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馬医者残日録

サラブレッド生産地の元大動物獣医師の日々

Clostridioides difficileへの警戒

2025-02-24 | 感染症

北海道獣医師会雑誌 第69巻2号(2025)に「豚農場環境におけるClostridioides difficileの定着実態の解明」が載っている。

酪農学園大からの報告。大学実験豚舎で3年間拭き取り検体からClostridioides difficileを分離し、遺伝子解析した内容。

Clostridioides difficileは、馬の大腸炎、抗菌剤誘発生腸炎の病原体になることで馬にも危険で、馬関係者にも怖れられている。

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2022,2023,2024年と調査しているのだが、採材箇所、採材数は年によって異なる。

1年1回だし、翌年には前年の結果を踏まえての調査になったのではと思いたくなるが、そうでもない。

2022年に分離されたのは豚舎内環境(床、枠、餌入れ)からのみ。

2023年は、採材検体は22から52検体に増えている。やはり分離されたのは豚舎内環境からのみ。

しかし、2024年の検体は2022,2023年に分離されたことがない長靴、消毒薬、ブラシのみ。そして長靴1検体のみから分離された。

そもそも、この豚舎でClostridioides difficileが問題であったのかどうかわからない。

調査の直接の動機と調査計画がどうしてこうなったのかがわからない。

             ー

偏性嫌気性菌で培養が難しく、芽胞菌であるために動物飼養環境での消毒や殺滅が非常に困難な細菌である。

一般の馬の飼養環境がこの菌で汚染されたら清浄化はかなり困難だろう。

JRAでの経験が引用されているが、一般の牧場はそれほど施設、作業に手間も経費もかけられない。

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馬のClostridioides difficile腸炎について言えば、抗菌剤投与により誘発されることがほとんどであることを認識し、馬獣医師は慎重に対応する必要がある。

馬の病院や診療施設では、抗菌剤は使わざるを得ない。

重症畜や手術後の患馬が滞在しているからだ。

そこがClostridioides difficileで汚染されてしまうと非常にやっかいなことになる。

その点でも、今回の「豚農場環境におけるClostridioides difficileの定着実態の解明」は興味深く読んだ。

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と~っても珍しくてっぺんまで行く第4リフトまで動いていた。

去年は雪不足で一度も動かなかったと思う。

雪もガリガリではなかく、楽しく滑れた。

「ありがとうフェスティバル」が催されていてにぎわっていた。

 

 

 


抗菌剤予防的投与の是否

2025-02-22 | 馬内科学

私が獣医師になったころ、仔馬の死亡率は今より高かったのだろう。

そして今と同じく、感染症による死亡がかなりを占めていた。

細菌学の研究者で、

「新生仔馬に抗菌剤(ゲンタマイシン)を投与すればいいんだよ。

UK(その先生は英国留学の経歴があったらしい)ではやっていることだからね」

と言う人がいた。

いろいろな状況やいろいろな考えがあるだろうが、少なくとも欧米でも新生仔馬に予防的に抗菌剤を投与するという手技は主流にはなっていない。

正常な新生仔馬のほとんど全頭に抗菌剤を投与しなければならないほど新生仔馬の感染症は多いわけではないし、

抗菌剤を予防的に投与すれば耐性菌を増加させ、その抗菌剤が効かない細菌を選択的に残すことになるし、

感染症の初期症状だけを抑えたり、発症を遅らせるだけなら、異常の発見や診断を遅らせることになりかねないし、

無菌状態で生まれた新生仔馬が、正常な腸内細菌叢を獲得して、自力で免疫を確立していく過程を阻害することになる。

               ー

ある地域では、新生仔馬に出血性腸炎が続発したことがあって、仔馬が生まれたらトリオプリムを投与するということが行われていた。

それについては一定の効果があったようだ。

これは例外的な、緊急避難的措置と考えてよいと思う。

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北海道獣医師会雑誌に、田村豊会長が、子牛の呼吸器感染症低減のために行われる「ウェルカムショット(抗菌剤の予防的投与)」について文章を書いておられる。

