12時40分に起こされる。
繁殖雌馬の疝痛だという。
年齢は?分娩は?と寝ぼけながら聞く。
到着に1時間半くらいかかるというので、アラームをセットしてもう少し休む。
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来院すると疝痛は治まっていた。
PCV47%、乳酸値1.2mmol/l。
直腸検査で巨大な妊娠子宮の上に小腸ループ。
体表からの超音波診断でも膨満した小腸。
しかし、肥厚した部位は確認できなかった。
この馬、夜9時にヒマシ油を投与されている。
小腸の膨満はそのせいかもしれない・・・・・
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どうしてヒマシ油なんか飲ますかね?
小腸閉塞なら下剤は禁忌だ。
小腸の便秘などまずありえない。
刺激性の下剤は胃や腸へのダメージも懸念される。
まったく・・・・・
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疝痛が治まっているので、様子を観ることにした。
妊娠子宮に圧迫されての疝痛にヒマシ油を投与したことで状態が悪化しただけなら開腹手術せずに済むかもしれない。と考えた。
しかし、その後、疝痛は再発した。
朝、5時半。
開腹手術を決断する。
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巨大な妊娠子宮の、まず左に膨満した小腸がある。
引っ張り出そうとするが不可。
妊娠子宮の右側で大結腸を引っ張り出し、盲腸を引っ張り出し、背側盲腸紐を手繰って回腸を引っ張り出す。
が、それ以上は出てこない。
術創を切り広げ、妊娠子宮の頭側で変色した小腸を引張ると、大網と絡んでいる。
大網を引き出し、結紮止血しておいてできるだけ切除する。
絡んでいた小腸を子宮の背側へ押し込んでおいて、子宮の右側へ引張るとなんとか創外へ出せた。
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この馬、空腸の下部にメッケル憩室間膜を持っていた。
それゆえの空腸捻転だったのかもしれない。
しかし、纏絡はひどいものではなく、壊死の状態も極端ではなく、回腸にも内容が流れてきていた。
回復困難な部位の腸間膜の血管を結紮止血し、空腸を切断して内容を捨てる。
腸間膜の血管を止めた部分の空腸2.8mを切除し、健康な部位どうしを吻合する。
腸間膜を閉鎖する。
腸間膜が術創ぎりぎりまでしか出せないので苦労した。
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あとは閉腹なのだが、切開部位が長く、腹圧が高いのでけっこうな作業になる。
いつもどおり1のMonocrylで閉じるが、本当はもう少し太い糸が欲しい。
すごいお腹をしているので、ヘルニアベルト(右;写真は別症例)を装着して覚醒起立させた。
馬が起立して入院厩舎へ移動したのは朝10時近かった。
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仕方がないからこれでストレス解消サ。
「あんたに何のストレスがあるの?」
・・・・まあ、いろいろ。