SSI Surgical Site Infection は馬の骨折内固定が失敗する大きな原因のひとつ。
内固定手術は、技術も周囲の環境も変っていくので、SSIがどれくらい起きていて、どのような手術で多いか、過去とは変ってきているかもしれない。
Veterinary Surgery にペンシルヴァニア大学New Bolton Center からの報告が載っている。
そう、あのRichardson教授が指導した学術報告だ。
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Surgical site infection associated with equine orthopedic internal fixation: 155 cases (2008-2016)
馬の整形外科内固定に関連した術創感染:155症例(2008-2016)
抄録
目的:内固定後の術創感染の発生を確定し、術創感染と非生存の危険因子を同定すること。
研究のデザイン:懐古的調査。
動物:1病院で2008年から2016年に長骨骨折あるいは関節固定を内固定で治療した馬155頭。
方法:症状、診断、外科治療、外科医、手術時間、抗生物質治療、術創感染の始まり、細菌の同定、補助的治療を記録した。
周術期の多様性を分析して予後に関係する因子を同定した。
結果:術創感染は155頭のうち22頭(14.2%)で報告され、以前の報告より低かった(P=.003)。
球節の関節固定、あるいは尺骨骨折の馬は、より術創感染を起こしやすかった。
局所の予防的な抗生物質投与は術創感染のリスクの増加と関係していた。
術創感染があった馬は、なかった馬より12倍生存して退院する率が低かった(P<.0001)。
球節あるいは腕節を関節固定した馬、あるいは橈骨/上腕骨/大腿骨骨折の馬は生存率が低かった。
開放骨折、切開しての整復、そして内固定、あるいは手術時間と術創感染の間の関連は認められなかった。
結論:本調査での術創感染の発生はかつての報告よりも低かった。
球節あるいは腕節の関節固定、または橈骨/上腕骨/大腿骨骨折の馬は術創感染のリスクが増加し、そして、あるいは生存して退院する率が低い傾向にあった。
術創感染に対する抗生物質局所投与の防御効果は確認することができなかった。
臨床的関連:馬の内固定症例の予後への術創感染のインパクトは今も重大である。
術創感染のリスクが高い症例を特定することが、外科手技、術後治療、そして術創感染が疑われたときの早期の介入に影響をあたえるべきである。
局所の抗生物質治療に関するさらなる調査が必要である。
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師匠Richardsonは、馬の骨折内固定が失敗に終わるパターンとして、
感染、
内固定の崩壊、
不運、
をあげておられた。
経験から出た金言だと思う。
つまり、馬の骨折内固定を成功させようとしたら、感染に気をつけ、崩壊しないような内固定を行い、不運につながる要素を限りなく排除していけばよい。
私のこの10年の馬の骨折内固定の症例では、やはり感染はひとつの大きな失敗要因になっている。
特に、子馬の中手骨、中足骨をdouble plates 固定すると、術後の傷の治りと感染が問題になる。
double plates しないでキャストを併用するとか、
minimally invasive technique で手術するとか、
工夫が必要だろうと考えている。
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しかし、155頭。すごい数だ。
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日暮れが早くなってきた。
そんなにはしゃぐな、脚も痛いんだし。