。
脛骨中間稜に離断性骨軟骨症OCD OsteoChondrosis Disscecansがある。
もっとも良く見られるDODだ。
右の写真は、大腿膝蓋関節の離断性骨軟骨症。
正常な軟骨に覆われていなければならないのに、軟骨が下の骨から剥がれてしまっている。
軟骨の下で骨が造られるしくみがうまくいかない。軟骨ばかりが分厚くなる。軟骨が下の骨から浮き上がる。そのうち割れて剥がれる、めくれる・・・・・
良く見られる部位は、飛節、大腿膝蓋関節、球節の矢状稜、肩関節など。
-
OCDはできる部位によって症状も予後も大きく異なる。
飛節によく見られる(脛骨中間稜の)OCDは最もよく見つかるOCDだが跛行することはまずない。
症状は関節液の増量だけであることがほとんどだし、関節鏡手術による摘出で予後も良好だ。
競走馬になる上でほとんど問題にならない。
中間稜にOCDがある馬も、OCDがない馬に比べて出走回数、獲得賞金などで遜色がないことも報告されている。
しかし、未だにセールでは敬遠されてしまうことが少なくないようだ。
買う側は選ぶ権利があるのだが、OCDがあるから馬全体の「骨が弱い」と考えるのは間違っている。
-
しかし、OCDもできる部位によっては跛行するし、程度によっては手術しても完治させるのは難しい。
肩関節のOCDや、大腿膝蓋関節の重度のOCDはその程度を慎重に判断する必要がある。
しかし、肩や膝のX線写真まではレポジトリーされることは少ない。
-
セールの前に行われるレポジトリーにしても、セールの後に行われるX線撮影にしても、最も発見される可能性が多いOCDは飛節のOCDだろう。
JBBAに招聘されたDr.Rodgersonにケンタッキーではどうしているか聞いたが、
「レポジトリーが必要なセールに出す予定の馬は1-2月頃にあらかじめX線撮影することが多い。もしOCDが見つかれば手術してセールに出す。」
ということだった。
レポジトリーの撮影でOCDが見つかってももう手術は間に合わないし、キャンセルするとセール主催者もキャンセル馬が増えてしまう。
レポジトリーで要求されるのと同じだけの枚数のX線撮影をあらかじめしておくというのはたいへんな労力になるが、確率の高い飛節だけはX線撮影をしておくべきかもしれない。
まして、飛節が腫れたことがある馬などは要注意だろう。
-
ざっと数えてみた。
7月以降、セールにまつわるX線撮影でOCDが見つかって手術した馬は10頭を超えている。