ロドコッカス感染症が多発している。
ロドコッカスELISA抗体検査の依頼も多い。
このロドコッカスELISA検査を運営しているのは世界でうちの検査室だけではないだろうか。
もう30年になる。
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1995年に横浜で開かれた世界獣医学会 World Veterinary Congress で発表した。
ロドELISAは、0.3以上を”陽性”としている。
それは健康子馬の平均OD値+標準偏差値×3というのがその根拠。
ただし、それが血清診断あるいは感染子馬のスクリーニングとして使えるかどうかは検証が必要だ。
ロドELISAは”抗体価”と表現されることがあるが、私はそれはまずいと思う。
(実は私も抄録の中で”抗体価”と書いてしまっている)
抗体価と言えば、0.6は0.3の2倍、1.2は0.6の2倍、という印象を与えてしまう。
しかし、それぞれ2倍希釈しても1/2にはならない。
抗体量を表す数値ではなく、あくまで測定値そのものでしかない。
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1993年と1994年の2年間に1073頭の子馬のロドELISAを行い、153頭がOD値0.3以上を示した。
呼吸器症状を示した子馬が124頭(81%)、消化器症状が17頭(11%)、関節炎が7頭(5%)であった。
34頭(25%)は0.9以上という高いOD値を示した。
呼吸器症状を示した子馬のうち27頭では気管洗浄液を採取し、OD値0.3以上の子馬では18頭中17頭(94%)でロドコッカスが分離された。
OD値が0.3未満だった子馬では9頭中2頭(22%)でロドコッカスが分離された。
気管洗浄液から分離されたのは全て85あるいは90kbの病原性プラスミドを保有する強毒株であった。
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この成績をもとに、ロドELISAは子馬のロド感染症の補助診断法として有用である、と結論づけた。
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病気の診断方法では、陽性あるいは陰性と判断して当たっていれば問題ない。
陽性と判断してその病気でなければfalse positive、陰性と判断してその病気であったら false negative ということになる。
ロドELISAでは、0.3未満であった子馬でも22%の子馬からロドコッカス強毒株が分離されているので、false negative は”かなり”ある。
0.3以上の子馬の中にロドコッカス強毒株に感染していない子馬がどれくらいいるか、はとても難しい。
少なくとも、呼吸器症状がある子馬では94%からロドコッカス強毒株が分離されたので、
ロドELISA0.3以上と呼吸器症状を併せると、false positive は10%未満だと考えてもいいのではないか。
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この季節、うちの検査室には100件以上の気管洗浄液が持ち込まれる。
ロドコッカス強毒株の分離率は、例年60~70%ほどだ。
子馬の呼吸器感染症のすべてがロドコッカス肺炎だというわけではないのだろう。
ただし、ロドコッカスによる肺膿瘍があるからといって、いつも気管洗浄液からロドコッカスが分離されるとは限らない。
完全に披嚢された陳旧化膿瘍や、膿瘍の痕を持っている子馬では、気管洗浄液からロドコッカスが分離されないことが考えられる。
そういう子馬だと、ロドELISA0.3以上、しかし気管洗浄液からはロドコッカス分離は陰性、という検査結果が正しいのだ。
false positive ではない。
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子馬のロドコッカス感染症は子馬の肺、その他、リンパ節、腹腔内、骨髄、筋間に膿瘍を作るやっかいな病気なのだが、診断、治療、予防策、は難しい。
30年の間に、状況が変わったこと、進歩したこともある。
若い獣医さんたちは、30年の経緯もご存じないだろう。
長くなるので、いくつかに分けて、考えてみたい。
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夏鳥がやってきて新顔が環境に慣れないせいだろうか

窓にぶつかってウッドデッキに落ちていた。
ビンズイかな。
幸い即死ではなかった。

しばらく休んだら回復して飛んでいった。