何度もひどい外傷を診てきたが、これもその1つ。
夜間放牧明けの1歳馬。

さほどひどく見えない?
盛り上がっている部分は折れた肋骨のようだ、とのこと。
しかし、触ってみるとどうも肋骨の断端のように思えない。
ポータブルX線撮影装置で横方向で撮影してみる。
肋骨が変形しているところはないように見える。
盛り上がっているところを切開した。
肋骨だとしてもこれだけ変位しているなら整復しなければいけないし・・・・・

盛り上がっていたのは肋骨ではなく木の折れた端だった。
指でひっぱっても動かない。
何でつかむか・・・
除鉄用の剪鉗でつかんで引き抜いた。
ヒューヒュー鳴って空気が出入り始めた。
塞いでおかないと胸腔の陰圧がなくなったら呼吸できなくなる。
ガーゼで塞いでおいて、周りを洗浄する。
木のかけらがいくつも出てきた。
超音波検査では、腹腔には出血はなさそうだった。
しかし、胸腔は左も右も血液と血餅が溜まり、肺の腹側辺縁は無気肺化して潰れている。
傷から指を入れると、丸くて押すと圧痕がつくものに触る・・・・たぶん胃だ。
横隔膜を破っているようには触らない。
開腹手術してもこのあたりの横隔膜だと修復するのは難しい。
立位で傷を縫ってしまうことにした。
空気が出入りしないように縫合した。
切開した胸部の筋層も縫合し、皮膚も縫う。
それから胸腔にトロッカーカテーテル18Frを入れた。

吸引器で吸引し、200mlほど血液が抜けた。
腹腔にも胸腔にも抗生剤を入れておいた。
「刺し傷」なんだけど、牧柵が胸腔や腹腔に刺さっているのも刺創と呼ぶのか?
「外傷治療」の点数では治療費は安すぎる。
ー
翌日は40℃、翌々日は39℃、で胸腔ドレインから血液流出があったがドレインは詰まり気味。
ということで再来院してもらった。
胸腔の血液は減っており、その朝は38.9℃。
再穿刺や、ドレイン再留置は必要ないと判断した。
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ガーデニングの本でもなり、田舎暮らしの本でもある。
そして、ドラマのような人生の本でもある。
イギリス貴族に生まれて、その社会になじめず、所持金なしで日本に流れ着いて、英会話教室を運営しながら3度目?の結婚をした。
男は、登山家で、カレー料理店を経営しながら、写真家になり、2度目の結婚をした。
2人の子供も生まれて、その間に古民家に住み、ハーブガーデンを創り、ガーデニングで評価されるようになったが、しかし、すでに人生は秋で・・・
珠玉の写真と、切れのある本音の正直な文章。
よい本だ。