馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

子宮破裂あるいは裂傷の治療法 3

2018-05-09 | 学問

さて、分娩時の子宮裂をどう治療するかについて、教科書をもう一冊。

馬内科学 Equine Internal Medicine.

これもすでに第4版が出ている。

Equine Internal Medicine, 4e
Stephen M. Reed DVM Dip ACVIM,Warwick M. Bayly BVSc MS PhD Dip ACVIM,Debra C. Sellon DVM PhD DACVIM
Saunders

私の書庫にあるのは第3版。

Equine Internal Medicine, 3e
Stephen M. Reed DVM Dip ACVIM,Warwick M. Bayly BVSc MS PhD Dip ACVIM,Debra C. Sellon DVM PhD DACVIM
Saunders

書評を書いてプレゼントされたもらい物。

頑張って読んで書評書くから、最新版をまた下さい;笑

                  -

以下、抜粋。

もし子宮裂創が疑われたら(部分的あるいは全層)、その繁殖雌馬に広範囲抗生物質を投与すべきだ。

非ステロイド抗炎症剤はエンドトキセミアの進行を抑えるかもしれない。

オキシトシン治療(10-20IUを2時間毎)は子宮の退縮を促進する。その繁殖雌馬が不快感を示さなければ、投与量は増やすことができる。

輸液療法は必要なら投与すべきだ。カルシウムレベルを正常域にしてくれる。

子宮の小さな背側の裂創では集中的な内科的治療で充分かもしれない。しかし、もし治療費に制限があるのでなければ、ほとんどの症例は縫合を必要とする。

腹腔洗浄について、必要性、有効性、についての意見は様々である。

大きな全層の裂創は当然外科的治療すべきだ。

子宮体の裂創の症例の中には、盲目的に縫合できることがある。

しかし、多くの場合、腹側正中開腹が望ましいアプローチである。

                 -

内科学の教科書を書いている内科学の先生なので、その前段にある子宮裂創の起こり方についての記述も、子宮穿孔の治療法についても、すこしピントがずれているように思う。

馬臨床内科学の教科書としては内科診断学として、

分娩後の腹膜炎をどう診断するか、臨床徴候、血液検査所見、腹水の所見、超音波検査所見、直腸検査、そして膣から手を入れて子宮内裂創を触って診断すること、

そして、それぞれをどう判断するか、類症鑑別は何か、書くべきだ。

腹膜炎の原因菌と抗生物質治療についても内科の教科書にこそ必要だろう。

さらには、子宮裂創を内科的に治療した場合のこじれ方complications についても書く必要がある。

この章の執筆者は、大学の内科の先生なので、子宮裂創の臨床経験が少ないのだろう。

それでも、子宮穿孔では、たいていの場合、腹部正中切開が望ましい。と書いている。

  ,but often a ventral midline celiotomy is the preferred approach.

                 ---

さて、3回にわけて、「子宮穿孔による腹膜炎は開腹手術して子宮裂創を縫合し、腹腔内を洗浄すべきだ」、という教科書の記述を紹介してきた。

われわれは、妊娠末期でも、分娩後数日でも、必要なら開腹手術を躊躇はしない。

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ようやっと晴れ間が見えて、満開のサクラを楽しむことができた。

夜は結腸捻転の手術に呼び出されて、夜桜も見れたし。

ヨカッタ、ヨカッタ;笑

 

 

 

                 

 

 

        

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子宮破裂あるいは裂傷の治療法 2

2018-05-09 | 学問

分娩後の腹膜炎で、開腹手術して子宮裂創を確定診断すれば、裂創を縫合して腹膜炎の原因を取り去り、さらなる腹腔汚染を防止できる。

Embertson先生がEquine Surgeryにわざわざ”私の意見では--”と書いておられるとおりだ。

                 -

さて、「大動物の泌尿生殖器の外科」 Large Animal Urogenital Surgery にはどう書かれているか?

