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馬医者残日録

サラブレッド生産地の元大動物獣医師の日々

心筋症?

2020-08-29 | 馬内科学

心拍が異常に速く、心音がおかしい、ということで心臓超音波検査に来たことがある繁殖雌馬が死んでしまった、とのことで剖検に運ばれてきた。

全身に浮腫があり、腹水も溜まっていた。

心臓は拡大し、右心室の筋は薄い。

心外膜、心内膜の表面には白く線維化した部分があった。

しかし、超音波検査で確認できなかったように弁には異常を認めなかった。

肝臓は鬱血し、腫大、割面膨隆。小葉像明瞭。・・・・つまり鬱血で腫れ上がり、肝硬変へ移行しつつある。

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2000年から2009年にケンタッキーの病理解剖施設へ運ばれた馬の調査で、261頭のうち174頭が急性心臓疾患で、慢性心臓疾患は107頭。(合計すると261を超すが、急性から慢性へ移行した20頭は両方でカウントされている)

慢性心臓疾患のうちわけは、心臓肥大11例、慢性弁膜症1例、先天性奇形21例、心筋症31例、心筋線維症25例、心臓麻痺18例。

(心臓麻痺が慢性心疾患?慢性の、しかし、分類できない異常があっての心停止ということか??)

以上、BTCの文献集から引用させていただきました。

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今回の馬は心筋そのものの線維化はなかった。

しかし、心筋症は馬でも特に珍しいものではないようだ。

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旅行記の中には「世界一周もの」という分野があるかもしれない。

どこか特定の国や地域だとその国や地域に興味がなければ読もうとは思わない。

世界一周となると、世界を全部まわったという達成感と、すべてを網羅している完結性があるからかも。

 

海外旅行、それも格安で行くとなると多少なりとも安全安心を犠牲にすることになる。

旅の途中で酒を飲み続け、しかも酔っぱらうまで飲むとなると・・・・・

各地の酒を飲み、地元の酔っ払いと交流し、つまみになる現地食を味わい、というスタイルで世界一周した夫婦の主に旦那の方が書いた本。

酔っ払いは世界共通とも言えるし、海外の国々の酔っ払い事情も面白い。

ただ、昼間から飲んでる人たちなので、その国を代表しているかどうかはわからない;笑

それと、この本は枚数の関係で世界一周完結を収録していない。

 


牛の立位での帝王切開

2020-08-26 | 牛、ウシ、丑

今週はセリ。

販売は好調のようだ。

コロナ禍でも馬券の売り上げが伸びるとか、1歳馬もよく売れるなんて誰も想像できなかった。

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セリ期間診療は暇。

が・・・朝、休養馬が疝痛で、枠場で暴れて怪我もして・・・ということで来院。

全身麻酔して外傷縫合した。

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続いて黒毛和牛の帝王切開の依頼。

分娩予定が10日以上遅れたので分娩誘発して分娩が始まったが過大仔で出ない、とのこと。

もう分娩予定日から13日過ぎている。

もう10産以上している繁殖牛で、立っていられるか心配したが大丈夫だった。

いつも分娩すると人を寄せ付けなくなる母牛なのだそうだ。

気丈さが支えたのかもしれない。

念のために右後肢にロープをかけて、左肩の方へ出している。

どうしても母牛が寝てしまいそうなとき、ロープを引っ張ると左を上にして寝かすことができる。

左が上なら手術を続けることができる。

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ツバメはどうやら巣立ったようだ。

そして、楽譜になった♬

 

 

 


子牛の食道梗塞

2020-08-23 | 牛、ウシ、丑

もう1日の終わり、という土曜日の夕方、子牛の食道梗塞を診てほしい、と電話。

前日から様子がおかしくて、土曜日初診。

カテーテルを食道へ入れようとしたが、入らない。との連絡。

まずX線撮影。

食道上部に草の塊らしきものが詰まっている。

それほど大きくないし、長くびっしり詰まっているわけでもない。

しかし、その部分で気管を少し圧迫している。

鎮静剤を投与して内視鏡を入れる。

子牛の鼻道は曲がっていて、細くて、1cmほどのファイバースコープもなかなか入らない。

なんとか咽喉頭へ入れても、嚥下反射がなくなっているのか食道へなかなか入らない。

しかし内視鏡なら観ながら押し込むことができる。

やはり草の塊のようだ。

そのまま押し込める?