子牛の農場でウェルカムショットがどれくらい行われているのか私はよく知らない。

その功罪については非常に慎重に判断しなければならないし、

例え短期間に効果を上げているとしても、長期的視点で考える必要があると思う。

               ー

養豚にくわしい獣医衛生学の先生から、「抗菌剤の飼料添加なしでは養豚はできません」と聞いて驚いたことがある。

子牛の農場もそれに近い状態になってしまっている所があるのかもしれない。

しかし、それは予防衛生や個体診療の敗北であり、放棄ではないかと私は思うのだが・・・・・

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NOSAI獣医師がウェルカムショットを行っていて、「目から鱗だった」と田村会長は書いておられる。

「目から鱗」の使い方がちがうと思いますけど。

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主人公は62歳。

バブル期に地上げで活躍した。

今は、居酒屋の店主。

そして、30年前に行方不明になった愛した女を忘れられない。

ハードボイルド恋愛小説、だな。

ミステリーとしても読める。

私には、面白かった。

 

 


Nerve blocks in equine lameness examination 神経ブロック 基本と実例と

2025-02-15 | technique

これはPretoria 大学の動画。

Pretoria って南アフリカだそうだ。

Nerve blocks in equine lameness examination

近位部から神経の走行をきちんと説明している。

実際の、重度の跛行馬の動画も示されている。

(どうも途中で動画が左右反転されているように思う)

よく使われる下肢部の穿刺ポイントも説明されている。

そして・・・疼痛部位が特定され、X線撮影で跛行の原因が判明した!

             ー

骨折の疑いがある場合は神経ブロックよりX線撮影を優先させた方が良い;笑

そして、DRが普及した現代では、X線撮影はかつてより簡便に省力化して短時間に即時的に行うことができる。

神経ブロックと画像診断のどちらを先行して行うかはその状況で判断して良いだろうと思う。

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瀧落ちて群青

 世界とどろけり

           ー

怖いような深い水の色、そして周囲にひびく水による振動

「世界」という表現も好いね

 


Equine Distal Thoracic Limb Palpation 馬の前肢下肢部の触診と解剖構造

2025-02-13 | 馬臨床解剖学

こちらはTexas M&A大学の解剖学の先生が提供してくれている動画

Equine Distal Thoracic Limb Palpation

2/10に日獣でやった実習と重なる内容だ。

まず、よく触ってみて触診の練習。

皮膚の上からでも関節、腱、靱帯、骨のでっぱり・凹み、を触知できる。

動画では皮膚を剥がして、解剖構造を説明している。

実習では、その間に、針を刺す、という操作をやってもらったので、もっと積極的に能動的に下肢の構造を認識することができた、はず。

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芭蕉と曾良。

これは宝珠山立石寺にある像。

芭蕉が旅に出たのは46歳だったそうだ。

旅から戻り51歳で亡くなった。

曾良は旅の後半に体調を崩し芭蕉と別れている。

 

 


Detecting Lameness in Your Horse 研修の復習 跛行診断の基本

2025-02-13 | technique

研修では基本から何もかもを勉強するわけにはいかないので、テーマの部分だけを選択的に扱うことになる。

基本は自分で勉強する必要がある。

今はYoutubeも勉強の1つの方法だ。

馬の跛行診断の基本

Detecting Lameness in Your Horse

この動画は、スペイン語なまりの英語で語られているが、英語字幕付きなのでリスニングの練習にもなる。

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研修の翌日、お昼前に皇居一周ランを楽しんだ私が向かったのは・・・・

高い所は嫌いじゃない。

めったに東京は来ないし、こういう所は天気も選ぶからね。

巨大な日時計だな。

450mの眺望は一見の価値があった。

かつての東京タワーは高層ビルに囲まれて、タワーとしての役割を果たせなくなった。

それも時代というものなのだろう。

              ー

そのあと羽田へ向かったが、なんと千歳が大雪で予定の便は欠航。

そのあとの便を空席待ちするか

わずかに席が残っているもっとあとの便へ変更するか

今日はあきらめてホテルをさがし、明日の便を予約するか・・・

どれか1つしか選択できない。

              ー

結局、4時間ほど遅れて、深夜11時に千歳へ着いた。

やれやれ・・・・