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馬医者残日録

サラブレッド生産地の元大動物獣医師の日々

子牛の骨折治療の動画 Youtubeから

2023-01-29 | 牛、ウシ、丑

Youtubeにはいろいろためになる動画もある。

ただ、牛の骨折治療についての動画は少ないようだ。

いくつか見つけた。

HOW TO CAST A BROKEN LEG vlog 233

これは農場で、子牛の中足骨骨折をキャスト固定する様子。

それ以外の部分も長いけど。

私は、このキャストの巻き方が良いとも上手だとも思わない。

農場で獣医師ひとりで、DRも持っていないとありがちな処置かな。

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Fen Vet Webisode 44: A Cast of Friendly Heifers

こちらも同じ獣医さんのVLogシリーズ。

こちらは診療所へ運んで来られたので、診察台に上げて、X線撮影もして、助手も居て。

3週齢のシャロレー・アンガス子牛。

橈骨と尺骨が遠位よりの骨幹で短斜骨折(X線画像は10:30に)。

子牛の橈骨遠位の骨折はフルリムキャストで治せることがある。

ただし、関節に至っていない、成長板損傷がひどくない、良好に整復できる、粉砕骨折でもない、橈骨と尺骨が癒合してしまって障害を起こさない、などいろいろ条件が付く。

この診療所は、複数の獣医さんが居て、小動物もやっている(小動物が主?)MiXPracticeという形態だ。

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こちらは別な獣医さんの動画。

Cow Fracture Repair

数日齢のレッドアンガス。

脛骨遠位骨幹の長斜骨折だが、実は螺旋骨折から派生していて、亀裂が近位骨幹へ延びている。

「ありがたいことにオーナーが内固定手術に同意してくれたので、1枚か2枚のプレートで手術する」

2枚のLCPで内固定手術している。

内固定手技については、私はDiscussionしたい点がいくつかあるけど・・・・笑

この診療所も小動物主体のようだ。

きれいで、助手さんがたくさん居て、小動物用手術台の上で吸入麻酔で手術。

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家畜診療の内容だけでなく、

環境や社会構造や経済状況や、

獣医学教育のレベルや、

考えさせられることはいろいろあるのだけれど、

肢が折れちゃった子牛を目の前にしたとき、獣医師として自分にできることは何か、考えたい。

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すっかり牛の骨折の話題が続いた。

私は38年、家畜共済の獣医師として働いてきた。

「禄を食む」

というやつだ。

私の仕事のほとんどはサラブレッドの二次診療だったけれども、

日本の牛の臨床にも何か残していければ、と思って牛の整形外科について考えている。

今日から那須へ行くんだけどね。

寒いな~

北海道よりましか;笑

 

 

 

 

 


寒波襲来

2023-01-25 | 日常

10年に一度の寒波が来る、と脅されて・・・・

1/24の朝。

-10℃。

これならたいしたことはない。

翌1/25の朝。

-18℃。さすがに寒い。でも、暗いうちから散歩した。

三石は-22℃。

これはさすがに凍れる。

午前中、関節鏡手術のためにDRのスイッチを入れようとしたが、動かない。

冷えすぎてバッテリーが機能しないらしい。

事務所のストーブで暖めたらスイッチが入った。

デジタル機器は低温に弱い。

特に充電式のものはバッテリーの出力が下がる。

最近のスキースノボウェアは、スマホを温めるための専用のポケットが付いていたりするらしい。

私たちは建物内で診療するのでなんとかなるが、往診先の農場や屋外で診療する獣医さんたちはたいへんだろう。

薬も凍るし、指はかじかむし、服を着こんでいたら直腸検査や難産介助できない。

-30℃近くなっている地域もある。

お疲れさま・・・・・じゃなくて何と言うべきだ?