胃まで押し込めました。

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子牛が草を食べると、口や食道に詰まってしまうことがある

だけど子牛に与えているわけではなく、親の餌をいたずらして食べただけ。

しょうがないッショ。

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身近に読むものがなくなったので、図書館で借りて読んだ。

休みの日も、暑くて、外で1日ガーデニングや薪割りできないからね。

ミステリー仕立ての時代小説。

一連の藤沢周平の藩の内幕ものに設定やストーリーがとても似ている。

この作者の特徴で、人の想いの強さにこだわりがある。

楽しめました。

 

 


第一趾骨底側突起の骨片摘出 関節鏡手術

2020-08-23 | 関節鏡手術

1歳馬が第一趾骨(基節骨)の底側突起を骨片骨折した。

この球節内に起こる骨片骨折をOCDだと言う人がいるが、私は種子骨靭帯に引張られる骨折としての要因の方が大きいと考えている。

この1歳馬はセールに出す予定だったのでレポジトリーX線撮影も受けていて、異常なかったそうだ。

しかし、後肢球節が腫脹し、跛行し、X線撮影したら骨片が見つかった。

骨片の周りには透過域があり、見ようによっては”いかにもOCD”と言いたくなる。

しかし、もともとは少なくともX線画像で判明するような異常はなかった。

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温存すれば症状は消えるだろうが、馴致や調教で再発する可能性が高い。

関節鏡手術することにした。

この部分は観ることさえ難しい。

写真下が種子骨の遠位部。その上の靭帯に埋もれているのが骨片。

種子骨靭帯に引張られてのavulsion fracture なので、その種子骨靭帯を小さなナイフを入れて切断する。

avulsion fracture ; 本当の”剥離骨折”だが、日本の馬業界ではchip fracture; 骨片骨折を”剥離骨折”と呼んでいて混同されるので、avulsion fracture は「裂離骨折」とか「捻除骨折」と呼ぶのが良いのだろう。

誰だよ、chip fracture を「剥離骨折」って誤用したヤツ)

摘出したところ。

骨片は長辺で1.3cmあった。

周りの微小海綿骨や靭帯の切れ端を整理したところ。

第一趾骨底側突起の凹みは骨としては埋まらないが、線維性組織で埋まって種子骨靭帯もそれなりに再生される、はず。

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暑さもピークを過ぎたようだ。

たちまち寒くなる北国では、行く夏を惜しむ気持ちが強い。

COVID19でどこへも行けない夏でも・・・・・

 

 


Trueperella pyogenes は日和見感染菌なのか? 尿膜管膿瘍

2020-08-19 | 牛、ウシ、丑

生後1ヶ月の黒毛和種、牡子牛。

発熱と臍の腫脹でずっと抗生剤治療してきた、そうだ。

超音波検査で尿膜管に膿瘍が確認されて、もう手術した方が良い、ということになった。

開業の先生からの症例だが、いつも帯同して来る若い先生に助手をしてもらった。

臍静脈も化膿している。

化膿巣を破らないように腹腔へ到るのに注意が必要。

尿膜管は大きな膿瘍になっていて、臍動脈もそれに沿って化膿している。

大網が癒着していて、尿膜管そのものも腹壁に癒着している。

途中、膿が染み出たが、鉗子で挟んで止められた。

巨大。

先の培養で、病原体は例によって Trueperella pyogenes であると同定されている。

日和見感染菌だというが、こういう牛の膿瘍から採れてくるのは片っ端からこの菌で、とても治り難い。

だれか、ワクチンとか、トキソイドとか研究していないのだろうか??

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手術が終わる前に、次の永続的気管切開の馬が来たので、私が対応した。

午後は、2歳競走馬の骨盤骨折のX線撮影。

続いて、2歳の第一指骨骨折のscrew固定。

あのコミックのモデルになったような危ないタイプの骨折だった。

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まだ暑いね~

空は秋模様なんだけどね~