Large Animal Urogenital Surgery
Dwight F. Wolfe,H. David Moll
Williams & Wilkins

                 -

この本のこの章を書かれているのは若き日の、Elizabeth Santschi先生。

馬の軟骨下骨嚢胞をスクリューで固定して治す、という方法を提唱してわれわれが注目している先生だ。

以下抜粋。

小さい子宮裂創では、広範囲抗生物質の全身投与と腹腔ドレナージと洗浄による内科治療が成功することがある。

しかし、お勧めはできない。

特に繁殖供用だけに用いられる雌馬では。

温存的治療には、腹膜炎と癒着形成のリスクがある。

癒着が子宮や卵巣を巻き込めば繁殖障害におちいる可能性があり、腸管を巻き込めば疝痛が起こりうる。

長期間の抗生物質治療と複数回の腹腔洗浄が必要になるので、このような治療は高額治療となりがちで、

回復が遅れて繁殖シーズンを失いかねない。

 分娩後の腹膜炎の最良の初期治療は探査的開腹手術である。

開腹手術は最良の腹腔洗浄を可能にし、もっとも当たり前に腹膜炎の原因箇所に到達でき、

ほとんどの症例で腹腔のさらなる汚染を特定して除去することができる。

子宮破裂を内科的治療例(8頭)と外科的治療例(8例)の症例報告では、

外科治療の生存率は63%、内科治療の生存率は25%と報告されている。

                -

主旨はEmbertson先生と同じだ。

子宮裂創について、開腹手術による治療を強く推奨している。

----子宮裂創を開腹手術すべきかどうかについて、続く----

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とうちゃん しんしゃでどらいぶいくべ

わ~い

1日で毛だらけ・・・・・・

 

 

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子宮破裂あるいは裂傷の治療法 1

2018-05-09 | 学問

今年はほんとうに子宮穿孔の症例が多い。

この馬は2日前の夜分娩、翌日から39度を超す発熱。

左子宮角の先端近くで、漿膜と筋層が10数cm裂け、一部は粘膜も穿孔していた。

                  -

子宮穿孔の治療方法について、馬臨床の教科書にどう書かれているか?

まずはEquine Surgery 4ed.

Equine Surgery, 4e
Jorg A. Auer Dr Med Vet MS,John A. Stick DVM
Saunders

この章の執筆者はケンタッキーのあのRood and Riddle馬病院のEmbertson先生だ。

以下、抜粋。

新しい回顧的調査が報告されている。

ひとつの調査では、外科的治療と内科的治療を比較している。

もうひとつの調査は70頭以上の子宮裂創を外科的に治療している。

子宮角が75%、子宮体が25%であった。

左子宮角25%より、右子宮角75%が多かった。

ふたつの調査全体の生存率は76%であった。

 ふたつの調査の間でいくつかの違いがある。

ひとつの調査では、子宮角と子宮体の裂創で生存率に差はなかった。

もうひとつの調査では、統計処理されていないが、子宮角の雌馬の生存率(84%)は子宮体の雌馬の生存率(58%)より良かった。

古いほうの調査では、内科的治療と外科的治療で、生存率、入院日数、治療費、繁殖成績に大きな差はなかった。

もう一方の調査では内科治療については検証されていない。すべての子宮裂創は外科的に治療されている。

 ひとつの調査は、多くの子宮裂創で内科治療が現実的な方法のひとつだとしている。

しかし、私の意見では、

積極的な外科治療は正確な診断を可能にし、腹腔のさらなる汚染を防止し、もっとも完全な腹腔洗浄ができ、そしてそれゆえに回復を速める。

                   -

教科書の獣医学的論説では、根拠を示さず自論を展開することはできない。

Embertson先生ほどの経験と権威があっても、だ。

しかし、この項は、

I am the opinion that ---

で始まる一文で締められている(下線部)。

                   -

その後、子宮裂創について新しい調査成績が報告されているはずだ。

Equine Surgeryも新しい第5版がでている。

誰がどう書いているか、読むのが楽しみだ。

Equine Surgery, 5e
Jorg A. Auer Dr Med Vet MS,John A. Stick DVM
Saunders

続く。

                 ////////////

 