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原画を贈っていただいたので、Dukeが居た部屋に飾った。

可愛い、可愛い。

今もそばに居るような気がする。

頭を撫ぜて、胸をドンドンして、ギュッとハグしたい。

 

 

 

 

 


初難産2023は尾位

2023-01-23 | 繁殖学・産科学

朝、4時半、あと30分ほどで難産が来ます。

肢が来てるけど、頭が触れない、ということなんで・・・との電話。

エネルギーチャージして、準備体操してから出かける。

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枠場に入れて、腕を入れたら「後肢ですね」とのこと。

牧場では飛節までは触れなかったらしい。

産科チェーンをかけて、尾位のままひっぱりだす。

破水から3時間経っていたが、子馬は生きていた。

結果的には牧場で引っ張らなかったのがLuckyだった。

本当は、尾位ならそのまま後肢から引っ張り出した方が好い。

尾位で産道に入ると早くに臍帯が切れるので急ぐのだ。

急がない難産ってあまりないけど。

というわけで、この繁殖シーズン最初の難産は子馬が生きて出てきた。

さいさき好いぞ、と思うことにしよう;笑

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今シーズン5日目のスノボ滑走。

朝はマイナス12℃で、寒いし手足の指が凍えた。

平日はあいかわらずガラガラ。

怪我や故障しないように頑張る;笑

 

 


除雪 関節鏡2頭 牛の帝王切開 外科医は悪い奴じゃないとつとまらない

2023-01-20 | 関節鏡手術

朝、自宅で1時間ほど除雪。

ウッドデッキと敷地内と前の道路と。

診療所へ出勤して、7時半から除雪。

除雪しておかないと、手術に来た馬が歩けない。

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朝は1歳馬の飛節OCDの関節鏡手術。

左が間違いなくて、右は確認が必要、とのことだった。

しかし、馬を観たら滑液が増えているのは右。

手術台に乗せてから左右ともにX線撮影し、右には病変があり、左は病変なし。

右だけ手術した。

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昼、予定日を10日過ぎている黒毛和種の帝王切開。

子宮頚管の開きはまだまだ不十分で、しかし胎盤が剥がれてきている。

女性獣医師2名で始めたが、子宮を術創へひっぱってこれない。

「無理そう?」と確認して、ワンポイントリリーフに入る。

左膁部を切開しているのに、どういうわけか脂肪たっぷりの大網が子宮を覆っていて触りにくいが、子宮越しに胎児の後肢をつかんで術創から引っ張り出す。

子宮弛緩剤もよく効いているし、子宮捻転ではないし、それほど大きくないし、たいへんな症例ではなかった。

力の入れ方にコツがあるのか、単に握力や腕力なのか自分ではわからない。

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午後の予定は競走馬の腕節骨折の関節鏡手術。

競馬場からは左腕節の骨折のX線画像が付いてきている。

しかし、馬を観ると右の腕節が腫れている。

この馬はすぐに左右ともX線撮影した。

右に病変を確認し、左は異常なし。

競馬場の獣医師が左右を間違えたのだろう。

毛を刈ってみると、右腕節には以前の手術痕もあった。

だいじな情報なのだが、伝わってこないこともしばしば。

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人を信用しないで、自分で確認することがたいせつ。

生き物を切り、骨を削る外科医は人を信じない悪い奴でないとならない。

人にだまされるお人好しではつとまらない;笑

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これこれ。

薪の間で越冬していて、薪といっしょに部屋へはいってくる”糸トンボ”

捕まえて窓から逃がすのがけっこう面倒。

 

         

           

           

 


ホルスタイン5ヶ月齢187kgの中手骨骨折のキャスト固定

2023-01-17 | 牛、ウシ、丑

ホルスタイン5ヶ月齢が中手骨骨折をした。

縛ってあったまま暴れたらしい。

畜主は手術してでも治したい、とのこと。

しかし、中手骨骨折なら、よほどキャスト固定に向かないconfiguration 立体構造、配置、形態でなければキャスト固定で治せるはず。

しかし、5ヶ月齢にもなったら、往診獣医師が、農場で、医療者一人で、X線画像を同時進行せずに、理想的なキャスト固定をするのは無理だ。

手術と同じように、診療所へ運んで、複数の獣医師が協力して、牛を横臥させて患肢を牽引し、X線撮影を繰り返しながらできるだけ完全に変位を整復し、それを確認し、キャスト固定し、さらに確認した方が良い。

