さて、Adams and Stashak's Lameness in Horses の記載。
Glucosamine グルコサミン
グルコサミンは関節軟骨の正常な成長や修復に不可欠なアミノ糖である。グルコサミンは、関節軟骨の軟骨細胞の代謝を刺激したり炎症を抑える役割を果たす可能性があるとされて、馬の栄養補助食品として用いられてきた。
摂取用グルコサミンは合成するか、海の甲殻類あるいは牛から抽出することができる。市販されている摂取用グルコサミンには3つの形状に分けられる。塩酸グルコサミン、硫酸グルコサミン、N-アセチル-D-グルコサミンである。用いられるグルコサミンの形状による差異を示した報告がいくつかある。例えば、いくつかの体外での研究は、塩酸グルコサミンと硫酸グルコサミンがN-アセチル-D-グルコサミンより以上に安定して軟骨の障害を防いだように思われることを示している。血清および滑液の硫酸塩濃度は硫酸グルコサミン投与の後に増加するので、硫酸グルコサミンはより効果的だと主張されてきた。
馬における塩酸グルコサミンの経口による生体活性は2.5%から6.1%であると報告されてきた。そのため大量投与が必要であり、消化管では吸収が悪く、末梢で利用されにくい。放射性物質でラベルした研究では、血漿中を越えるレベルで関節軟骨にグルコサミンが分布しており、数倍の濃度まで軟骨にグルコサミンが蓄積していることが示された。しかし、関節軟骨へのグルコサミンの分布は必ずしも関節軟骨へと合成されたことを意味しない。実際には、馬での経口投与の後、グルコサミンの滑液中濃度は、同じ時点での血清中の濃度の10%未満であった。このことは、グルコサミンは血漿から滑液へと容易には拡散しないことを示唆しており、グルコサミンの効果が関節以外の組織への効果によるものであるかもしれないことを示している。関節の疾患のあるなしは関節内のグルコサミン濃度に影響を与えうる。ある研究では、手根関節においてE.coliのリポポリサッカライド(訳者注;エンドトキシン)により引き起こした滑膜の炎症は、塩酸グルコサミンの経口投与後の健康な関節でのレベルに比べて、滑液中のグルコサミン濃度を明らかに増加させた。
摂取用グルコサミンは体外では正常な関節軟骨培養細胞や軟骨細胞の代謝に、長期間の暴露後も有害な影響を与えないことが示されてきた。多くの体外での研究は一般的に、グルコサミンが新しい軟骨の生成を促進し、一方すでにある軟骨を保護することを示してきた。グルコサミンはプロテオグリカン(訳者注;共有結合型錯体の蛋白鎖に結合したグリコサアミノグリカン(ムコ多糖類)。結合組織の細胞外基質においてみられる。wikipediaより)とコラーゲンの合成を刺激し、一方プロテオアミノグリカンの変性を抑制する。これは、部分的にはMMP(マトリックスメタロプロテイナーゼ)とアグリカナーゼのダウンレギュレーションを通じて起こる。抗炎症効果は抗プロスタグランジンとは関係していないように思われ、滑膜細胞によるヒアルロン酸の産生を促進することによるのかもしれない。加えて、メチルプレドニゾロンによって引き起こされたプロテオグリカン産生の抑制に抵抗してグルコサミンが保護効果を示したという体外での馬軟骨培養細胞ペレットモデルにおいて示されたように、軟骨へのステロイドの有害作用のいくつかから保護するかもしれない。
グルコサミンのみをもちいた馬での体内研究はほとんどない。調教している若い馬でのグルコサミンの経口投与は、骨と軟骨の代謝についての血清中の生体指標に明らかな治療効果を示さなかった。体外実験で効果があったグルコサミンの高レベルは、人や動物の実験モデルでは成し遂げられていない。それゆえに、体外研究の結果から体内での状況を推定することには注意が必要である。人での研究から推測しうるもっとも信頼できる情報は、グルコサミンが働き始めるのに4から8週間はかかるように思われることと、グルコサミンは予防的に用いられるとき、つまり病気の進行プロセス前の小さな病変があるときに用いると最も効果を示すであろうこと、である。
グルコサミンを含んでいる製品の品質には疑問が唱えられている。あるひとつの研究は市販されている馬の経口用サプリメント中のグルコサミンの量を測定し、それぞれの製品のラベルの表示と比較した。調査された23の製品のうち、9製品(39.1%)が製造元が主張しているより少ないグルコサミンしか含んでおらず、4製品(17.4%)は表示された値の30%未満の含有量であった。馬用グルコサミン5製品を検査したもうひとつの研究ではグルコサミンの実際の組成はラベルに表示されている63.6%から112.2%のばらつきがあった。グルコサミンの推奨1日摂取量は製品のラベルにおいてもたいへん差があり、平均的なサイズの成馬で1日1,800~12,000mgのグルコサミンを経口摂取することになっている。このばらつきはこれらの製品の効果を評価するとき考慮されるべきだ。
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非常に難解だ。(私を含めて、たいていの馬臨床獣医師は化学は得意ではない;笑)
独断と偏見を含めて要点を取り出すなら、
・グルコサミンの中では硫酸グルコサミンが利用され易いことが確かめられている。
・グルコサミンの吸収は良くない。が、吸収され、利用されるようだ。
・副作用はなさそうだが、軟骨や関節の保護作用の機序は(もしあるとしても)推測の域を出ない。
・馬の生体を用いた研究はほとんど行われていない。
・「効果」が現れるとしても4-8週間はかかるだろうし、「予防的」に与えておくのが最も良い結果を期待できる・・・・かもしれない。
・グルコサミン製品の品質はかなりいい加減なものが多い。
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本来、栄養補助食品は薬ではない。もし、経口投与で本当に効果が確かめられれば、経口薬として認められるだろう。
だから、摂取しないよりしておいた方が良いかも知れない・・程度の期待で使うべきものなのだろう。
しかし、人でも馬でも、あまりに期待が大きく、また値段も高い。海外では馬用の製品でも市場が広いので、大きな市場規模になっている。
本当に、その馬にとってその栄養補助食品を与える価値があるかどうかは、獣医師にも判断が難しい。
馬を飼っている人も、獣医師も、企業のコマーシャルに踊らされるのではなくて、よく考えて使った方が良さそうだ。
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去勢に連れて来られたのは1歳の道産子君兄弟。
まだ玉がちいさいこともあるけど、
なんだかやりやすかった。
サラブレッドが馬としても特殊なんだと思う。
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被災地、そして原発避難地域の動物達がどうなっているのか、助けるためにはどうすればいいのか、あまり情報もない。
やっと、動物のことまで少しは報道されるようになってきたというところだろう。
その間に、すでに悲惨なことにもなっているようだ。
「被災地」「動物」などで検索すると救援活動や署名運動が出てくるのだが、今、何ができて、何をすべきなのか、私にはわからない・・・・・