ゴールデンウィークが終わってもどんよりした寒い日が続いている。

サクラは散らずに残っている。

しかし、サクラの見事さは、5月の晴天と暖かさがあってこそなんだなと実感する。

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早期の2回目の開腹手術

2017-12-09 | 学問

この秋は、子牛の骨折内固定の講習であちこちへ出かけて、すっかり意識がそちらへ行ってしまった。

本業に戻らないと (って馬の開腹か?;笑)

                           -

腸管手術したのに、術後も疝痛を示すPOI (Post Operative Ileus 術後イレウス)は外科医の悪夢だ。

Florida大学のDavid E. Freeman教授のグループが、空腸絞扼の外科手術後の早期の再開腹について書いている。

                           -

Response to early repeat celiotomy in horses after a surgical treatment of jejunal strangulation

空腸絞扼の外科手術後の馬における早期再開腹への反応

Veterinary Surgery, 2017; 46: 843-850

要約

目的: 空腸絞扼で手術された馬での早期の再開腹後の予後を求めること。

研究のデザイン: 回顧的症例調査。

動物: 空腸空腸吻合によって絞扼性の空腸病変を外科治療行った馬(n=14)と切除しなかった馬(n=8)で、術後の胃液逆流(POR;Postoperative Reflux)と術後疝痛(POC;Postoperative Colic)、あるいはそのどちらかにより再開腹した馬(n=22)。

