繁殖雌馬が、分娩時に直腸脱を起こしてしまうことがある。
あるいは直腸脱を起こさなくても、小結腸の腸間膜が破れて、血行がなくなるために徐々に小結腸や直腸が壊死して、腹膜炎を起こすことがある。
Equine Veterinary Education 2010 May にそういう繁殖雌馬を手術で助けた症例報告が載っている。
アルゼンチンの、私がメールをやり取りしたこともある先生の報告だ。
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Permanent colostomy after small colon prolapse in a parturient mare
繁殖雌馬の小結腸脱後の永続的人工肛門
C.A.Espinosa Buschiazzo, M.C.J.Candela and M.V.Simian
要約
小結腸脱は分娩時や下痢のときに起こりうる併発症である。
分娩時の陣痛で繁殖雌馬で小結腸脱が起こり、牧場で担当獣医師が整復した。
そして、著者のところへ搬入された。
診察、血液検査、腹水検査により結腸腸間膜の裂傷が疑われ、全身麻酔下での正中切開による探査的開腹手術が行われた。
結腸・直腸の腸間膜の損傷が確認され、腸管切除が選択された。
損傷を受けた部分を逸脱させた後、永続的人工肛門形成術を行った。
14ヵ月後、問題なく回復しており、その繁殖雌馬は非常に良い状態にあり、次の繁殖シーズンを待っている。
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分娩時に小結腸の腸間膜を損傷してしまい排便できなくなったり、腹膜炎を起こす繁殖雌馬には毎年遭遇する。
開腹手術をしても、小結腸から直腸よりが壊死しているために傷んだ腸管を切除して吻合(つなぎあわせること)ができない。
助けるためには人工肛門しかない。
今年もそういう繁殖雌馬に遭遇した。
私がやろうとしたのは、Equine Veterinary Education に報告されているのとまったく同じ方法。
私は、直腸検査ができない繁殖雌馬でも、ちゃんと種付けして、受胎して、分娩できると思っている。