輸送中に開放骨折になったりしないように、立ったまま応急処置用のキャストを巻いて来院してもらうことになった。

中手骨遠位骨幹端の長斜骨折だ。

長斜骨折をキャストで治せるかどうかは、議論があるところだ。

横骨折や短斜骨折の方が、キャスト固定には向いている。

このキャストはあくまで応急処置用。

このようなキャスト固定だと、骨折端が皮膚を突き破って開放骨折になりかねないことがわかる。

骨折遠位部が外旋しているかな。

           ー

牛は、トラックから歩いて診療室へ入ってきた。

その前に体重を量った。187kg。

1. 鎮静して、胴締めをかけて倒す。

キャストを外す。

2. 蹄にドリルで孔をあけ、ワイヤーを通して患肢を牽引する。

整復して、X線撮影して確認する。

3. ストッキネットを二重にして肢に通す。

中手骨遠位部の骨折なので、ハーフリムキャストでも大丈夫かもしれない。

フルリムキャストにすると、生活が不自由になり、わずかとは言え橈骨や上腕骨骨折のリスクがある。

しかし、総合的に考えて、フルリムキャストにした方が良いだろう。

骨折部位の近位と遠位の関節を固定するのが外固定の基本だ。

4. キャストトップになる部位、副手根骨の掌側に外科用フェルト(エバウールシート)を帯状に当てる。

5. グラスファイバーキャストを巻いていく。

本当は少し腕節は屈曲させたい。しかし、そのことより骨折部が変位しないことを優先させる。そのために肢を牽引しておくことが必要なら牽引したままキャスト材を巻く。

6. キャストがほとんど巻けたところで蹄のワイヤーを抜く。蹄尖までキャスト材で覆う。

7. X線撮影してキャスト内で骨折部が変位していないことを確認する。

綿包帯をまいていないので、キャスト材と皮膚の間によけいなスペースはない。

もっと牽引して頑張れば、完璧な整復ができただろうか?

牛の骨折では、骨折端が1/2~1/3接触していれば骨癒合が期待できる、とされている。

もちろん、早く良好に骨癒合して早くキャストを外してやりたいけど。

この牛は、拮抗剤を投与してもなかなか立ち上がれなかった。

絨毯に乗せて、その絨毯をブルーシート2枚を交互に敷いた上を引っ張ってトラックへ運び込んだ。

農場へ帰ったら立ち上がって、フルリムキャストをしたまま上手に生活しているそうだ。

4-6週間で骨癒合が期待できる。

キャストの外からX線撮影して骨癒合を確認してからキャストを外す。

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牛の下肢、中手骨、中足骨の骨折はキャスト固定で良好に治癒する、ということになっているが、ある調査成績によれば治癒率は決して満足のいくものではない。

もちろん、開放骨折だったり、ひどい粉砕骨折だったり、新生子牛特有の問題を抱えていたり、状況はいろいろだろう。

子牛も半年を越えてくると200kg以上あるので、骨折部の変位の整復もたいへんだし、キャストの適応も悪くなる。

1歳未満の子牛の骨折は、全道で年間約400頭の共済病傷事故として発生しているそうだ。

治癒率はまだ向上させる余地があると思う。

日高は、他の地域に比べて明らかに治癒・救命率が良いそうだ。

X線画像器材が普及しているし、キャスト固定の技術があるし、二次診療施設が運営されているからだ。

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しかし、私たち以上に牛のキャスト固定に造詣と経験がある獣医さんが居るはず。

どなたか、牛のキャスト治療に自信があって、文章も書ける、という獣医さんが居ないだろうか?

自薦他薦を問わないので、教えてください。

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図書館の新刊書のところに並んでいた。

大版で、写真集のような本なので目立つ。

世界各地のオオカミと野生のイヌが美しい写真と文章で紹介されている。

オオカミから家イヌへの進化?についての最新情報も書かれている。

遺伝子分析の結果、東アジアの家イヌたちが、もっともオオカミに近いと考えられるようになっている。

柴犬や秋田犬など。

オオカミが飼い慣らされて人と暮らすようになったのが家イヌだと考えられてきたが、どうもちがうかもしれない。

家イヌはかなり古くから家イヌになるべく進化し、人との暮らしを選んだ。

世界中にはオオカミ以外にも多くのイヌ類、ジャッカル、コヨーテ、ハイエナ、などが居るが、家イヌがオオカミから派生したのは間違いない。

          ー

一匹のオオカミがクマに食べ物を運び、一緒に暮らした観察はとても興味深い。

そんなことがあるんだ、と驚くが、そういうこともあるかもしれない、とも思う。

メルヘンのようでもあるが、生き物とはそういうものかもしれない。

とても良い本だ。