方法: 再手術前の症状を示した時間、手術時の所見と治療内容、そして結果について診療記録を調べた。

長期間追跡は、電話での聴き取りで生存を記録した。

手術のタイミングへのPOCとPORの影響を分析した。

長期間の生存はKaplan-Meier分析により検定した。

結果: 最開腹は最初の手術後、中央値57時間で、症状の始まりから16.5時間で行われた。

そして、POCがあった馬は、PORがあった馬に比べてより早かった(P<.05)。

全部で22頭中3頭が麻酔中に安楽殺された。

1回目に空腸空腸吻合を行った11頭のうち全部で9頭が、吻合部の問題によって元の吻合部の切除を必要とした。

切除していなかった8頭では、2回目の手術は切除(4頭)あるいは減圧(4頭)であった。

再開腹は、PORを示した馬16頭中13頭で成功した。

再開腹でPOCは全頭(n=9)で取り除かれた。

全部で19頭が麻酔から覚醒し、全頭が生存して退院した。

2回の手術は同じ腹部正中切開で行われ、術創感染が17頭中13頭で診断され、ヘルニアが感染した術創13のうち4頭で起こった。

生存期間の中央値は90ヶ月であった。

結論: 再開腹によってPORかPOCあるいはその両方を取り除くことができる。

そして再手術はPORを悪化させることはないと思われた。

今回の調査での再開腹の判定基準は、空腸絞扼の術後のPOCとPORを治療するガイドラインとなりうる。

                        -

私の経験と似通っていると思う。

1回目の開腹手術が終わる。

たいていはそれで疝痛が消えるが、術後も不快感が続くことがある。

あるいは、絶食中は順調だが、食べさせ始めると疝痛を起こしたりする。

蠕動を亢進させる薬を点滴したり、リドカインを投与して様子を観るが、駄目なら2回目の開腹を考えることになる。

最初の手術から57時間、これはちょっと遅いか。

症状開始から16.5時間、これは内科的対応とその反応を観ることを思えば早いか。

疝痛を示す症例POCで、逆流を示す症例PORより早いのはそうだろう。

逆流には胃カテで対応できるが、疝痛が続くなら早く開けなければならない。

                        -

22頭のうち3頭は再手術中にあきらめて、残りの19頭は退院できた。

これは良い成績だが、短期間に2回開腹すると癒着しやすいし、術創のトラブルも多くなる。

それでも、2回目であろうと、やらなければならないときはやらなければならない。

馬の腸管手術について、次々と成績をまとめておられるDavid E.Freeman先生に心から敬意を表する。

                        -

この文献に紹介されている2回目の開腹をせざるを得なかった病変。

空腸局部的な緊縮。

腸間膜の裂孔で絞扼されていたのを整復した87時間後。

最初の手術ではこの緊縮の徴候はなかった。

                       -

空腸空腸吻合部での通過障害。

A, 吻合部(矢印)の吻側が膨満している。

B, 同じ部位を開けると吻側の内容物と、反吻側の暗色になった粘膜(右側)が見える。

38時間前の最初の手術時はこの粘膜は正常だった。

                      -

空腸の、血栓のできた静脈と、それに関連した赤と青に変色し水腫を起こしている梗塞部(白矢印)。

最初の手術から12時間後。

最初の吻合部は黒矢印で示されている。

                      -

腸間膜の血腫による牽引のために、腸間膜が短くなって空腸空腸吻合部(矢印)が捻れた。

その血腫は33時間前の最初の手術時には創外へ出せたが、2回目の手術時には不可能だった(左が吻側)。

                     ---

2回目の開腹手術をしなければならなくなるいくつかのパターンがおわかりいただけただろうか。

最初の手術に問題がなくても、術後の腸閉塞が起こることは十分ありうるのだ。

                      -

麻酔から覚醒した19頭のうち18頭で6ヶ月以上の追跡が可能だった。

18頭のうち17頭は6ヶ月後には生存していた。

1頭は手術から12ヶ月後に放牧地で死んでいるのが発見された。原因不明。

もう1頭は手術から18ヶ月後に疝痛の検査中に直腸損傷し安楽殺された。空腸空腸癒着が剖検で見つかった。

他の4頭の安楽殺の理由は、手術後6ヵ月後のひどい疝痛(1ヶ所の癒着が空腸10cmの絞扼した)、30ヶ月後のひどい疝痛(剖検なし)、72ヵ月後の事故、92ヶ月後の蹄葉炎とCushing病、であった。

残りの12頭は術後6-108ヶ月は生存しており、中央値は90ヶ月であった。

2頭の繁殖雌馬は手術時に妊娠5・6ヶ月であり、退院から1ヶ月以内に2頭とも流産した。

1頭は以前の活動(レベル4のドレッサージ)には戻らなかった。調教中の軽度の疝痛によるものであった。

                        -

つまるところ、22頭再開腹し、3頭は術中にあきらめ、半年以上生存して”無事”だったのは12頭あまり。

(30ヶ月生きていたら、ひどい疝痛、おそらく癒着でもあったのだろうが、2年以上経っているから例えば繁殖雌馬なら仔馬を産めたかもしれないし、競走馬だって競馬できたかもしれない。)

(72ヶ月後の突発事故を2回の腸管手術と関連付けるのは無意味だろう。92ヶ月後の蹄葉炎による安楽殺も御同様。)

2回目の開腹をしなければならない場合、予後は当然1回ですんなり治った場合より厳しくなるが、必要ならやるしかない。

私の患畜は、繁殖雌馬が多く、たいていは妊娠中だ。

なんとか生き延びてお腹の子だけでも産ませることができれば、そしてできれば育ててくれれば、開腹手術で救命した価値があると考えている。

あとは牧場やオーナー側の判断だ。

よく「腹の子だいじょうぶだろうか?」と訊かれる。

母馬が生きる死ぬなのに腹の子を心配してどうする。やらなければ母子ともに死ぬ。

                     /////////////////

おいで~って呼んで、

すぐに戻って来るなら、

もっと自由に散歩してやれるんだけどね。

 

 

 

 

 

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馬の骨折ではトマススプリント-キャストは・・・・

2017-11-07 | 学問

小型の馬属の四肢の骨折をトマススプリント-キャストで治療した、というリポートが今年のVeterinary Surgeryに載っている。

Modified Thomas splint-cast combination for the management of limb fractures in small equids.

