小学校2年生まで住んでいた家の、2軒向こうにひとつ年上のMH君の家があった。
MH君は、夜店で色つきのヒヨコを買ってきて、家の前に小屋を作って飼い出した。
なんと卵を産むようになったので、オスとメスだったのだ。
朝から、コケコッコーと啼いていたが、現在ではあんなことは近所迷惑で許されないだろう。
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その卵を産んだのを小屋の外から見ていると、メンドリが卵を自分で割ってしまうことがあった。
「外敵にとられるくらいなら自分で壊してしまった方がまし」という本能なのか、
「外敵に狙われるもとになる卵は処分してしまわないと、自分の身も危ない」ということなのかわからないが、
出産した動物はそっとしておいてやった方が良い、という私の産科学上の考えの元になっている経験だ。
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話がそれた;笑
夜店で売っていたカラースプレーされたヒヨコは、本当は雌雄鑑別済みで、オスだけなのが本当なのだと思う。
初生雛鑑別師という民間資格があって、生まれたヒヨコの肛門を目視で判別し、オスメスを判定する技能が資格になっている。
肛門の形状でヒヨコのオスメスを判別するのは日本で考案された技術で、日本人の初生雛鑑別師は優秀で世界中で仕事をしてきたそうだ。
ヒヨコは孵化後4-6週間経つとオスメスの特徴が表れて誰でも区別がつくようになるが、それではオスのヒヨコも1ヶ月以上育てる「無駄」がおこるので、
生まれてすぐにオスメス判別して、産卵鶏にならないオスは処分したい、というのがオスメス鑑別師の存在理由のようだ。
採卵用種のニワトリは、鶏肉にするにも効率が悪いので、オスはできるだけ早く処分したいらしい。
2つのダンボール箱にオスとメスを放り込み、オスの入ったダンボール箱はそのまま焼却炉に入れると聞いたこともある。
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今は品種改良が進み、オスとメスは羽毛で区別がつくようになっていて、初生雛鑑別師の需要は落ちているとも聞く。
いずれにしても生きたまま燃やされるヒヨコがなくなるような技術が開発されないものかと期待する。
初生雛のオスメスの鑑別というのはとても獣医学的な技術のような気もするが、私はやってみたいとは思わない。
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獣医学教育では、ニワトリの病気も学ぶし、ニワトリの解剖もした。
しかし、産業の中ではニワトリは個体診療の対象にはならない。
伝染病管理が養鶏に関わる獣医師の大きな責務だろう。
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養豚でもブタは個体診療はほとんど行われていない。
私は昔、ブタの難産で呼ばれたり、学生のときも豚丹毒のブタを診に少年院へ往診に行ったことがあるけど・・・
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大学院生だったとき、私の修士論文研究の最初のテーマは乳牛の第四胃変位だった。
その頃、第四胃変位についての文献を渉猟した。
北米の大型酪農ではすでに第四胃変位の手術は行わないで淘汰する、という農場もあった。
1000頭搾乳していたら、400頭以上メスが生まれる。「ヨンペン」になるような牛に高い獣医代をかけて治療するより、「処分・淘汰」というのがカリフォルニアなどの大規模酪農場の実状だという情報もあった。
そして、それから30年。
北海道でもメガファームと呼ばれる大型酪農場が登場している。
しかし、私はそういうところを相手に獣医師として働かずに終わりそうだ。
「絶滅危惧種」などと言われながら、サラブレッド生産地で大動物臨床獣医師として働いてこれて、良かったな、ありがたかったな、と少し思っている。
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今住んでいる家に引っ越して13年。
そのときから家の周りに勝手に咲くオダマキ。
少し減った気もするが、世話もしないのに毎年咲いてくれる。
去年は初めて種を採ってポットに蒔いてみたが発芽しなかった;涙
リンゴの樹は私が植えた。
何年か後から花が咲き、実をつけるようになった。
だけど、相棒が1本を枯らしてしまったので、残ったこの1本のリンゴも受粉できず実がならなくなった。
年数が経つのはたいへんなようで、でも速い。