小型の馬類の肢の骨折の治療のための改良されたトマススプリントとキャストの組み合わせ

デンマーク、コペンハーゲン大学からの報告。

要約

目的

改良したトマススプリント-キャスト併用で治療した小型の馬類家畜の肢の骨折の治療と予後について記載すること。

研究のデザイン

回顧的症例群。

動物

畜主所有の馬とロバ。

方法

2001年から2012年までの、肢の骨折と診断され、改良トマススプリントキャスト併用による外固定で治療した動物の詳細を、x線画像を含めた診療記録から調べた。

退院後6ヶ月以降については畜主や獣医師への電話相談から情報を得た。

結果

9頭の馬と、4頭のロバは、脛骨骨幹部骨折(n=4)、尺骨骨折(n=3)、中足骨遠位(n=2)、中手骨近位(n=1)、橈骨骨幹(n=1)、踵骨(n=1)、大腿骨遠位成長板(n=1)の骨折と診断された。

追跡調査は12頭について可能だった。そのうち8頭(67%)は骨折から回復し、放牧できるようになった。

6頭は患肢の明らかな外見上の変形を起こした。

結論

長骨骨折を起こし、運動能力を期待されない小型の馬属の限られた症例は、改良トマススプリント-キャスト併用による外固定で治療できる。

畜主には、この治療が命を助けるだけの手技だと考えられることを説明しておくべきだ。

Veterinary Surgery 2017; 46: 381-388

                              ---

 まずModified Thomas splint-cast だが、特別なものではない。どうもわれわれが普通にトマススプリントと呼んでいるものをModified Thomas splint と考えて良いようだ。

もともとThomas splint は人の大腿骨骨折の治療のために100年以上前に開発された。

それを家畜での使用のために改良したのが、われわれが知っているModified Thomas splint だ。

それにキャストも巻くと、Modified Thomas splint-cast combination ということになる。

                                -

INTRODUCTIONによれば・・・

馬の長骨骨折のほとんどでは、ORIF (Open Reduction and Internal Fixation ; 切開して整復し、内固定すること) が選択されている。

それは、正しく解剖学的な整復を行い、しっかりした固定を行うことで、早期の機能回復を可能にする。

馬の骨折治療の進歩に関わらず、感染、対側肢の蹄葉炎、癒合不全、インプラントの破壊、がいまだに起こる。

経費と結果を見比べて、オーナーの中には手術をこばむ人もいる。

しかし、外固定(副木やキャスト)は馬には単独ではめったに用いられることはない。

適切な骨折整復と不動化をできず、それゆえに、過剰な贅骨形成や骨癒合の遅延、あるいは骨癒合不全のリスクが高まるからである。

さらに、外固定の期間が長くなることで、擦過傷、腱の弛緩、対側肢の蹄葉炎などの併発症につながりやすく、それによって機能回復と本来の飼養目的に戻るのを妨げかねない。

                           -

この症例報告で使用されていたModified Thomas splint はこういうやつ。

径1cmの鋼線を溶接して作られている。

近位の輪状の部分から30°傾けて肢の部分が付けられている。

                           -

この報告では、Thomas splint を着ける前に、骨折を整復するために肢を引張るのに、

内側、外側、背側、掌/底側に粘着テープを貼り付けて引張っている。

良い方法かどうか、やってみたことがないのでわからない。

                           -

ポニーの後肢をModified Thomas splint-cast combination (MTSCC)で外固定したところ。

飛節より遠位は、トマススプリントの後の棒に固定されている。

飛節自体は前と後の棒に固定されていて、腿部は前の棒に固定されている。

                           -

右前肢につけたMTSCC。

キャストは腕節の上までは前と後の棒に固定されていて、腕節より上は後の棒だけに固定されている。

                            -

さて成績は、

5歳 シェトランドポニー 152kg 内側関節面を含めた脛骨遠位の変位していない斜骨折  放牧可能  飛節が固まった。骨性の腫脹

2歳 ロバ     140kg 脛骨骨幹部近位の変位した斜骨折    放牧可能  骨性腫脹、外反、3年後再骨折

1歳 シェトランドポニー  112kg 内側関節を含んだ脛骨遠位骨幹の変位、粉砕骨折   放牧可能   骨性腫脹

0.5歳 ロバ    60kg  脛骨骨幹開放、変位、斜骨折   安楽殺  MTSCC除去2日後中足骨粉砕骨折

20歳 シェトランドポニー 115kg 変位していない尺骨骨折type4  追跡できず

12日齢 QH   65kg  変位していない尺骨骨折type3   放牧可能   競技で騎乗可能

9歳  アラブ   308kg 変位した関節を含めた尺骨骨折type4  安楽殺  腸炎、脇にひどい圧迫創

12歳 シェトランドポニー 157kg 中足骨遠位の粉砕骨折    放牧可能   骨性腫脹

4歳 ロバ   136kg 中足骨遠位の開放粉砕骨折  安楽殺  2週間後傷は治癒、骨感染の所見なし、オーナーの希望で6週間後殺

1歳 シェトランドポニー 100kg 中足骨近位の粉砕骨折  放牧可能  骨性腫脹

10歳 シェトランドポニー 100kg 踵骨骨折、飛節の脱臼・亜脱臼  放牧可能

0.75歳 ロバ  76kg  橈骨骨幹の変位横骨折  放牧可能  骨性腫脹

0.25歳 フリージアン  127kg  大腿骨遠位成長板の変位骨折(SH2)  放牧可能  速歩で跛行

                                -

固定期間は、5週間から20週間。

5週間のは安楽殺症例。次いで短い6週間の症例2頭のうち1頭も6週間で安楽殺。もう1頭の6週間の症例は、変位していない尺骨骨折。これは治療せず温存でも治ったんじゃないか? 

だから、固定期間は、それ以外の症例の8週間から13週間くらい、つまり2ヶ月から3ヶ月と考えた方が良さそうだ。

1頭が20週間(5ヶ月!!)と特別長いが、大腿骨遠位成長板のSH2損傷で変位していた症例。ゴテゴテになって固まったのだろう。跛行が残った。

                                -

それでも、とても良い成績だと思う。

曲がりなりにも、12頭のうち9頭が放牧可能なくらいには回復している。

ロバがとくに成績が良いわけではない。

必要なときには、上手にMTSCCできるように準備をしておきたい。

                                -

考察の末文では、

小型の馬類では(馬類であっても体重が重くないなら?)、経済的な問題で内固定手術や貫通ピンキャストが選択できないなら、MTSCCも選択肢である。

畜主には、この治療が、命を助けるためだけの手技で、放牧が可能になることが期待できる結果であること、を知らせておくべきだ。

とある。

                                -

同じ馬類でも、サラブレッドは

競走馬にしなければならない馬がほとんどだし、

皮膚が薄いので長期のMTSCCに耐えるのは厳しいし、

蹄葉炎になりやすいし、

肢が長くてMTSCCしにくい、

のでトマススプリントキャストには向かない。

逆に個体価格が高いので、治療費をかけられことが多く、競走馬になったり、繁殖供用に問題を残したくないので、内固定手術を選択しやすい。

                                                              ////////

冬に傷めたオラの右飛節。

春と夏にも痛くなった。

でも、今のところ大暴れできる。

トマススプリントは勘弁してもらいたい。

 

 

 

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